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アーティストの生き残る道は中世にあり?現代版パトロンシステム

さて、前回の続きです。

前回は話の前置きみたいなもので、今回が本題です。
考えをめぐらせるのが楽しくて、だいぶ風呂敷をひろげていますが、思考のエンタメと思っておつきあいください。

クラファンで見かける「パトロン」の文字

前回の締めくくりに「これからのアーティストの生き残り方はもう少し多様になるかな」とつぶやきました。

私が新たな動きのひとつとして注目しているのが、クラファンです。

クラウドファンディングというと、何かのプロジェクトを実現するために支援金を募る印象が強いですよね。
でも、そうした一過性のプロジェクト支援だけでなく、サブスクリプションのように毎月定期的な支援を続ける方式もあるんです。

例えばクラファンサービスの最大手CAMPFIREでは、「CAMPFIREコミュニティ」の名称で誰でも自由に月額課金システムを作ることができます。
このCAMPFIREコミュニティの「アート・写真」分野をのぞいてみました。

その中には、私がこのnoteでやっている「オトナの美術研究会」のような、趣味の合う人があつまるサークル的なものもありましたが、目についたのが

パトロン募集!

の文字です。一人じゃないですよ、何人もです。ぜひのぞいて確かめてみてください。

これ、個人のアーティストが、自分の創作活動を応援してくれる人を募っているんですね。
個別に見てみると、しっかりファンがついている人もいて、これなら毎月の収入が確保されるので、安心して制作に打ち込むことができそうです。なるほどなー。

この応援文化は、イラストレーター、デジタル絵師界隈ではすでに根付いていましたが(PIXIV FANBOXなど)、その流れが現代アーティストにも広がってきた感じですね。

もちろんCAMPFIREコミュニティでは、アーティストは支援を受ける見返りとして、支援者に何かを提供することが必要です。
クラファンサービスの派生形なので、支援額に応じて、ミニ作品や複製程度のものから、がっつり特注で作品を制作するなど、色々な設定ができます。

私は、彼らが支援を集める時に使う「パトロン」という言葉がとても前時代的な響きで新鮮だなぁと感じました。
で、このアーティストと支援者の関係性って、なんというか一周して中世に回帰してるんじゃない?と思い始めました。あれ、面白くなってきたぞ(自分の中で)。

中世から近代へ、アーティストのあり方を根本から変えたもの

さて、話を広げ始めます(最後はちゃんとクラファン話に戻ってくる、はず…)。

パトロンと言えば、中世ヨーロッパでアーティストを支えたのは教会や国王であり、ルネサンス以降はこれにメディチ家のような大富豪も加わりました。
まず、ここで押さえておきたいのは、アーティストの創作はつねに受注方式だったことです。

ミケランジェロでも、ラファエロでも誰でもいいんですけど、いま、私たちが名画として鑑賞している作品のほとんどは、アーティストが「あー、芸術が爆発しそうだー」とか言っていきなり自発的に生み出したものではなく、パトロンから「ここに飾りたいから、こういう絵を描いてね」と依頼を受け「了解です!」と言って制作したものなのです。

つまり、アーティストは常に誰か(教皇、君主、資産家)のためか、何か(礼拝堂の壁画、祭壇画、彫像)のために創作をしたのです。当時のアーティストは職人であり、工房を構えて集団で制作することが当たり前でした。
ずいぶん今のアーティスト・イメージと異なりますね。

この構造を崩すきっかけとなったのが、あるものの登場です。

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