冬野水槽

冬野 水槽(ふゆの すいそう、2000年1月29日 - )は、日本の俳人、詩人、エッセ…

冬野水槽

冬野 水槽(ふゆの すいそう、2000年1月29日 - )は、日本の俳人、詩人、エッセイスト。 大学在学中に、友人の影響で短歌に興味を持ち、X(旧Twitter)にて作歌をはじめる。同じく在学中に、俳句の授業を受講したことで俳句にも興味を持つ。

最近の記事

【一首評】街灯がしっかり地面を白ませてだれもならんでいないバス停

短歌の凄いところは、三十一文字という短い(人によっては長い)文字列に、作者の感じた気持ち・目にした景色・あるいは想像世界を圧縮し、読者に届けることができる点だと思う。 散文に限りなく近く、しかし定型詩の韻律は保っていること。 それが短歌の強力な武器だ。いわば短歌は、散文の自由さと俳句のストイックさを両立した、ハイブリッドな詩である。 さて、今回の一首を見てみよう。 一読して、静かで澄んだ印象を受ける。 内容としては、「街灯が無人のバス停を照らしている」というだけなのだが

    • 【20240712】振り子

      エッセイストになりたい。品田遊のように。穂村弘のように。 とはいえ、書くことがない。私の人生は平坦ではないものの、面白い起伏もないのだ。 俳句も、短歌も、小説も、エッセイも書けない日は、何をしたらいいのか自分でも分からない。「書きたい」という気持ちだけが宙ぶらりんとなって、私の脳裏を振り子のようによぎる。ぼーん、ぼーん。 人と話したい、という欲求が日々募っている。 最近は人と会う機会が多く、以前と比べればかなり口は動かしている方なのだが、それでも何か物足りない気持ちがある

      • Lonely or Not Lonely

        ロックを聴く葬儀の帰路 スタングレネードの動画に笑う 目を覚ますと地元の車窓 孤独のようで孤独ではない 厄年にもなってズル休みをする 小説の帯を外して持ち運ぶ 右肩の蝶、内側の蠅 自由律俳句の本を読んでいたら思いついた、詩と散文のあいだの何か

        • 話の深掘り、内にある信念

          思うこと。 話を深掘りできるタイプの人間が好きだ。 ジャンルは問わない。悩みについて、創作について、趣味について、なんでもいい。とにかく話を深掘りすること自体が楽しいのだ。 深い話をするには、相手との相性がかなり関係してくると思う。 お互いに対しての信頼度、「どこまで踏み込んでいいのか」という間合い、知識の守備範囲、考え方の指向など、それらをひっくるめたものが「相性」だ。 相性の良い相手とは、自然と深い話がしやすいと感じる。 逆に相性が合わないと、深い話に至る前に会話が

        【一首評】街灯がしっかり地面を白ませてだれもならんでいないバス停

          今までnoteを書いていなかったのは、ログインパスワードを忘れていたからです。 noteを再び書き始めたのは、ログインパスワードがChromeに保存されていたからです。

          今までnoteを書いていなかったのは、ログインパスワードを忘れていたからです。 noteを再び書き始めたのは、ログインパスワードがChromeに保存されていたからです。

          思案

          過剰なネガティブ思想、いわば卑屈な姿勢は自分のみならず周囲をも不幸にすると気付いた。私はネガティブな姿勢でモラトリアムを駆け抜けたので、この凝り固まった猫背のような思考パターンを矯正するのはなかなかに難しい。 卑屈な姿勢で生きてきたので気付かなかったが、最近になって、「卑屈な姿勢は客観的に見て不快」だと感じることが分かった。謙遜を超えた自己否定、低すぎる自己肯定感、他人への過剰な配慮。そんなものは不要だと思うようになってきた。 おそらく鬱が寛解してきたためだろう。 円滑な

          喉を刺す記憶

          何があったわけでもないのに、喪失感が消えない。 あるいは、何もなかったからだろうか。 かつて好きだった人との思い出。 いや、思い出と呼べるほどのものではないが、それでも私の記憶には深く刻まれている。 今でも鮮明に思い出せる。 その日は雨が降っていた。 私は確かにその人と会った。そして、その日は別れた。それだけ。 この、なんの変哲もない一日の記憶が、私の心を掴んで離そうとしないのである。 その日は、ただ、言葉を交わした。私は緊張していた。あなたは笑っていた。周囲に人は

          喉を刺す記憶

          【短篇】情愛線

          枕木の上に寝転がると、二人はお互いの唇を求めあった。 既に日は暮れており、線路の点検をする作業員を除いて、二人の障害となる者はいなかった。 半ば剥ぎ取るように服を脱がせあうと、彼は彼女の中に入った。前戯はなかった。その必要もなかった。彼は本能のまま動いた。彼女もそれを求めていた。 二人は獣のようだった。言葉を交わす代りに、彼らは口づけをした。 自分たちが人間であることを確かめるように、何度も。何度も。二人はお互いに掴みあい、爪を立て、ときに嚙みついた。 その血が、汗が、体

          【短篇】情愛線

          【短篇】味

          忘れもしない出来事です。 7月も下旬に差し掛かろうとしていた日のことでした。 その日は残業に次ぐ残業で、なんとか終電に駆け込んで帰りました。 家に着いた頃には、もう頭も回らないほど疲れた状態で、ネクタイもしたままベッドに倒れるように眠ってしまいました。 明け方頃でしょうか。 ふ、と目が覚めてしまいました。 僕はいつの間にか布団をしっかり被って、それも仰向けの綺麗な姿勢で天井を見上げていました。 時計を見ようと手を伸ばそうとした瞬間、異変に気付きました。 手が動かない。

          【短篇】味

          【短篇】巨大未確認飛行物体から送信された音声メッセージ

          オイソガシイトコロシツレイイタ シマスワタクシウチュウノホウカ ラマイリマシタ【粘性のあるノイズ。文字起こし不能。編者注】ジンノモノデゴザイマストツゼンスミマセン チキュウジンノカタガタヘゴレン ラクサセテイタダキマスワタクシ ドモハデスネイゼンソチラノワク セイニセイソクシテイタモノノマ ツエイナンデスガヒサビサニコチ ラノホウヘキマシタトコロアナタ サマガタガキュウゲキナハッテン ヲトゲテラシタモノデコチラトシ テハタイヘンイカンナンデスネイ チオウワレワレノコキョウデア

          【短篇】巨大未確認飛行物体から送信された音声メッセージ

          【短篇】トーキョー・サレンダー

          「狙撃手に伴侶はいらない。守るものがあればあるほど、トリガーを引く指が重くなる」 そう俺に言った観測手のスコットは、4日前に奇襲を受けて死んだ。散弾銃をまともに食らい、顔を腐ったリンゴのように吹き飛ばして。 「アフガニスタンのことを思い出すな、ええ?」 奴の最後の言葉だ。戦地の真っ只中、それも倒壊寸前の立体駐車場で言うような言葉じゃない。あの言葉に意味はあったのか、それともいつもの妄言なのか。今となっては確かめようもないが。 戦争が始まったのは、俺達が新宿のヤキトリ屋

          【短篇】トーキョー・サレンダー

          【短篇】リビングデッド

          健康診断に行ったら、脈拍が止まっていると診断された。 「機械の故障だとは思いますが、そうでない場合、あなたは既に亡くなっていると思われます」と医者が言う。 僕は適当に相槌を打ちながら、めちゃめちゃ自信のないケンシロウみたいだな、とぼんやり思った。ちなみに『北斗の拳』を読んだことはない。 とりあえず後日に再診断を受けることにして、病院を出た。 帰りの電車に揺られながら、診断結果について少し考える。 十中八九機械の故障か誤作動なんだろうけど、それにしても健康診断の結果が「死亡

          【短篇】リビングデッド

          眠剤に抗いながら文字を書いた

          「止まない雨はない」「明けない夜はない」とか、そういう言葉が嫌いってだけの話をします。 上記の二つ、一般的にはポジティブな印象を受けるんでしょうけど、個人的にはめちゃめちゃ嫌いです。反吐が出る。 そもそもこっちは「雨/夜がつらい」という話をしているんだが? 「雨が降っていて困る」という状況で「まあいつか止むよ」って言われても、何の解決にもなっていない。傘くれ傘。 同じく「夜がつらい」という状況で「まあいずれ日が昇るよ」って言われても、こちらも何の解決にもなっていない。温か

          眠剤に抗いながら文字を書いた

          思うこと:移動時間と睡眠

          電車とか、誰かの運転する車とかで寝るのが好きだ。 特に通学路の電車。私の通っている大学は実家からやや遠く、駅から駅まで最短でも50分くらいかかる。1年の頃は1限に間に合わなかったり、寝過ごして全然知らない駅まで行ってしまったこともあった。しかし5年目ともなると、イヤホンを付けながらでも乗換駅で勝手に目が覚めるようになった。我ながら成長である。 それにしても、なぜ電車や車ではよく眠れるのだろう。 まず一つ思い当たるのが、「移動時間は短縮できないから」という理由だ。 徒歩や

          思うこと:移動時間と睡眠

          不調=本調子なのではないか

          冬野水槽です。 ここ最近、不調が続いています。体調的にも、精神的にも。 創作活動に一切身が入らないこともしょっちゅうで、特に今年に入ってからは新作をほとんど上げられていません。一首だけちまっと上げる程度。 最初は単なる不調/スランプだと思っていたのですが、数カ月経っても未だに厳しい状況が続いているので、これはもう本格的に知識や技術が枯れ始めているのではないかと思えてきました。 今まではビギナーズラックで短歌やら俳句やら小説やらを書き続けていられたけど、ついにそのスタートダ

          不調=本調子なのではないか

          【日記】23歳になって思うこと

          2023年1月29日をもって23歳になった男こと冬野水槽です。 時が経つのは早いものですね。 花は散り、月は欠け、私は23歳になる。 とはいえ、あんまりイベントらしいイベントはない歳なんですけどね。 厄年でもないらしいし、成人式に至っては3年前の出来事ですし。懐かしいな。 個人的には(それも上手くいけば)今年度で大学を卒業し就職するので、それが大きな転換点になるかなって感じです。社会人になっても楽しく暮らせるといいな。 以前の私であれば欲しいものリストとかを公開していた

          【日記】23歳になって思うこと