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【こじらせ三十路白書】母に認めて欲しかった中年女、体裁結婚の末路

ユミコはいつも欲求不満だった。
何をしていてもどこかぽっかり穴が空いていた。

どうしてこうなってしまったのか。
彼女の子供の頃に遡ってみよう。

ユミコには商売人の父、母、そして5つ離れた妹がいた。母は父の商売を手伝っていたので、日中は家にいなかった。小さい頃はおばあちゃんが家にいて彼女たちの面倒をみてくれていたのだけど、たまの休みに母親がデパートに連れて行ってくれるのがユミコの楽しみだった。

だけどユミコが5歳の時に妹が生まれた。母は一日中泣き叫ぶ小さな妹につきっきりになった。母はもう私だけの母ではなくなり、ふたりでデパートに行くことはなくなった。

母はユミコが不満そうな顔をするのを嫌がった。一度母の気を引きたくて、妹に授乳している時にわざとミルクのはいったコップを床にぶちまけたことがある。「ユミちゃん」母はとても悲しい顔をした。もう母は私だけを愛してはくれないんだ、小さいながらに悟った。

その代わり、母の家事を手伝ったり、妹をあやしたりすると決まって「さすがおねえちゃん、偉いねえ」と褒めてくれた。

その頃から私の生きがいは母から「さすがおねえちゃん、偉いねえ」と言われることになった。母を助けるような行為を目にすると、さらに周りの大人も「感心だなあ、しっかりしているねえ」と褒めてくれた。

その頃からユミコの自己像は「しっかりした子」になった。中・高と学級委員長に率先して手をあげたし、生徒会の副会長も務めた。

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