「推し、燃ゆ」宇佐美りん

新卒で入った会社を辞めてしばらく、何もする気になれなかった。
ただ寝て起きて食べて、それで精一杯だった。
そんなある日、久しぶりにTVを点けたらあるアイドルが歌っていた。
「胸は残念」「フェロモンなんてまるでないしもっと可愛い娘はいるよ」
自らのコンプレックスをさらけ出し、「それでも好きだよ」と歌う彼女の姿を見ていると、何故だか生きてみようと思えた。
元AKB48のさしこ、こと、指原莉乃さんである。
それから私は、相変わらず何もする気になれなかったが、アイドルソングを聴き続ける事ならできるようになった。
Youtubeの公式チャンネルなどで、色んなアイドル達のMVをずっと見ていた。聴いていた。特に、ももいろクローバーZとでんぱ組.incをよく聴いていた。
アイドルソングは、聴いているだけで元気が出るのだ。パフォーマンスを見ているだけで元気が出るのだ。不思議と。
上手くいかない人生を、その瞬間は忘れられるのだ。
私はグッズを買ったり、握手会に行ったり、ライブを見に行ったりするほど熱心なファンというわけでもなく、TSUTAYAでレンタルしたアルバムをiPodに入れて聴く、TVに出てたら見るくらいのファンだった。
一度だけ、近所ででんぱ組.incのライブがあると知った時はちょっと迷ったが、行かなかった。
その後、でんぱ組/incはメンバー脱退などがありハマっていた頃とは変わってしまった。
だから、あの6人だった頃に見に行っておけばよかったかなと思う。

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