カリスマ的教授、瀧本哲史の著作をまとめてみた〜交渉術・意思決定方法〜【読書のすすめ♯2】
0. 僕は君たちに武器を配りたい
今回は瀧本哲史先生の本を一気に紹介していきます。
瀧本哲史先生は、東京大学法学部を卒業し、その後法学の研究者(助手)になったあと、マッキンゼーに就職し、そのあとは投資家になるといった非常にバラエティに富んだ経歴をもっています。
そしてなんと京都大学でも「交渉論」「意思決定論」「企業論」といった授業を担当しており、かなり人気の講義だったそうです(受けておけばよかった、、、)。しかし、2019年に病気で亡くなってしまい、今では彼の講義を受けることはできません。
さて、先生の本に共通するテーマとして、若者に武器を配るというものがあります。
今の社会は、上の偉い人の言うことに従ってその通りに生きていくという時代から、1人1人が決断し、自らの生き方を決定するという時代になってきています。そのような自律した個人になるための考え方を「武器」と称して、武器をもった若者が新たな社会を作っていくことを先生は願っていました。
というわけで、ここからは先生の配る武器について1つずつ見ていきましょう!
※「アート思考」を次回紹介すると前回の記事で書きましたが、第3回に予定を変更します。
1.武器① 資本主義社会でどう生きるか
まず、1つ目の武器として、資本主義社会の中で生きていくための大きな思考枠組みを手に入れておきましょう。
その思考枠組みとは、コモディティになるな!というものです。
例えば、飲食チェーン店のアルバイトについて考えてみましょう。
僕はとある飲食チェーン店でバイトをしたことがありますが、そこでは綿密なマニュアル化がされています。例えば、この野菜は~な手順で切って、それを3分20秒炒めて、、、といった形です。そして、マニュアル化がされているということは、その手順に従うことによって、基本的には誰でも仕事ができます。
さて、誰でも仕事ができると、その仕事の賃金はどうなってしまうのでしょうか。誰でも仕事ができるということは、他にも仕事の担い手がたくさん存在するということです。そうすると、雇う側としてはできるだけ安い賃金で働いてくれる人が1番望ましいということになります。
このように、誰でもできる仕事は、賃金を安くすることでしか他の人と差別化することができず、最終的に最低賃金付近まで賃金は低下していくわけです。
このような、誰でもできる個性のない状態のものをコモディティと言います。資本主義社会ではコモディティになってしまうと、結局価格でしか差別化することができず、限界まで価格が低下してしまうわけです。
そこで、本書ではコモディティにならないためにどういう生き方をすればよいのか?ということが説明されています。この先の話が気になる方は是非読んでみてください。
※前回の【読書のすすめ】では、差別化を求める資本主義社会についての問題点を検討していきました。興味のある方はこちらも是非!
2 武器② 交渉で力を得る
では、2つ目の武器、「交渉思考」について紹介していきます。
まず、なぜ交渉思考が武器として必要なのでしょうか。
冒頭でも述べたように、現在の社会は1人1人が自律して意思決定をする時代へと変動してきています。その中で、自ら決断して何か新しいことを始めようとする場合、どうしても他人の協力が必要となります。例えば、大学に行くという決断でさえ、親の協力や、場合によっては奨学金を給付する機関の協力がいるわけです。
そのような他人の協力を得る際に必要となるのが「交渉思考」というわけです。交渉というと値切り交渉のようなものが浮かんでしまいがちですが、明治維新の際の薩長同盟も交渉によって達成されたものであり、交渉によって他人の協力を得ることには大きな力が秘められています。
では、具体的な交渉事例を通して、交渉の基本的な考え方についてみていきましょう。
日本では長らく新卒採用システムが行われており、その結果就活のスタート時期がどんどん早まっていくという現象が起きています。そこで、学生が「就活デモ」を起こして、各地でデモ行進を行ったとしましょう。このようなデモを行うことで問題は解決するでしょうか。
結論から言うと、問題は解決しません。なぜなら、このような就活デモが行われても、企業は新卒採用システムがある限り、就活のスタート時期を始める利点があるからです。つまり、採用時期が決まっている以上、できるだけ早く就活を始めることによって、他の企業を出し抜いて人材を得ることができるわけです。
しかし、よく考えると企業の側としてもこのような採用レースを続けることは不利益であるように思われます。確かに企業間になんらの約束もない状態では他より早く採用活動をすることは利益がありますが、そのような出し抜き合いをすることで、結局採用活動をする期間が長くなり、企業としてもコストがかかってしまいます。
もちろん就活生の側としても、就職活動の期間が長くなって大学生活が侵食されるのは不利益であるといえます。
この点をついて、経済団体に対して、早期選考を始めることは自分たちに不利益であるだけでなく、企業全体としても不利益ではないですか?と交渉を持ちかける方が、ただ単に「早期選考するな!」と訴えかけるよりもかなり現実的と言えます。(もちろん早期選考をしないような仕組みを作るのはかなり困難だと思いますが)
以上のように、交渉の基本は、相手の利得構造を分析し、相手にメリットがあると伝えることなのです。ただ単に自分の要望を伝えるだけでは交渉は成立しません。
本書では、このような考え方を基本として、交渉を成立させて協力を得るためのテクニックが紹介されています。興味を持たれた方は是非読んでみてください!
3 武器③ 合理的な決断を下す
最後の武器として、決断思考を簡単に紹介しておきましょう。
1人1人が自律して意思決定をする時代では、その意思決定の方法が非常に重要になります。では、どのような思考をすれば、合理的な意思決定ができるのでしょうか。
ここで、本書では、ディベートの考え方を意思決定に用いることが推奨されています。
ディベートとは、ある議題について賛成と反対に別れた上で、お互いに主張・反論を繰り返し、どちらに説得力があるかを第三者が判定するというゲームです。
このディベートを応用して、自分で意思決定をする際にも、決定事項について賛成と反対側から主張を考えた上で、互いの立場から反論を加えていきます。そして、最終的に各立場の主張を比較したうえで、説得力のある立場を選択することにより、合理的な意思決定ができるというわけです。
例えば、Twitter(インスタでもなんでもよいです)をやめるべきかどうか?という議題について考えてみます。
まずTwitterをやるメリットとしては、①自分の知らない情報を得ることができる②自分の考え方を発信することができる③他人との繋がりを得ることができる、といったものが考えられます。
一方デメリットとしては、(ア)時間を浪費してしまう(これは深刻な問題です)(イ)他人から無意味な批判を受けてしまう(ウ)誤った情報に踊らされてしまう、などが考えられます。
そして、これらのメリット・デメリットに反論していきます。例えば①に対してはTwitter上の情報は信頼性が低く、あてにならない。Twitter以外にもFacebookのような別のSNSでも情報収集をすることができる。といったような反論が考えられます。
こういった形で、メリットとデメリットを整理し、それに対して反論・再反論を加えていくわけです。そして、最終的に自分が説得力があると思う立場を選びます。
確かに最終的な決定は主観ですが、決定までの過程で客観的に分析をすることで、なんとなくの決断をするよりもはるかに合理的な決断をすることができるわけです。(僕は情報収集に役立つので、時間浪費を鑑みてもTwitterはやめません笑)
本書では、メリットデメリットの分類や、反論の仕方等について更に詳しい説明がなされているので、気になった方は是非読んでみてください!
4 瀧本先生の講義を体験する
さて、こんな3冊も読んでられないという方のために、まず導入として最適な一冊を紹介しておきます。
この本は、先生の存命中に行われた講義の文字起こしをしたものです。この講義では、2020年6月30日に再度集結しようと呼びかけられているのですが、残念ながらそれは叶わなかったため、この本が出版されたわけです。
講義の文字起こしなので分量も少なく(他の本も分量は比較的少ないですが)、さらっと読めてしまうので、先生の人物像を知るにはちょうどよい本だと思います。
5 最後に
というわけで、今回は瀧本先生の代表的な本を紹介していきました。僕はまだ読めていませんが、他にも何冊も著作があるので、興味を持った方は調べてみてください。
どの本も言葉が平易でわかりやすく、論理構造も明確なので非常に読みやすいと思います。
さて、次回こそ、アート思考について書きたいと思います。また次回の【読書のすすめ】も読んでみてください!
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