【辰】龍尽くしカレンダー6月・雨龍(後編)
前回に続き、今月は前編後編の2本立てです。
前編を読んでくださって、
更にこの後編を開いてくださる皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
前編に比べると原稿用紙1枚くらい少ないので、どうぞご安心を(*’∀')!
前編はこちら ↓↓
これまでの龍はこちら ↓↓
6月のテーマ「雨龍」
おさらい、今回は5種類6匹の龍を描いています。
①雨龍図鐔/志水甚五 作、東京国立博物館所蔵、17世紀
②竜文 ★
③竜文 ★
④雨龍盤 所載蒙古襲来絵巻 ★
⑤古墨螭竜紋 ★
前編は、
「雨龍が螭竜や璃龍やミズチなんかと同じものと言われているけれど、
それ、設定がかなり怪しいなぁ」というお話で終わりました。
龍の細かな設定・分類を追いかけても徒労に終わることがほとんどです。
ですので、
そういうのは一人で追いかける。
螭竜・璃龍・ミズチのことはオイトイテ、
さぁいざ雨龍へ。
雨龍の登場時期
シンプルに日本の雨龍の話をしましょう。
だいたいこういう調べ物の際には、
「いつからこの人、日本にいたのかなぁ」と始めることが多く
今回も雨龍の登場時期を探ってみました。
そこでカギになったのが「雨乞い」です。
雨とつくからには
やはり雨乞い効果ありとして親しまれてきた雨龍。
初登場の舞台はどうも京都・神泉苑のようです。
日本の有名な雨乞いといえば神泉苑。
神泉苑さんの上記webページでも見て取れるよう、紋はビンゴの雨龍です。
空海に始まり静御前もこちらで雨乞いを行い、
どうも、その静御前の雨乞いを伝える『静女蛙蟆竜舞衣略縁記』で、
初めて「あまりゅう」という言葉が出てくる。
この静御前の雨乞いは1182年ということと、
どうやら鎌倉時代には家紋としても用いられていたよう。
最初からそうだったかはオイトイテも、
南禅寺や天龍寺といった1300年~1400年代創建の寺院の紋が雨龍。
縁起が複雑ですが竹生島神社もそうです。
早くて1100年代頃の登場、普及は1300年代からかな、というところでしょうか。
江戸時代には親しみ度も増して、若冲が『雨龍落銭図』を描くなど
画題としても流行ったようです。
雨龍の形
どうやら雨乞いパワーと「龍の幼体」設定で人気を博した雨龍。
幼体はこれから成長していくとして縁起も担げたことと、
ゆるキャラ的あのキャッチーデザイン。
江戸時代以降、布や器といったクラフトデザインへの意識が高まるとともに
雨龍もそこにニョロニョロ入り込んでいきます。
ただ、ゆるい形というのはやはりわかりづらい。
今回題材を採った『内外文様類集』でも
雨龍なのか龍なのか悩むものが結構ありました。
これまで1月からずっとお付き合い頂いてる方はご存知のように
ゆるい龍がたくさんいるわけです。
左下の竜唐草なんて、雨龍とだいぶ近しい形です。
ニョロなんて龍でも結構いるではないか、
雨龍とは一体なんなんだ、
むしろ龍の簡略化の過程で「幼体」や「子」という設定が生まれ
そこから雨龍が派生したのか…
そんなことをあてどもなく思いながら
ふとひらめきました。
これ、タツノオトシゴの影響ってありませんかね。
今月もドキドキが止まりません。
と、今回もお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
長かったですね。(6000字)
私も疲れました。
結局、雨龍とタツノオトシゴとの関連について触れたものにうまく出会えず
そもそもタツノオトシゴってなんてストレートな名前。
その、
「竜の落とし子なんだよ」
という説得力に今回は押し切られた形となりました。
他にも『静女蛙蟆竜舞衣略縁記』が「あまりゅう」の初出なのか
家紋や寺紋の歴史ってどうやったら調べられるのか、とか。
こういうのは難しいですね。
そんなマジメな力不足を残念に思うより強く、
縁起タイトル「蛙蟆竜」の絶望感よ。
せっかく日本しばりで引きこもったのにすぐコレですよ。
良いのか…と悩む私を尻目に
神泉苑は古く空海さんの折から善女龍王が御用達のため
「善女龍王=蛙蟆竜」という図式が出来上がっている。
ここから「雨龍=善女龍王」という図式もどうやら出来上がっている。
善女龍王=蛙蟆竜=雨龍
ほらまた勝手にくっついた。
まぁこんなもんです、龍は。
龍の分類、龍の子、龍の簡略化…
色々芋づる式につながってはこんがらがり、
全体を見ようと風呂敷を広げればどこから来たのかわからなくなる。
この果てしない探求を「沼落ち」と呼ぶのでしょう。
来月は何にしようか決めきっていないのですが
たぶん暑気払いで水系の「飛龍・応龍・翼龍」、
もしくはひねって「シャチと登竜門」とか。
(8月は熱き不動明王で倶利伽羅龍がすでに着席)
暑気払いのはずがうだるような長文になるかもしれません。
どうぞ来月もお楽しみに!
おまけ
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