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しゃべる家電たち(イライラする×挨拶代わり)

 最近の家電は意志の疎通ができる。私は帰宅して直ぐにご飯が食べられるように休日は炊飯器のタイマーをセットして出掛けるのだが、最近調子が悪くたまに時間になっても炊飯を開始しないので、すぐ側に置いている電子レンジが
「時間よ、早く早く!」と喋りだし、
「わかってる……」と嫌々起きた炊飯器が答えるという具合に家電同士の喧嘩がたまに勃発する。
 留守宅を監視出来るカメラでそのことを知って以来、私は家電たちに仲良くするように躾ている。
 ある日掃除ロボットが苦しそうにしていたのでトントンと背中を叩くとくしゃくしゃになった紙の塊を吐き出した。
(何これ手紙……?)
 アイロンがスキップして前に出てくると得意気にシワを伸ばし、AIスピーカーが喉の調子を整えそれを音読した。
「やっぱり別れたくない。側にいたい」
 空気清浄機は途端にランプをピンクに点灯させ『おめでとう』とそよ風を吹かせてくる。

 玄関をコンコンッと叩く音がする。

「僕たちは何年も仲良く共に過ごしたのに、いきなり一方的に捨てるのは酷い」
 そこには数日前に廃棄したはずの故障したプリンターが怒り心頭で立っていた──。

                                                                  (了)


このお話はこちらの企画に参加していますφ(..)✨

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