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情報を正しく選択するための認知バイアス事典(2021/4/10)/情報文化研究所【読書ノート】

あなたは正しく情報を選択できているでしょうか?自信があるという人ほど、ぜひ本書に目を通してください。私たちの認知を歪ませる現象の多さに驚き、自分の偏った情報の受け取り方に気づかされることでしょう。しかし、それこそが情報を正しく見るための第一歩。認知バイアスを知らずして、自分が認知バイアスに陥っていることに気づくことは難しいからです。
本書は3部構成になっています。
認知バイアスに分類される用語は数百以上存在しますが、意味や用法が曖昧であったり、重複しているものも多いものです。そこで論理学・認知科学・社会心理学3つの専門分野それぞれで必要不可欠な20項目を厳選し、合計60項目にまとめ、図版やイラストを交えて解説しています。
賢い人・偉い人も、「見たいもの」だけ見るとバカになる
その理由の1つに、「自身の周囲の常識」=「世間の常識」と捉えてしまう認知の歪みがあるかもしれません。人は、自分の見たいものだけ見て、それ以外の情報に耳を閉ざしがちです(cf:チェリー・ピッキング)。さらに自分の考えと近しい人を周囲に集め、それ以外を攻撃したくなるものです(cf:内集団バイアス)。
「もしかしたら、自分はとんでもない勘違いをしているかもしれない」
そんな不安を少しでも感じるのであれば、ぜひ認知バイアスという不思議な心の動きを学んでみてください。


認知バイアスは、要するに情報をゆがんだ視点で解釈してしまう傾向、つまり思い込みなどを指します。この本を読むことで、自分が気づかないうちに陥っている思い込みに気付き、物事をより正確に見る方法を学べます。
専門領域からのアプローチ: この書籍は、社会心理学、認知科学、論理学といった3つの学問分野から専門家が分かりやすく解説しています。
論理学の誤謬 - ギャンブラーの罠: 本書の中で紹介されている一つの認知バイアスは、論理学の領域で起こることがあります。1913年、モンテカルロカジノでの出来事が興味深い例です。ギャンブラーが26回も連続でルーレットのボールが黒色のポケットに入るのを目撃し、その後赤色に賭けて大損しました。しかし、確率的にはボールがどのポケットに入るかは毎回1/2で変わらず、連続して同じ結果が出ることがあっても、次の結果には影響しないはずです。しかし、ギャンブラーはこの連続の結果に誤った認知バイアスが働いてしまい、誤った予測を立てた結果、大きな損失を被りました。
社会心理学 - 同調バイアス: 書籍の中で取り上げられる別の認知バイアスは、社会心理学の範囲で調査されています。これを同調バイアスと呼びます。これは、他の人が何かをしている、または周りがそのように振る舞っているから、といった理由で、誤った情報に従ってしまう傾向を指します。たとえそれが誤りであっても、人々は周囲の意見や行動に合わせることがあります。このバイアスは日常生活でもよく見られ、例えば多数派の意見に従うことが心理学的実験で示されています。
認知科学 - 視覚の誤解: 最後に、認知科学の領域で取り上げられる認知バイアスの例として、「ミュラー・リヤー錯視」が挙げられます。これは、錯覚図形の一例で、見た目には左の縦線が右の縦線よりも長く見えるように見えますが、実際には同じ長さです。このような錯覚は、周りの情報や視覚の特性によって生じ、我々の認知に影響を与えます。


まえがき「認知バイアス」とは何か?

第Ⅰ部 認知バイアスへの論理学的アプローチ

01 二分法の誤謬: ある問題や状況が二つの極端な選択肢だけで考えられると仮定する誤謬です。例:「成功するか失敗するかのどちらかだ」。
02 ソリテス・パラドックス: ひとつずつ穀粒を減らしていくと、いつから穀物の山が「山」ではなくなるのかという哲学的問題。
03 多義の誤謬: 一つの単語やフレーズが複数の意味を持つ場合に、その曖昧さを悪用する誤謬。
04 循環論法: 前提と結論が同じで、その結論を証明する独立した根拠がない論証。
05 滑りやすい坂論法: ある出来事が他の出来事に連鎖的につながると主張し、その最悪の結果を警告するが、その連鎖が必然的でない場合。
06 早まった一般化: 少数の例から一般的な規則や結論を導き出す誤謬。
07 チェリー・ピッキング: 自分の主張に都合のいいデータや事例だけを選び出す行為。
08 ギャンブラーの誤謬: あるランダムな出来事が続いた後に、逆の出来事が起きる確率が高くなると誤って考えること。
09 対人論法: 議論相手の人格や属性を攻撃して、その人の主張や論点を無視する誤謬。
10 お前だって論法: 相手が同じ過ちを犯しているからといって、自分の過ちや問題点を正当化しようとする誤謬。
11 藁人形論法: 相手の主張を誤ってまたは不完全に解釈し、それを攻撃する誤謬。(ストローマン論法)
12 希望的観測: 自分が望む結果が真実であると信じること。
13 覆面男の誤謬: 一つの属性(例:匿名性)が他の属性(例:信頼性)に影響を与えると誤って考える誤謬。
14 連言錯誤: 二つ以上の命題が同時に真であると誤って結論づけること。
15 前件否定: 条件文の前件が偽である場合に、後件も偽であると誤って結論づける。
16 後件肯定: 条件文の後件が真であるからといって、前件も真であると誤って結論づける。
17 四個概念の誤謬: 矛盾しない四つの概念を矛盾するかのように扱う誤謬。
18 信念バイアス: 既存の信念に合致する情報は受け入れやすく、合致しない情報は無視や棄却をする傾向。
19 信念の保守主義: 一度形成された信念や考えを、新しい証拠が出てきてもなかなか変更しない傾向。
20 常識推論: 一般的な知識や常識に基づいて結論を導き出す方法。しかし、これが誤りである場合も多い。

第Ⅱ部 認知バイアスへの認知科学的アプローチ

01 ミュラー・リヤー錯視:線の長さが同じでも、矢印の先端の形状によって線の長さが異なって見える錯視現象。
02 ウサギとアヒル図形:一つの図形がウサギとしてもアヒルとしても解釈できるという、視覚的多義性を示す図形。
03 ゴムの手錯覚:実際の手とゴム製の手に同時に刺激を与えることで、ゴム製の手を自分の手と感じる錯覚。
04 マガーク効果:断片的な視覚情報や音声情報から、人が完全な形や音を想像・補完する現象。
05 サブリミナル効果:意識に上がらないほど短い時間または低い音量で提示された情報が、無意識に行動に影響を与える効果。
06 吊り橋効果:高揚した身体的状態(例:恐怖、興奮)が、感情(例:愛情)と誤認される心理的現象。
07 認知的不協和:自分の信念と行動が矛盾すると感じると、不快感が生じる心理的状態。
08 気分一致効果:現在の気分に一致する情報や記憶が容易に思い出される現象。
09 デジャビュ:初めての状況であるにも関わらず、以前に経験したような感覚が生じる現象。
10 舌先現象:知っているはずの言葉や名前が思い出せない状態。
11 フォルス・メモリ:事実でない記憶が、事実であると誤って信じられる現象。
12 スリーパー効果:信頼性の低い情報源からの情報でも、時間が経つとその情報が信じられるようになる現象。
13 心的制約:過去の経験や固定観念によって、新しい解決方法を見つけられなくなる心理的障壁。
14 機能的固着:物やアイデアに対する既存の用途や考え方に固執して、新しい用途やアプローチを見つけられない状態。
15 選択的注意:注目している事項以外の情報や刺激を無視する心理的メカニズム。
16 注意の瞬き:短時間の間に複数の情報が提示された際、一つ目の情報に注意を向けることで次の情報が見逃される現象。
17 賢馬ハンス効果:問題解決者(例:動物、人間)が、実際には無意識の手がかりに反応していると誤解される現象。
18 確証バイアス:自分の信念や仮説を確認する情報だけを探して重視する傾向。
19 迷信行動:結果がランダムまたは制御不能であるにも関わらず、特定の行動が結果に影響を与えると信じること。
20 疑似相関:実際には関連性がない二つの変数が、関連していると誤認される統計的な現象。

第Ⅲ部 認知バイアスへの社会科学的アプローチ

01 単純接触効果: 人々は何度も繰り返し接触する物や人に対して、好意を持つ傾向がある。
02 感情移入ギャップ: 人が他人の感情や状況を理解・共感する能力が、想像しているよりも実際には低いという現象。
03 ハロー効果: 一つの良い特性によって、他の特性も良いと高く評価してしまうバイアス。
04 バーナム効果: 曖昧で一般的な性格診断結果などが、個々に当てはまると感じる現象。
05 ステレオタイプ: あるグループの人々に対する一般化された固定観念や先入観。
06 モラル信任効果: 他人の道徳的価値観を高く評価すると、その人に対する信任も高まる。
07 基本的な帰属の誤り: 他人の行動の原因をその人の性格や特性に帰属させる過ち。
08 内集団バイアス: 自分が属する集団を、外部の集団よりも優れていると感じる傾向。
09 究極的な帰属の誤り: 異文化間で発生する、基本的帰属の誤りを極端にした状態。
10 防衛的帰属仮説: 自分や内集団に不利な出来事が起こると、その原因を外部に求める傾向。
11 心理的リアクタンス: 自由が制限されると、逆にその自由を求めたくなる反発心理。
12 現状維持バイアス: 既存の状態を変えたくないという心理的傾向。
13 公正世界仮説: 世界は基本的に公平であると信じる傾向。
14 システム正当化バイアス: 不公平なシステムも、それが正当であると無意識に信じる傾向。
15 チアリーダー効果: グループ内で一人が成功すると、そのグループ全体が高く評価される現象。
16 身元のわかる犠牲者効果: 犠牲者が具体的で身近であればあるほど、援助意欲が高まる。
17 同調バイアス: 多数派の意見や行動に無意識に従いたくなる傾向。
18 バンドワゴン効果: 何かが人気を博すと、それに乗りたくなる心理。
19 ダニング=クルーガー効果: 自分の能力を過大評価する、もしくは過小評価する傾向。
20 知識の呪縛: 専門家などが持つ高度な知識やスキルが、状況によっては障害となること。


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