ことのは もも。

関西に在住している主婦です。

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  • ショートショートnote杯 参加作品

    ショートショートnote杯にエントリーしている作品集です。

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第三十三回伊藤園お~いお茶新俳句大賞に入賞しました。

 第三十三回お~いお茶新俳句大賞のオンライン入賞作品発表会が10/30の日曜日の午前10時30分~YouTube上で行われた。  この日は友達と遊ぶ約束をしていたので、既に家を出ている時間帯だったが、待ち合わせの11:30まで電車移動をしながらスマホで発表を見ていた。  今年も佳作特別賞に入っていますように!!  そう祈りながら画面を眺めていたが、10月はたまたま外でスマホを使うことが多く、珍しくギガの残りが僅かとなっていて動きがとにかく遅くカクカクとしていた。  自分が

    • 『デジタル・バレンタイン💝』

      「このスポンジ知ってる?」  私はマグカップに付いた茶渋を、水を含ませたスポンジで丁寧に取っていく。 『あー、それネットでなら見たことあるよ‼️』 「そう、メラミンスポンジ。とにかく昔は何をするにも今よりだいぶん時間がかかったのよ」 『そんなのAI食洗機にやらせちゃえば一発なのに』 「そうなんだけど、懐かしくて。さてマグカップも綺麗になったし美味しい珈琲を淹れようか」 『賛成!ところでこれ……』 「なに?チョコレート?手紙付きで?しかもちょっと高いやつじゃない」 『昔は違った

      • 夕焼けビール🍻(ツノがある東館)

        「今日の一杯はきっと最高のものに違いない」  俺はそう確信すると定時きっかりに会社を後にした。  クラフトビール店『空層(くうそう)』の東館の入り口には既に数人が列を成しており、暑い中入店まで小一時間程待たされた。  その間に夕間暮れの空は漆黒を纏っていく。 (はたして間に合うかな……)  入店し顔馴染みのマスターと目を合わせると彼はうんと頷いた。 『本日の夕陽の美しさは近日観ない程でしたから、それはもう濃くて澄んだオレンジ色をしていますよ』  そう言いながらいくつか並んでい

        • 会員制の粉雪

          『粉雪不足につき、粉雪希望の方を募ります。会員制です』  就職情報誌に目を通しているとこういった文言が目に飛び込んできた。 (粉雪希望!?)  意味が全然理解できないけれど、降る度にいつも人々にため息を吐かれている牡丹雪は勇気を振り絞って応募することにした。  電話連絡をし、面接の約束を取り付けた牡丹雪はその足でホームセンターへと向かった。  季節は大寒、真冬。それははじめはなかなか見つからなかったが店員に案内してもらい、やっと見つけることが出来た。  支払いを終えた牡丹雪は

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          ビッグバン予定表(台に×アニバーサリー)

          一月の最終日。僕は壁掛けカレンダーを一枚破った。明日は父さんの誕生日だ。 僕はリビングテーブルの椅子に座り、サプライズで用意しているビックリ箱の中身がちゃんと出てくるか確認する。 絵が得意な母さんは毎年リビングの壁掛けカレンダーの家族の誕生日の欄に当人の好きなものを描きその日付を彩っている。 僕は宇宙が好きなのでいつも星座や惑星を描いてもらっていて、 「あんたを産んだ日は親戚中大騒ぎでまさにビッグバンだったんだから!」 と、母さんは折に触れそう言って楽しそうに笑う。 さて、今

          ビッグバン予定表(台に×アニバーサリー)

          三羽の鳥の詩(うた)

          部屋に差し込む朝焼けの光が鳥の形をしていることに気がつき、私が首を傾げるとおはようと声をかけてきた。 鳥は三羽いて、よく見ると各々違ったかたちをしていた。 三羽はみんなオスで私の部屋の隅に思い思いの巣を拵えはじめ、夜になると何処かへ消えていった。 しかし翌朝再び現れ、私を誘いにきた。 『キミたちは朝が好きなの?』 「「「だって夜は眠るものだから。さぁ、お話をしよう」」」 私はそれぞれの巣を順番に訪問することにし、いっしょにご飯を食べたり、お互いの思いを語り合ったりした。

          三羽の鳥の詩(うた)

          チラシの誘惑(親切な×暗殺)

           大型の台風が過ぎた次の日のこと。  倒れた物干し台を起こそうとベランダに出ると、チラシの切れ端が物干し棹にくっついていることに気が付いた。 『にん○ん 1本 5○ 円 』  所々読めない箇所があったが大好きな人参が安そうだったので、午後からチラシに記載されている地図を頼りにその場所へ車で向かった。  着いた先は少し大きい建物。  ボロボロの状態のチラシの切れ端を入り口に立っていた従業員に見せると、にやりと私の顔を見ていやらしく笑った。 「お客様は見る限り30代の前半でまだま

          チラシの誘惑(親切な×暗殺)

          ペンギンと暮らしたい(なるべく×動物園)

           A国へ二年という期限で会社から単身赴任を命じられて越してきた当初は、戸惑うことも多かったが自宅にはプールがあり、仲良くなった友人を招いては頻繁に泳いでいた。  しかし、妻が作ってくれる和食が恋しくて、一日も早く帰国したいと常に願っていた。  残り一ヶ月となった頃、何気なく住まいのしおりを見て愕然とした。  なんとこの家のプールではペンギンの飼育が可能だったのだ。  ペンギンは幼い動物園で見て、歩行時の可愛らしさに魅了され、泳ぐと存外に速くとてもかっこいいのでいつか飼って

          ペンギンと暮らしたい(なるべく×動物園)

          しゃべる家電たち(イライラする×挨拶代わり)

           最近の家電は意志の疎通ができる。私は帰宅して直ぐにご飯が食べられるように休日は炊飯器のタイマーをセットして出掛けるのだが、最近調子が悪くたまに時間になっても炊飯を開始しないので、すぐ側に置いている電子レンジが 「時間よ、早く早く!」と喋りだし、 「わかってる……」と嫌々起きた炊飯器が答えるという具合に家電同士の喧嘩がたまに勃発する。  留守宅を監視出来るカメラでそのことを知って以来、私は家電たちに仲良くするように躾ている。  ある日掃除ロボットが苦しそうにしていたのでトント

          しゃべる家電たち(イライラする×挨拶代わり)

          『海苔』

           夏休みのアルバイトとしてここに来た高校生の彼女は、顔も髪もとても美しかったので私はとうとうこの時がやって来たのだと思いました。  しかし私が彼女に触れれば私はここを辞めさせられるでしょう。だから知り合いの女性にそれを頼みました。  彼女のバイトが休みの日に、街で彼女にヘアカットモデルのスカウトをしてもらったのです。  えぇ、彼女は自身でもその美しさには気がついていたようでそれを断りませんでした。  その日のうちに彼女の艶やかな黒髪は私の元に届きました。  それを丁寧に、

          断捨離(未来(の)×断捨離)

           博士は大体において何でもこなせる質だったが、片付けだけは苦手だった。  片付けをさせるためだけに家政婦を雇おうともしたが、研究の秘密を知られて持ち出されては困る。なので専用のロボットを作ることにした。  精巧に作った片付けロボットはよく働き、秀逸だった。  その年の暮れ病気が見つかった博士は、入院する前に断捨離することを決めた。  経過次第では長期化するかもしれず、暫くここには帰ってこられないかもしれないからだ。  博士はロボットに、この家にある古くて要らなそうな物から

          断捨離(未来(の)×断捨離)

          『ブルームーンの秘密』(半笑いの×ポッキーゲーム)

           今日の月は忙しいのかそれとも出るのを忘れているのか、なかなか顔を見せてくれません。  地上では森の動物たちも人間も、まだかなぁと夜空とにらめっこしています。  今日の出番は満月くんです。しかも今月は月始めに出て以来二回目の大舞台です。  だからより綺麗にカッコ良く自分を見せたいとあれこれと思案しているのでした。  そんな彼の姿を偶然見ていたのは星さんでした。いつものように気分のまま流れていたら、今夜の満月くんが真剣な面持ちで悩んでいるのを見つけてしまったのです。 『ね

          『ブルームーンの秘密』(半笑いの×ポッキーゲーム)

          『西瓜』(ほんの一部✖️スイカ)

           同居していた義母は西瓜を嫌っていた。  子供の頃何度か種を飲み込んでしまい、その後必ず気分が悪くなったからね、と夏が来る度そう口にした。  それでもどうしても家族に西瓜を食べさせたかった私は、長男が三歳になる頃一度買ってきて夕食後の食卓に出したが、義母は「きっと後悔するよ」と呟き、食べずにその場を去った。  それ以来、私が西瓜を購入することはなくなり、いつの間にか食べたいとも思わなくなっていった。息子は学校の給食で出されたこともあったようだが、食べ慣れないものだからと友人に

          『西瓜』(ほんの一部✖️スイカ)

          家族の想い出 (生き写し×バトル)

          「俺のことなんてどーでもいいんだろ?」息子が反抗期を迎えた。  共働きで構ってやれてないからか?俺も妻も帰宅が遅いので最近はすれ違ってばかりだ。どうしよう……。俺は暫しの間考え新型のVRシステムを買ってきた。 「翔、これを一緒に見よう」  ヘッドセットは三つ。一人一つずつつけると、俺はスタートボタンを押した。  予め設定していた通り、俺自身の家族と過ごした想い出が流れはじめ、年月を遡っていく。  最初は嫌々だった息子も幼児期に三人で過ごした場面になると「こんなことがあったん

          家族の想い出 (生き写し×バトル)

          時の三叉路(顔×自動販売機)

           時の三叉路に遂にたどり着いた。ここは天国への道程。  そこには意外なものが置かれていた。  生前よく目にしていた『自動販売機』だ。  しかしICカードも小銭も棺に入れてもらえなかったためあいにく持ち合わせていない。  だが俺が愛飲していた日本酒もそこには入っており、見つけてしまったからにはそれをどうしても手に入れたい衝動に駆られていた。 『これを買うためには……と』暫の間自販機とにらめっこをする。小銭を入れる辺りにはIC読み取り機があり、そこに顔を近づけると自販機のボタン

          時の三叉路(顔×自動販売機)

          メガネは全て見ていた(メガネ×朝帰り)

           油断していた。デイリーコンタクトの在庫がまだ引き出しのなかに一箱あると思っていたのに私の記憶違いだったのかそこに存在していなかった。  翌朝、仕方なくメガネで出勤することになった。  酷い近眼の私は近視用のメガネでは目が一回りもふた回りも小さく見えるので外ではなるべくかけたくなかったのだが致し方ない。  デスクに座ると早速後輩が話しかけてきた。 『先輩、メガネなんて珍しいですね。いつもより目がちっちゃ!!(笑)』 「あんまりこっちを見ないでよ」私は冷静に返答すると仕事に取り

          メガネは全て見ていた(メガネ×朝帰り)