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リスキリングリスニング

某IT関連企業。
 
お昼休み。
 
「先輩…この会社、
 すっかり人がいなくなりましたね」
「会社の方針だから、
 仕方ないでしょ」
 
「同期もみんな辞めて、
 残ったの私だけですよ。
 わかってても寂しいです」
「そうね。私も同期は、
 マーケティング部に2人だけ。
 不採算部門の閉鎖や部署の圧縮。
 セキュリティ管理部を潰して、
 外部委託に切り替えたりしたから。
 あそこには同期が30人以上いたのに」
 
「私達、大丈夫ですか?
 てっっきり開発部って、
 なくなると思ってたんですよ私」
「私も。最新AI導入で、
 プログラマーが一掃されると思ってた。
 会社がAIを信用しきれてないから、
 こうやって開発監査部という形で残ったけど…。
 でも開発じゃないけどね?」
 
「確かに。
 やってることはAIが吐き出したコードを、
 検証してるだけですから。
 たまに手直しありますけど、
 AIほとんど間違わないし。
 デバッカーというより見届人ですよね」
「そうだね。でも私達の最終チェックで、
 クオリティーが上がるのは間違いないんだから、
 頑張らないとね」
 
「はい、先輩」
「あれ?今日は午後から何本?」
 
「1本検証入ってます」
「じゃあ、ご飯済んだら、
 さっさと終わらせようか?」
 
「はい」
 
実行結果確認。
ソースコード検証。
 
「先輩?」
「なに?」
 
「これ、前のバージョンより、
 段違いに処理速度が上がってるんですけど、
 書いてるコードが…全く理解できません」
「え?!そんなことある?
 私のところは…大丈夫だけど…。
 ちょっと見せて」
 
「ここから…」
「……ほんとだ。こんなソースコード見たことない。
 このデータの置き換えとか何?
 何のためにやってるの?」
 
「意味がわかりませんよね?
 でも実行結果は合ってるんです。
 これどうします?」
「……」
 
「……」
「……」
 
「先輩?」
「……」
 
「……」
「これは…」
 
「これは?」
「AIに聞くしかないね」
 
「はい!先輩!」
 
 

この話はフィクションです。
でも遠い未来では……。

お疲れ様でした。