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ソーダ水に憧れる

昔から「ソーダ水」「レモネード」「ラムネ」などの飲み物に憧れる。なんとも字面からして涼しげで飲みやすそうだ。まさに夏にふさわしい飲み物という印象がある。

おそらく自分自身がそれを飲めないからだ。炭酸というものは子供の頃に親に禁止されているうちに、飲まず嫌いのような状態になってしまっていた。

コーラが主な禁止物質であり、友達の家で出されても簡単には「飲む」と言えなかった。なので代わりに「お茶のほうがいい」とさりげなく伝えていた。

カルピスはなんとか許してもらえた。ラムネは縁日のたびに飲んでみたいと思っていたが、大人になってから飲みたいと思っても「けど合わなくて残してしまったらどうしよう」と考えてしまう。結果、買うことが出来ない。

レモネードは、単純にレモン味が苦手。


そして大人になってからついに炭酸の飲み物を飲む機会がやってきた。それは友達と居酒屋に行ってみた時に頼んだ、カルピスサワーというものである。

お酒を飲むのが初めてな私にとって一番心配だったのが、お店で具合が悪くなってしまうことだった。そして未知の世界である二日酔いというものを体験することも怖かった。

それについて友達に相談したところ、「サワー系ならそんなに酔わないと思うし、大丈夫だと思うよ」と言われたのだ。


さてはて、おっかなびっくりな状態でカルピスサワーという初めての炭酸ものに口をつけてみた私。

よくみんなが言っていたしゅわしゅわといった感覚を味わうことができ、とても嬉しかったのを覚えている。ぱちぱちと口の中で泡が弾けていく感じや、ただのカルピスと違う食感にただただ感動した。これが炭酸というものなのかと思った。

大人になってからやっと、憧れていたものを体験できたことが感慨深かった。その日は最高の気分で家に帰ったものだ。もうスキップでもしたいような気分だった。

しないけど。


けれども何故か居酒屋以外で飲もうとは思わなかった。ラムネと同じく「合わなくて残してしまったらどうしようと考えてしまう」ということだと感じた。

居酒屋では平気で飲める。むしろ飲みなれたので他にもサワーでいろんな味のものを頼んだりしていた。

ビールや日本酒、カクテルは飲めなかったけど、思っていたよりも種類を飲めるようになって嬉しかった。

とにかく友達と同じように飲んで話すのがとても楽しかった。居酒屋であればお酒を飲み残しても普通だし、何か言われることもない。気持ちも楽だった。


けれどこのコロナ禍で「三密」という理由もあり、友達と居酒屋に行くことはできなくなってしまった。

いっそ一人居酒屋というおひとりさま高レベルのことをやってやろうかとも思ったけど、できない。もしお酒で具合が悪くなった場合に、ひとりでちゃんと帰れるかどうかが気になってしょうがないということもある。

仕方がないので今まで買おうと思わなかったチューハイを買ってきてみたけど、あんまり飲めなかった。友達が一緒にいてくれたから安心して飲めていたことに気付いた。

おしゃべりをしながら楽しく過ごしていたから、あんなに居酒屋が好きだったのだ。チューハイで初めて飲んだ「いちご味のサワー」の泡がだんだん溶けていくのを見ながら、そんなことを考えていた。


実はSNSで紹介された、新宿にある唐揚げ専門の居酒屋さんにいつか行ってみたかった。鳥貴族にも行ってみたかったし、弟に勧められた焼き鳥の種類をいくつか食べてみたかった。

よく考えてみたら食べたいのが鶏肉ばかりになっていて笑える。

カルピスサワーが飲みたい。そしてまたあのしゅわしゅわする感覚をまた味わいたい。けれど今、私が唯一炭酸を飲める場所は、だいぶ遠い場所に行ってしまった。


こうして今日も、ソーダ水への憧れとともに夜が更けていく。



夏に投稿したかったのですが、お蔵入りになってしまった記事です。季節外れな内容ですみません。

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