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石川金子
2024年9月27日 20:37
天が高くなったので、少女たちは走らなければいけなくなった。 少女は見ている。 時計の短針が15を指し、ぴったりに少女らが昇降口から吐き出されるのを見ている。 少女らの馬跳びが規則的すぎるのを、オニヤンマが飛んできて誰かの尻へしがみついたのを、ピカピカ光るジャージの青を、雲が一つもない書割りの空を、見ている。 この街はやはり狂っている、と少女は思う。 囚人の如き狂いなく一列に並んだ
2024年9月25日 19:44
少女は学校が嫌いであった。 退屈で、ダサくて、うるさいからだ。 少女は面白くて、カッコよくて、静かなもの(音楽を除き)が好きだった。 しかし、放課後は別である。放課後はアンチテーゼだと少女は思う。 砂漠のオアシス、アスファルトに咲く花、ローリング・ストーンズのシーズ・ア・レインボー、眠りゆく学校で活発になる爬虫類。 科学室はもう夜である。ガジュマルの生い茂る暗い廊下を少女は進む。
2023年2月4日 02:01
数メートル先に少女らが連れ立っていたので、少女は病院の東側を通らなければいけなくなった。 少女は畦道を行く。 蚊柱が濃く視界を奪い、ぬかるみはソックスに水玉模様を作る。少女は休耕田からはみ出たヨシに膝丈を濡らしながら畦道を行く。声を枯らしたカラスが一羽飛んで来る。どこまで続くのかわからない田園のはじまりの方から飛んで来る。カラスは少女を追い越して、なにかの死骸を突いている。 この町はいつ
2020年9月9日 01:25
とりせん横の道路が工事しているので、少女たちは高架下を通らなければ行けなくなった。 少女は路地を行く。この町は幾分か狂い始めている、と少女は思っている。理髪店のサインポールは火曜日から逆回転をしているし、巡回バスはビーグル犬を轢き殺した。桃色のアパートは入居者を食べ、彼女の前を歩く少女のローファーは右足だけすり減っている。 少女は高架下を行く。 医師会病院の裏に散乱するエロ本。ピンクの文字