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原因は仕事。傷病手当金より労災を申請したほうがいいのか?

岐路に立つ女性のイラスト




相談内容


20代男性からのご相談。職場の人間関係や仕事のノルマによるプレッシャーで体調不良になってしまい、診療内科で適応障害と診断されました。一週間前から会社を休んでおり、傷病手当金の申請を考えています。しかし、病気の原因が仕事に関することであれば、労災保険(以下、労災)を申請したほうがいいですか。申請先を間違えることで、いずれの保障も受けられなくなってしまうことを心配しています。





調査結果


相談者がお住まいの地域を管轄する「協会けんぽ」(公的医療保険)の支部に確認をしました。協会けんぽの担当者より「今回の内容を労働基準監督署に相談された上で、労災には該当しない、ということであれば傷病手当金の申請を受付けます」。


相談者がお住まいの地域を管轄する「労働基準監督署」の地方機関に確認をしました。労働基準監督署の担当者より「労災と傷病手当金のどちらを申請するかの判断はこちらではできかねます。ご自分で判断された上で、いずれかの申請を行ってください」。


協会けんぽの担当者は「労働基準監督署に相談し指示を仰いでください」。労働基準監督署の担当者は「相談されても指示できないので自分で判断してください」。


今回のように「それぞれの相談窓口の担当者の説明内容が食い違っている」ということはよくあります。相談窓口の担当者はその機関で取り扱う制度の説明をしていて、他の制度との「整合性」までは考えていません。整合性を考えるとなると自分の機関の制度だけでなく、他の制度についても知っておく必要があります。それぞれの相談窓口の担当者にそうしたことを求めるのは業務量が増える、人員数が足りない、それぞれの担当者の支援に対する意識の違い、といった点から現実的に難しいと思われます。





労災?傷病手当金?どっちを申請したらいい?


これまでブラック企業、パワハラ、適応障害、うつ病、傷病手当金、労災などの相談対応を行ってきた弊所の考えです。


病気やケガでの休業補償は、傷病手当金の申請が妥当だと思われます
理由は、こちらの記事をご覧ください。


例外として、弊所が傷病手当金ではなく労災の申請を勧めるのは①と②両方にあてはまる場合のみです。
①病気やケガが「労災認定」される証拠がある(労働基準法の規定を超えた労働時間を示すタイムカード、上司の発言を録音した音源など)。
②会社や上司に法令違反やパワハラの事実を認めさせたい。


ですから、労災認定される証拠があったとしても、早く会社や上司との関わりを絶ちたい、という方は傷病手当金の申請をお勧めします。


以上の記載内容は、一般的なケースにあてはめた一つの指針です。制度及びサービスの申請は、関係機関にご相談のうえ行ってください。


以上の記載内容は、労災と傷病手当金、いずれを申請したらいいのか判断に迷う場合について書かれたものです。仕事中にケガをしたなど、明らかに労災申請が妥当と思われるケースについては、そちらを申請してください。





さいごに

今回の記事のご相談にもあるように、適応障害(精神疾患)の原因が仕事に関することなのに、傷病手当金を申請して大丈夫なのか、と心配される方もいらっしゃると思います。


改めて申し上げますと、相談窓口の担当者の説明は、他の相談窓口の担当者の説明と整合性がとれていないことがあったり、担当者によって説明内容が違っていたりすることがあります。大切なことは、「自分はこうしたい」という意思表示をすることです。その意思表示に対して、それぞれの機関が申請を受付けたり、却下したりします。その意思表示について「自分はどうしたらいいの」というお悩みに対する弊所の助言が、「病気やケガでの休業補償は傷病手当金の申請が妥当だと思いますよ」ということです。

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