「天守麦酒」〜世界一美味いビールの話 〜
仕事終わりに飲むビール。
お風呂あがりに飲むビール。
BBQで飲むビール。
世の中には最高の瞬間とされるビールの飲み方は数多ある。
だけれども僕からしたらこれらのシチュエーションはすべて2番手だ。
僕にとって何よりも最高のビール。それは、、、
「天守を眺めながら飲むビール」
これに尽きる。
旅という非日常を噛みしめながら、人気も少なくなった城跡をコンビニ袋片手に散策しベストポジションを探す。
松本城なら堀の前のベンチ。
高知城なら追手門前の巨石。
姫路城なら城見橋の前だ。
絶好のポジションについたらお城を眺めながら暫し考えこと。将来のこと。仕事のこと。恋愛のこと。様々な日常のささくれを撫でる。
そして、ひと息ついたらいよいよビールだ。
ロング缶をそっと開ける。この時の顔は真顔を装うが少しニヤついているだろう。
物思いにふけたあとだからなのか?
いつもの居酒屋のように、一気にぐびぐびとはいかない。
古の風を感じながら、闇夜に浮かぶ天守を眺めながら缶ビールを少しずつ飲む。
僕はこれを "天守麦酒" と名付けている。
こんなにも贅沢な時間が他にあるだろうか?
思えば明治期の廃城令で城跡はゴミ同然に扱われた。
そうした中でも、お城を守ろうと懸命に頑張ってきた地域の先人たちがいたから今こうしてお城を観られる。そんな弛まぬ信念と努力を想えば、”時代に流され大切なものを忘れちゃいけない”と心を新たにしてくれる。
石垣に目を移せば、お城を支えた石垣の石、ひとつひとつ。大小関係なくひとつひとつが偉大に思えてくる。小さな裏込石ひとつひとつまでお城を支える大切な役割を果たしているのだ。
そして長い時間を耐え抜いた天守閣を見上げれば、その輝きに自分も負けてられないなと奮い立つ。
あの石垣の間の小さな石ころでもいい。僕だって何か世のため人のため、行動しなきゃならん。そのためにはクヨクヨしてる暇などない。
こうして悩みも吹っ飛び、頑張るしかない。頑張ろうと思えるのだ。
僕にとって旅は天守麦酒な夜を過ごすためにあると言っても過言じゃない。
だから僕はお城があるかで旅先を選び、宿を決める。ご当地の美味いビールがあれば文句なしだ。
誰にでもそんな自分だけが分かる最高の一杯を味わえる場所があるはずだ。
おこがましいかもしれないが、本稿がそんな一杯を見つけるきっかけになれば僕はとても嬉しい。
※酔っ払っているからか、夜の撮影の難しさからか。綺麗に撮れた天守とビールの写真は、僕のスマホに一枚もなかった。
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