見出し画像

ポムの樹と夜の公園

大学生のとき、履修していた授業で、学期末の打ち上げがあった。

私は、そのとき理由があって、行きたくないなぁ。。という心境だったのだけど、放課後に校庭にあった竹のオブジェに登ってみんなで遊んでたら、今日ご飯食べに行くんだけど、行かない、、?と、違うクラスの子が誘ってくれた。

その友達は私の事情も知らないし、ただ偶然言ってくれただけなのだけど、打ち上げには行かないにしても、わいわいはしたい気分だったので、二つ返事で「行く!」と答えた。

行ったのは、ポムの樹。オムライスが有名なお店で、学校の最寄り駅にある。課題や制作、先生、友達のこと。たわいない話で盛り上がった。美味しいし、楽しいし、ほっこりしたひととき。初めての組み合わせのメンバーだったので最初は緊張もあったけど、いつしかそれも気にならない位に、気持ちが解れていた。

同じ階に、ガラス張りの街を見渡せるフリースペースがあって、食事の後、そこに移動しておしゃべりの続きを。照明がちょっと薄暗いせいもあってか、まじめな話や、恋愛の話なんかもした。気づいたら夜も遅くなってきたので、そろそろ解散するかなと思いきや、

花火したくない、、?

と、一人の子が呟く。

したい!しよう!と、その足でコンビニに行って花火を買い、近くの公園に向かった。

数時間前は、打ち上げどうしようかな、、と悩んでいたのに、こんなにも楽しい時間が過ごせて、良かったな、ありがたいなーっと、思いながら、目の前の色鮮やかに移ろう光を見つめる。隣では、友達が嬉しそうに花火で大きく円を描いている。


パチパチパチパチ。


小さな線香花火が、昔から好きだ。夏の終わりの儚さを代弁してるかのような、音も、光の繊細さも、頼りのない持ち手も。存在自体が愛おしく切ない。

楽しかった時間ももうすぐ終わり。私には終電がある。他のメンバーは一人暮らし組なので、自分だけ先に帰るのが淋しく感じた。

ガタンゴトンと帰りの電車に揺られながら、今日はすごくいい夜だったな、、と、人の少ない静かな車両で、心地よい疲れと共にゆっくりと目を閉じた。

ーーー


今日で8月もおしまい。秋の気配がだんだんと色濃くなるなか、ふいに思い出した、楽しかった夜の思い出。



この記事が参加している募集

お読みいただきありがとうございました。おだやかな1日になりますように。