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「生活福祉資金貸付制度」申請のキーポイントは「事前準備」

審査の文字をルーペで見ている




生活福祉資金貸付制度の事前準備とは


厚生労働省や社会福祉協議会が案内をしている「生活福祉資金貸付制度」。貸付、つまり「お金が借りられる」制度です。


困りごとがある→生活福祉資金貸付制度(以下、制度)について問い合わせる→制度の条件をクリアできず申請ができない→制度以外で困りごとを解決できる手段がないか弊所にお問い合わせ、という相談者が月に1~2人程度みえます。ほとんどの相談者がおっしゃることは「制度の条件が厳しい」です。 


制度には総合支援資金の生活支援費や福祉資金の福祉費など、使途に応じてさまざまな資金の種類があります。いずれの資金も申請が通るか通らないかは分かりませんが、申請ができるかできないかは事前準備によって大きく変わります。事前に少しづつ自分のペースで準備をしておくことで、準備に対する心理的ハードルが低くくなり、結果的に申請まで辿り着く割合が高くなります。


この事前準備とは、世帯の収入と支出を整理し把握しておく、ということです。





1.収入について


この制度は「お金がない世帯」に対して、困りごとを解決するためのお金を貸します、という制度です。そのため、お金がない世帯かどうかの確認のため、世帯収入を申告する必要があります。


申請ができない一番のハードルは、この「世帯収入」です。それぞれの地域で収入基準額が設定されていて、その基準以上の世帯収入がある場合は原則として、制度の申請ができないことになっています。


収入基準額 > 世帯の収入 → 申請のための収入条件はクリア

収入基準額 < 世帯の収入 → 原則として申請不可


ある地域の制度の担当者は、「制度の申請を希望されても、ほとんどの世帯が収入基準額をオーバーしてしまい申請ができていないのが現状」とおっしゃっていました。





収入についての事前準備


それぞれの地域で設定されている「収入基準額」を調べる。

方法としては、市町村社会福祉協議会のホームページや制度のパンフレットを確認するか、市町村社会福祉協議会に直接聞いてみてください。




世帯の収入を計算する。

世帯収入は申請者の給料のほか、配偶者の給料や親の年金、子どもの児童手当など、世帯の収入すべてが対象になります。また、それぞれの収入の金額について、裏付け資料(給与明細、年金支払通知書など)の提出を求められます。世帯収入を低く申告したとしても、実際の金額と違うことはいずれ分かってしまいます。


※裏付け資料が用意できない場合(例えば給与明細書を紛失をしたが会社が再発行してくれない)は、自己申告した金額を認めてもらえることがあります。担当者に相談をしてみてください。


※障害者世帯と高齢者世帯は収入基準額が緩和されたり、そもそも収入基準額を設けていない地域もあります。地域の社会福祉協議会に確認をしてください。



障害者世帯及び高齢者世帯とは

・障害者世帯…身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者(現に障害者総合支援法によるサービスを利用している等これと同程度と認められる者を含みます。)の属する世帯。

・高齢者世帯…65歳以上の高齢者の属する世帯(日常生活上療養または介護を要する高齢者等)。

全国社会福祉協議会 生活福祉資金





2.収支について


申請が通るには、以下の三つすべてをクリアすることが必要です。

1.世帯はこれまで、収入>支出で生活ができていた。

2.まとまったお金が必要になったことで、一時的に収入<支出になってしまい生活ができない。

3.制度を利用しお金を借りた後、その毎月の返済が始まっても、収入>支出で生活していける。



1.世帯はこれまで、収入>支出で生活ができていた。

慢性的な赤字世帯の申請受付はしてもらえません。これまでの世帯収支は黒字もしくは±0でなくてはいけません。



2.まとまったお金が必要になったことで、一時的に収入<支出になってしまい生活ができない。

これまで収入>支出で生活ができていたが、まとまったお金が必要になったことで、そのお金が払えない、もしくは、そのお金を払うと生活ができなくなってしまう、という状況です。



3.制度を利用しお金を借りた後、その毎月の返済が始まっても、収入>支出で生活していける。

制度で借りたお金の返済が毎月の世帯支出に上乗せされたとしても、収支がマイナスにならない、ということです。制度を利用することで困りごとが解決できるとしても、「借金」という新たな困りごとが生まれるのであれば、最初から制度の利用はできないということです。





収支についての事前準備


・世帯収支の項目と金額を調べる。

世帯収入の項目の一例
・世帯全員の給料
・児童手当や年金
・受給している方は失業保険
・自営業の方は売上金額

世帯支出の項目の一例
・生活費(食費、光熱費、家賃、車の維持費など)
・自営業の方は経費

※世帯支出の金額は、自己申告の場合が多いです。担当者から求められた場合のみ、裏付け資料を提出してください。

※この制度の審査では、借金(ローン、消費者金融、知人からの借金など)は支出に含みません。



・制度で借りるお金の具体的な使い道を決める。

制度で借りられるお金の使途は、具体的に細かく決まっています。


例えば、冠婚葬祭でお金が必要になり生活費が足りなくなったという場合、「生活費が足りない」より「冠婚葬祭でお金が必要」の方が申請を認めてもらいやすいです。理由は制度に「冠婚葬祭に必要な経費」という項目があるからです。申請をする前に制度に定められている資金使途の項目を確認してください。



今回の記事を踏まえ、制度のお問い合わせをする前には、世帯の収入と支出の把握をしておくことをお勧めします。



追記


生活福祉資金貸付制度で相談者のみなさまが一番戸惑われたことは、「他制度優先」ということです。生活福祉資金貸付制度以外で利用ができるかもしれない制度がある場合は、そちらの申込みを行った上で利用ができないことが証明されてはじめて、生活福祉資金貸付制度の申請の検討ができます。困りごとがあって生活福祉資金貸付制度の問い合わせをしたとしても、ほかに利用ができそうな制度がある場合は、まずはそちらの申込みを行う必要があります。

<例>

入学金など学校にかかるお金・・日本政策金融公庫の教育ローンや学校から案内される奨学金など

母子父子家庭の親御さんがお金に困っている・・母子父子寡婦福祉資金貸付金制度



※記事の内容は、以下を基に作成しました。
・相談者からの相談内容
・相談者がお住まいの地域の制度やサービスの調査結果
・相談者への調査報告書

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