君たちはどう生きるか。万単位のアーティスト(の卵)が毎年輩出されているこの国で
突然ですが、いまの日本で、純粋な創作活動だけで飯を食べていける人が一体どれぐらいいるのでしょうか。
例えば、ここ(↓)に名前が載るような有名作家は、創作活動に打ち込むことと収入を得ることがほぼイコールの人でしょう。
でも、この100人の背後にはまだ何十万人ものアーティストが存在します。プロから日曜画家まで無限のグラデーションがそこにはあります(つまり線引きなんてできない)。
毎年、日本全国の美大、芸大からどれほどの人間が卒業するか想像してみてください。
ひとつの美大だけでも1,000人を超える学生が毎年卒業しているんですよ。つまり、入学するために予備校に通い、入学してからもずっと創作する技術と思考を磨いてきたアーティストの卵が、毎年毎年、万単位で輩出されていることになります(もちろん美大を出るだけがすべてではないですが)。
そう考えると、すごいですね。
大学を出てからも、創作活動と発表を続けることは、本人にやる気さえあれば可能ではあります。
無鑑査のものを含め大小さまざまな公募展が毎年行われていますし、なんらかの美術団体に所属すればその会の展覧会に出品できます。また、使用料を払えばギャラリーや画廊で個展やグループ展を開くことも可能です。
でも、それらはお金が出ていきこそすれ、お金を得ることにはほとんどつながりません。個展で作品が数点売れたとしても、ギャラリーの高額な使用料を上回ることはめったにないでしょう。
それでなくても、作品を作るのには材料費がかかるのです(当たり前)。
霞を食べて生きていくことはできないので、なにかしらの形でマネーを得なくてはいけません。
というわけで、ここからは具体的な話です。
大学を出てからも創作活動を続けている人が、どのように収入源を確保しているか整理しておきましょう。主なケースは以下の通り。
とりあえず大学に残る。
美大の大学院に進み、さらに助手・助教になる。これによって、いくばくかの定収入を得ることができます。また、大学にアトリエ(共同)を持つことができるのもメリット。
ただし、教授の授業準備の手伝い、教授の個展の手伝い、ワークショップの補助などなど結構忙しいので(それが仕事なので当たり前ですが)、創作だけに打ち込めるわけではありません。それに当然ながらタイムリミットがあります。
学校の美術教師になる。
教員免許を取って、学校の先生になる。これなら安定収入が見込め、大抵の場合学校に自分のアトリエ(美術室)を持つことができます。長く創作を続けるという意味では一番現実的かもしれません。
ただし、当然ながら生徒の指導がメインになるので、どこまで自分の創作活動の時間を確保できるかは本人次第。また常勤ではなく非常勤講師の場合は、それだけで食べていくのは収入面で難しく、また契約更新の不安がつきまとうことに。
絵画教室・カルチャースクールで教える。
自宅に生徒をとって、絵の指導をする。またはカルチャースクールなどが主催する絵画教室の講師をする。これは、上記の美術教師(非常勤)と掛け持ちでやるというパターンもありますね。
いくつか掛け持ちでこなせば、まとまった収入を確保しつつ、創作活動を続けることが可能となります。ただ肝心の創作にあてる時間を捻出することが容易ではありません。
一般就職をする。
新卒として企業に入社して、給料を確保しつつ、休日などの余暇をつかって創作活動を続けるというパターン。
美大卒の何らかの技術を生かせる仕事に就けたらいい方で、まったく縁の無い仕事に就いた場合、創作のモチベーションを維持し続ける精神力が求められるでしょう。
就職しなくても、フリーランスとしてイラストやデザインなどの仕事を受けつつ、創作活動・個展発表を続けるという人もいるかな。
収入面はパートナーに任せる
大正、昭和の時代には絵しか描けない夫のために、奥さんが働いて生活費を稼いでいたという事例はそこそこあります。
逆に、専業主婦として家事・育児をこなしながら、創作活動を行っている人もいます。
それがいい・悪いではなく、一応そういう方法もあるよねってことで挙げました。
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私の知る限りでは、現実的なのはこれぐらいですね(他に知ってたら教えて)。
今回はひとまず現状整理ということで。夢のない話に感じたらごめんなさい。
ただ私は、これからのアーティストの生き残り方はもう少し多様になるかな、と期待していることもあり、それについてまた続きを書きたいと思います。
というわけで続きです(↓)
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