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「就職に有利だから」などといういい加減な理由で進路を決めてはいけない

七つ年上の双子の姉の成績を超えられず、都立高校でトップの高校に行けなかった。
姉が通った高校に行けなかったとはいえ、進学校に進むことになった僕は、高校3年が近づいてくると、当然のことながら大学受験を意識するようになる。

当時は高度経済成長期真っただ中で、いい大学に入っていい会社に入ることで、いい人生が保証されると考える人が多かった。

経済は毎年3%で成長し続け、大企業に入ればいい給料とボーナスが保証され、年功序列、終身雇用が当たり前で、定年まで勤め上げれば退職金をたくさんもらって、年金をもらいながらの悠々自適の老後が待っている。

出身大学でその人の価値が判断され、その結果、給料が決まり、人生が豊かなものになるかどうかが決まる。
そんな風に信じられていた、そういう時代だった。

理系か文系か問題

大学を受験するために、自分が理系に進むか文系に進むかの選択しなければならない。
これによって、高校で受ける授業が変わってくるからだ。

僕も含めて多くの人は、自分の成績を考えて受験に有利だと思われる方を選択する。

僕の場合は、結構悩んだ。

なぜなら、当時の僕の得意科目は、現代国語、物理、化学、地理、日本史。不得意科目は、英語、数学、古文漢文、世界史。

音楽と体育は好きだったけど、これは受験に関係ない。

ちょっと待て。
これでは、理系がいいのか、文系がいいのかがよくわからない。

物理は好きなのに、数学が嫌い。
現代国語は好きなのに、古文漢文が嫌い。
日本史は好きなのに、世界史が苦手(カタカナの人の名前が覚えられない)
そして、英語アレルギー。

理系に進むことにした理由

結果としては、理系に進むことにした。
理由はいろいろあったのだけれど、いくつかを上げてみる。

1、就職するときに有利だと聞いた
2、専門性を身につけた方がいいと考えた
3、小学校の時の通知表に「理論的な思考ができる」と書かれた
3、英語アレルギーだった
4、文系に進んだ姉と比較されたくなかった(逃げた)

今から振り返ってみれば、自分の人生を左右する重大な局面だというのに、まあ、細かく考察をするのもばからしいくらい、ちゃんと考えていないことが解る。

就職するときに有利だと言っても、なんとなくそんなイメージがあったというだけのことで、それが本当のことなのか確かめもしなかったし、一口に理系と言ったっていろんな仕事があるわけで、そんな漠然とした情報で決めてしまうなんてナンセンスだと思う。

さらに、英語に自信がないというか、英語で勝負することを避けたり、しまいには、姉と比較されることを避けるために、なんて理由で人生を決めていいはずがない。

しかし、意外に怖いのは、小学生の時の先生の批評。
こういうことを子どもは覚えていて、自分のセルフイメージを作っていくんだよね。

大人の何気ない一言が、子どもの人生を変えることがあるんだ。

本質的な思考ができていない

ふりかえってみると、人生の岐路に立っているという自覚もなく、ただ何となく受験に有利だろうとか、就職に有利だろうなどという漠然とした判断において自分の将来を考えていることが解る。

こんなことで、幸せな人生が送れるはずがないのだけれども、当時の僕はそこまで考えられなかったし、おそらく、そういう高校生は多いのではないか。

自分の人生をどうしたいのか。
そんなこと、高校時代に見えている人が少ないのも無理はないだろう。
だって、世の中を知らないんだもの。

世の中にはどんな職業があって、どんな構造になっているのか。
自分はいったいどういう人生を歩きたいと思っていて、そうなるためにはどこに進めばいいのか。

そもそも、大学に行くことがいいことなのかどうか。
大学に行きたいのか、行く必要があるのか。

世の中を知らないんだから、わからなくて当たり前だよね。

ただ何となく周りに流されていた

姉も二人とも大学に行った。
両親も、大学には当然行くものだ、という空気があった。

時代的にも、高学歴社会だったから、大学に行ける人は行った方がいいという感覚だった。

進学校だったから、友達もみんな大学に行くのが当たり前だと思っていた。

そんな中で、なるべく名の通った大学で自分が合格可能性のある大学はどこか。
理系で受ければいいのか、文系で受ければいいのか。

そんなことしか考えていなかった。

もっと自分の心と向き合えばよかった

今になって思うだけれど、もっとしっかりと人生と向き合うべきだった。
いや、もっと言うと、自分の心と向き合えばよかったと思う。

有利かどうかなんて関係ないし、英語コンプレックスなんて大した問題ではないし、姉と比較する必要なんてなかった。

自分はどうしたいのか。
自分の特性を生かして、自分が満足する生き方はどんな生き方なんだろうか。

高校時代からそんな問題意識を持っていれば、人生が大きく変化しただろうし、30代になってから人生をリセットする必要なんてなかったかもしれないと思う。

もちろん、人生にはタラレバはないのだから、今さそんなことを言っても意味はないのだけれど、もしやり直せるならばこのころからやり直したい。

もちろん、今の人生経験を持ったまま、あの頃に戻れたら絶対に違う人生になっていると思う。

結局、こんな調子だから、受験勉強に身が入らず、大学受験は失敗に終わった。
そして、一年間の浪人生活を余儀なくされることになった。

(つづく)

自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!