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もしかしたら特別な日々

オフィスの一辺は窓になっているのだが、真隣に位置する家の壁に阻まれて、外の様子がいまいちわからない作りになっていた。昼間でも電気を消したらわりと暗いのかもしれない。

冷房が肌寒いほど効いた空間から無機質な扉を開けると感じる唐突な暑さ。こんなにも夏だったことをオフィスにいる間は忘れてしまう。実は時空が歪んでいて、現実とオフィスは切り離されているんじゃなかろうかと、陳腐なSFを妄想しながらコンビニへお昼ご飯を買いに行く。

「パンと缶コーヒー」お決まりのメニュー。毎日飽きもせずに食べていられるものだ。夏から切り離されたオフィスへと戻り、ネットサーフィンをしながらお腹を満たす。

何がきっかけだったのか。高校時代のある記憶がよみがえってきた。暇つぶしに見ていたサイトで学生の姿が目に入ったのかもしれない。

自分にとって「高校時代」は黒歴史な部分もある。というか部活を1年の途中で辞めてからバイトもしていなかったのでめちゃくちゃ暇だったはずだ。

それでも友だちは多少いたので休み時間はくだらない話で盛り上がり、彼女が欲しいとボヤいたりしたものだ。修学旅行も楽しかった。全くもって彼女ができる気配のないまま高校生活は終わりを迎えたけども。

それなりに思い出はあるはずだった。しかし、一番初めに浮かんだのは「反省文を書いた」日のことだった。正確には事の発端となる前日から反省文を書いた一連の流れ。

別に「昔は悪かった」という話ではない。ヤンキーは怖かったし、学校から帰ったらドラマの再放送を見るのがルーチンだった。基本的には地味だったと思う。

そんな僕がどうして反省文を書いたのか。

それは高3の春だっただろうか。最終学年ということもあり、将来について的な講演会に出席しなければならなかった。午前中は通常通り授業があって、昼は自由に取ってから講演会場に集合するという感じだった気がする。

僕は仲が良かった友人3人とファミレスでランチをして、時間があったのでゲーセンへ向かった。ゲーセンで何をしていたかは覚えていないが、集合時間が迫るにつれて4人は思ったのだ。

「このままサボろう」

高2の終わりから受験勉強を始めた僕を含めて、息抜きがしたかったという気持ちもあったと思う。「4人いないところでバレはしないだろう」という考えもあった。そんなノリと勢いで僕らはよくわからない講演会をバックれた。

翌日、普通に登校すると担任から呼び出しをくらった。もちろん、僕以外の3人も。

「なぜバレたのか?誰かがチクったのか?」と疑いの目をクラスメイトに向けた。

結果的には僕らがバカなだけだった。なぜなら講演会の座席は前もって自分たちで好きな席を選べたからだ。そう、僕らは4人で連番にしていた。4人分の空席があれば誰でも気づく。

担任が科学の先生だったので、理科室的な場所に連れてかれて説教をくらった。友人の1人はそういう空気が本当にダメなタイプで笑い出し、普段は温厚な担任に油を注ぐ。

そうして僕は人生で一度だけ「反省文」を書くことになった。内容は覚えていないのだが、作文用紙の2行に1回は「申し訳ありません」と書いた気がする。反省していないからだろう。とにかくマスを文字で埋めていく作業だった。

しょうもない話である。数ある(いや、そんなにはないけど)高校生活の思い出から、なぜその記憶が呼び起こされたのか。でもせっかくだからnoteに綴ってみた。

夏の話でもなければ楽しくも悲しくもない記憶。

いや、楽しかった記憶なのかもしれない。地味で暇で、時間と体力を持て余していた日々に、文句を言いながらも楽しんでいた自分がいたのだろう。

今ではもう会うこともなくなってしまった友人たちのことを想い、少しだけセンチメンタルな気分に浸る木曜日。

高校生で思い出したことがもう1つある。僕は数年前まで「制服」にあまり魅力を感じていなかった。しかし、20代後半くらいから急に「制服って素敵だな」と思うように。

「ロリコンになってしまったん??」

僕は自分が怖くなり妹に相談したのだが、「それがオジサンになるってことじゃね?」と言われて妙に納得してしまった。そんな余談。

それでは最後にこの曲を。フジファブリックで「若者のすべて」


この文章をお読みになられているということは、最後まで投稿内容に目を通してくださったのですね。ありがとうございます。これからも頑張って投稿します。今後とも、あなたの心のヒモ「ファジーネーブル」をどうぞよろしくお願いします。