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七回死んだ男(1998/10/7)/西澤保彦【読書ノート】

この作品は、ビル・マーレイ主演のアメリカ映画『恋はデジャ・ブ』にインスパイアされたものです。
『恋はデジャ・ブ』鑑賞後、西澤氏は、このアイディアが斬新ではないかもしれないと感じながらも、「反復世界における殺人事件」という設定に魅了され、それを探求することに決めました。前作がファンタジーやSFの要素を含んでいたため、本来は次には通常の推理小説を書くつもりでしたが、この魅力的なアイディアの前にはそうした決意も崩れ去ったといいます。

伏線の魅力

伏線とは、物語の初めにさりげなく散りばめられ、後に大きな意味を持つ手がかりです。この要素は、ミステリー作品において読者を引き込む重要な役割を果たします。伏線が巧妙に配置されている作品は、読み終わった後にも感動や驚きを与え、読者に深い印象を残します。

不思議な能力と謎解き

『7回死んだ男』は、一見平凡な高校生・久太郎が、特殊な能力「反復落とし穴」によって同じ日を最大9回繰り返すことができる、という設定から始まる物語です。この不思議な力はランダムに発動し、時には1か月に数十回、時には2ヶ月に1回の不定期で起こります。しかし、この力は彼が自由に操ることができるものではなく、ループの中で起こる出来事は予測不可能です。特に重要なのは、ループの最終回である9回目だけが大きな変化をもたらすという点です。この繰り返される時間の中で、久太郎は祖父の死という避けられない運命に直面し、犯人を見つけ出し、祖父を救う方法を探さなければなりません。

物語は、一家の遺産相続を巡る謎と、時間をループするファンタジー要素が融合した、ユニークなミステリー作品です。繰り返される日々の中で、久太郎は精神的に成熟し、異なる行動を取ることで新たな発見をします。しかし、物語の中核となるのは、久太郎が直面する社会系の謎解きと、親族間の複雑な人間関係です。このドロドロした家族の争いと、コミカルな展開のバランスが、読者を引き込む魅力を生んでいます。

『7回死んだ男』は、そのライトな文体と、暗さを帯びつつもポップな会話や展開が織り交ぜられたバランスの良さで、ミステリー小説初心者から熟練の読者まで幅広く楽しめる作品です。伏線が巧妙に散りばめられており、読み進めるごとに新たな発見があり、最終的には予想外の結末が待ち受けています。この繰り返しの中で展開する謎解きと、久太郎の成長が描かれた物語は、間違いなく読者を魅了するでしょう。


ヨビノリたくみ先生による紹介動画:時をかける少年と殺人の輪からの脱出

登場人物関係図

目次

とりあえず事件のさわりだけでも
主人公は設定を説明する
登場人物たちが一堂に会す
不穏な空気はさらに高まる
そして事件は起きる
やっぱり事件は起きる
しつこく事件は起きる
まだまだ事件は起きる
それでも事件は起きる
嫌でも事件は起きる
事件は最後にあがく
そして誰も死ななかったりする
事件は逆襲する
螺旋を抜ける時
時の螺旋は終わらない


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