満天の星空
マンションのバルコニー。
煌めく星空。
「パパ、キレイだねぇ」
「そうだね」
「パパ、あれは何座?」
「あれは…なんだろうね~。
わかんないな~」
「え~。
じゃ~あれは?」
「あれも何だろう?
ゴチャゴチャしてて、わかりにくいね」
「もう、パパしっかりして。
スマホでわかるでしょ?」
「あ~そうだね。
アプリでわかるのあったね」
「これこれ。
このアプリ。
でね、カメラで…あれ!
あの星!」
「どこ?どれ?」
「パパこっち」
「ああ、こっちね。
これはおおぐま座だ」
「へえ~。
こぐまもいる?」
「すぐ近くにいるはずだけど…
どっち方向だ?」
「じゃ~こっちは?」
「こっちは獅子座だね」
「獅子座かあ。
どこが、たてがみ?」
「これだと形から言って、
右下の方だと思うよ…」
「ふ~ん。
ねえ、お父さん」
「なんだい?」
「あのたくさん、
キラキラ光ってるのは何座?」
「あれは星じゃないんだ。
全部、人工衛星なんだよ」
「人工衛星?」
ロケット開発費の低コスト化で、
全世界の開発競争は激化。
やがて夜空を埋め尽くすほどの、
人工衛星が瞬くようになる。
日本もデブリ回収ビジネスで、
一時は成功を収めた。
しかし非協賛国のロケットや、
宇宙ステーションの不法投棄により、
ミッションの危険度と回収コストが上昇。
日本の宇宙産業は、
苦境に追い込まれる。
しかし民衆は、
満天の星空に歓喜し、
世界情勢には無関心だった。
結果、宇宙開発競争は、
地球を危機的状況に…。
「あっ!お父さん!
流れ星!」
「おお~!凄いなあ~!」
「た~くさん!」
「たくさんだね」
「あっ!
お願い事しなくちゃ!
……
地球に戻れますように……」
お疲れ様でした。