ひ さ し ぶ り に 良 い 小 説 読 ん だ 。
彼と別れて○日目、とあまりタイトルに書かなくなったけれど。
ふと流れ始めた曲が失恋にまつわるものだったり、表紙が気になって手に取った本の内容がシンクロしたり。不思議な偶然におもしろを感じているこの頃。
先日、図書館で借りた本のうち、窪さんの「私は女になりたい」を読み始めてみた。ら、最初はゆるゆると読んでいたのに、途中からぐんぐん引き込まれて読むスピードが加速。3日くらいで読了した。
窪さん、やっぱすごい。大体いつもこんな感じになるんだよな。
そして、読後感も良くて。(窪さんにしては珍しいかも)
この小説の主人公は、美容皮膚科医の47歳の女性。赤澤奈美。
バツイチ。息子がひとり。別れた旦那は厄介で、自殺未遂をしようとしたり、お金がつきると連絡してくる。
シングルマザーで生活をやっていくのは大変で、オーナーの佐藤という男性と定期的に一緒にホテルで寝ることでサポートを得て、なんとか金銭的なバランスを保っている。
そんななか、奈美は薄毛治療に来ていた元患者 業平公平と恋に落ちる。
見た目は特にタイプではなかったのだけど、10歳以上も年下のその男性に、奈美は少しずつ心引かれていく。
この小説のどこに自分は心を持っていかれたかっていうと、
「人を好きになるときってこういう感じ」
というのを、とてもリアルにあらわしていたから。
漫画でいうと、いくえみ稜さんとかも恋愛の雰囲気すごく分かってるなぁ~!ってよく思うのだけど、窪さんのこの小説も、しみじみ沁みた。
主人公の奈美は美魔女みたいに綺麗なのだけど、お相手の公平は若いけど外見が良いわけでもないんだよね。だけど、引かれる。その理由も読んでいてすごく伝わってきた。公平の強引さ、愛、熱、そういうのが、奈美の心を動かしたんだよね。でも奈美は、年齢のことをすごく気にしてしまう。
外見は、美容皮膚科医ならではの治療法でお肌とか顔とかなんとでもなるけれど、身体のほうはどうしても老いていってしまう。だけど、そういうところに自信のない奈美にかける、公平の言葉がとても熱かったな。
私がつい最近まで一緒にいた彼は、別に外見がタイプとかじゃなかった。でも、一緒の部屋じゃないけど、隣同士の部屋で生活をともにするうちに、いいなって思うところが増えていったんだよね。タバコ吸ってても、ちょっとお腹出てても、こういうことってあるんだ・・ って、自分のなかで新発見だった。これまで外見で選ぶことが多かったから(そして、全然長く続かなかった)、そんな自分に気づけてちょっと嬉しかったんだよね。だから、奈美の気持ちすごく分かるなって。でも、そんなに歳の離れたひとと付き合ったことないから、身体の老いがコンプレックスで・・ みたいな気持ちはまだ経験したことがない。
この小説は、途中からスッと加速する。
流れが変わる。スパイスみたいなものかな。
でもそのスパイス的なものは、誰にでも起こりうることなのかな、って思ったり。わたしだと、前の会社辞めるときだな。一気にいろんなことが重なるときってあるよね。
奈美は、母の入院費用、息子の学費、医院の費用、特に金銭的にいろんなものを背負っていてぎりぎり状態なのだけど、そんな奈美に、この小説を書いている窪さんが重なったりもした。窪さんもシングルマザーだから、主人公奈美のリアルな気持ちが描けるのかなって。
窪さんはR-18文学賞を受賞してから小説家デビューされたのだけど、R-18というだけあって、わりとお話のなかに性描写が多い。でもわたしは元々リアルなのが好きだから、窪さんの小説はずっと好きだった。(R18ぽいので言えば、写真家の藤代冥砂さんの短編集、リリーフランキーさんの短編集もかなり好き)
今回のお話にももちろんR18的なシーンは出てくるけど、ほんとリアルなんだよね。で、あとそのシーンによってお話の内容に深みが出てて。はーやっぱ窪さんの小説好きだなってなった。そういうのって絶対スルーしないで欲しいとこだから。
あんまり小説の感想とか書くのは得意じゃないのですが、あまりに良いと思ったので珍しく書いてみました。
恋してる方、別れたばかりの方、いろんなものを背負っている方、恋愛とか忘れたわーって方、に限らずとも、いろんな方に読んでもらいたいな。。と素直に思える小説でした。
自分の人生にも、公平みたいな、明るくてちょっと強引な、愛のある男性があらわれたらうれしいな。なんてね。自分に合う人って一体どんな人なんだろ。
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