030 顧客満足度とは顧客とのチームワークである!
顧客満足度って何だろう?
よく語られるのは、「顧客満足度=期待<結果」の式である。
でも、この考え方は持続性に疑問がある。
ずっと顧客満足度を維持するためには、永遠に期待よりも結果を出し続けなきゃならなくなるからだ。
こんな話、聞くだけで暗い気分になる。
顧客満足とは、もっと人間として本質的なものだと思っている。
けっきょく顧客満足度って何?
さて、けっきょくのところ顧客満足度って何だろうか。
実は先日、この話題について経営者6人で話し合った。
最初のうちは、顧客満足度調査をしているかしていないかの話やアンケート調査の話だった。
ところが、ある食品製造業の社長が「発注者から依頼される顧客満足度調査って腹が立つよな」と言い出した時、会話の流れが変わった。
その経営者の話では、ある小売業者が消費者満足度を高めるためにトレーサビリティ(生産・流通の履歴)調査を行ったけど、それが的外れで煩雑で腹が立ったらしい。
年間取引額が数十万円しかない顧客からA4用紙3枚もの調査書を押し付けられ「とにかく記載してください」と言われたらしい。
何に腹が立ったかと言えば、調査項目の煩雑さもあるけど、担当者の態度や言葉遣いが気に入らなかったようだ。
社の決まりですから、大手はみんなやっていますから、どこも協力してもらっています、そんな風に説得されたという。
この話を聞いた他の経営者も、心当たりがあったらしく、堰を切ったように「そういえばうちにも…」と語り出した。
そこから次第に「そもそも顧客満足とは何か?」の話になっていった。
主な意見は次のとおり。
経営者A:どんなに顧客満足に配慮してもクレーマーは現れる。けっきょく顧客満足は相手次第。
経営者B:クレーマーも問題だけど、こっちだってお客様を怒らせちゃう担当者がいるから、どっちもどっち。けっきょく人間関係かな。
話が面白い方向に傾いたので、こちらから問いを出した。
「どうやら、顧客満足度は人間関係次第って話になっているけど、品質や価格より、人間関係の方が重要ってこと?」
ある建設業経営者はこう言った。
確かに、現場所長が柔和でオーナーや設計事務所としっかりコミュニケーションを取っていると、多少のミスは帳消しになり、最終的に満足してくれる。
反対にまったくミスの無い現場所長でも、不愛想でつっけんどんな人物だと、オーナーも設計事務所もあまり喜んでくれない。
ある卸売業者も似たようなことを言った。
うちの場合も担当者のコミュニケーション能力で、顧客からの評価はずいぶん違う。時々、お客様から感謝されることあるけど、担当者とのやり取りを褒めてくるケースが多い。
特に優秀な担当者は、お客様がうまく表現できないようなぼんやりしたニーズを聞き出せる。ここに満足してくれるお客様が多い。
この日の話し合いは、だいたいこんな感じだったけど、結論として見えてきたことは「顧客満足=人間関係」である。
さらに言えば、潜在ニーズを顕在化していく過程に顧客満足が関係しているようだ。
顧客満足の正体
さて、「顧客満足=人間関係」だとして、どうやったらこれを高めることができるようだろうか。
それを考える前に、まず「人間関係」について考えてみたい。
会社経営の文脈で「人間関係」と表現する場合、「対人スキル」や「組織の仕組み」の巧拙を語っている場合が多い。
例えば、「あいつは人間関係に長けている」と言った場合、声掛けや配慮など、高い対人スキルの持ち主を意味する。
また、「あの組織は人間関係が良い」と言った場合、心理的安全性ある和気あいあいとした組織(および仕組み)のことである。
このように考えると顧客満足とは「対人スキル」と「組織の仕組み」に集約されるような気がする。
ちなみに組織の3要素と言えば、「共通目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」である。(チェスター・バーナードの説)
先ほど、卸売業者の事例で、「お客様がうまく表現できないようなぼんやりしたニーズを聞き出せる。ここに満足してくれるお客様が多い」というのがあったけど、何となく組織の3要素が関わっているような感じがする。
潜在ニーズを引き出せるってことは、相手の目的や方向性を理解しているからである。
だから、先回りして「〇〇なんかいかがでしょう」と適切な提案ができ、そこに顧客は満足する。
顧客と担当者がひとつの目的を共有しているから潜在ニーズの引き出しもうまく行くってことだ。
当然、質量ともに充実したコミュニケーションがあるだろうし、お互い貢献意欲も持っているに違いない。
つまり、顧客と担当者は一種の組織になっているのである。
言い方を変えれば、「顧客と一体のチーム」ということだろう。
これが顧客満足の正体だと思った。
顧客満足度はどうやったら高められるのか?
顧客満足の正体が顧客とのチームワークであることが見えてきた。
すなわち、顧客と「コミュニケーション」し、「共通目的」を持ち、お互いに「貢献意欲」を発揮することなんだよね。
ここに気づけば、これまでのやり方のどこに問題があったのか気づくと思う。
例えば、営業手法だ。
通常、営業担当者のコミュニケーションは、ほとんど売り込みと情報収集に偏っている。
顧客がチームメイトだなんて意識はほとんど無い。
へたしたら、顧客を攻略すべき敵くらいに思っている営業マンもいるのではないか。
この自分勝手さが、顧客満足度を下げているって、そろそろ気づかないきゃね。
日ごろ顧客との人間関係(=顧客満足)をなおざりにしていながら、時々思い出したようにアンケートやインタビューを行ったところで大した効果は見込めない。
そんなことより、まず顧客と共通目的を持つ方が先である。
一種のチームワークのような関係が持てた時に顧客満足度は上がるということだ。