伏見同然

毎週金曜あたりにはなにかしら書きたいです。

伏見同然

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最近の記事

きたざわ と ないとう

北澤と内藤が、どちらが優れているかでレスバしていました。 議論ばかりしていても決まららないので、力試しとして、炎上しているアカウントの主に謝罪をさせた方が勝ちとしようということになりました。 北澤がはじめに突撃しました。 北澤は思い切り強く「はやく謝罪しろ」とコメントしました。 アカウント主は北澤をブロックしました。 そこで北澤は、ブロックされたスクショと一緒に「逃げたwww」と投稿しました。 すると主はアカウントに鍵をかけてしまいました。 北澤はがっかりして、「きみにまか

    • あかるい ともだち

      「今日ワラビーいるよ〜」  iPhoneの通知が届く。誰からかなんて確認しなくてもすぐわかる。中島だ。 ワラビーというのは、中島がよく行く飲み屋の名前なのだが、本当の名前はワナビーだ。中島はずっとワラビーだと思っていて、常連仲間に指摘されたときにびっくりしていたが、ワラビーのほうが可愛いと言って未だに呼び方を変えない。ちなみに僕は、中島からワラビーと聞いて蕨を頭に思い描いていた。実家から届くと天ぷらにして食べる。  中島の誘い方はいつもこんなかんじで、着いたよ〜とか、美

      • 部長はふわりと

         ランチから戻ると、部長が宙に浮いていた。  フロアには新入社員の小杉くんと私と、天井に引っかかって照れくさそうにもぞもぞ動いてる部長しかいない。 「ああ、角田さん。なんか急に部長浮いちゃって、こういう時どうするか聞いていなくて」小杉くんがいつも以上に潤ませた黒目で近づいてくる。犬か。かわいい犬か。 「えっと……私も噂で聞いてた程度だから、どうしよう……」  この会社に来てから4年目になるけど、実際に部長が浮いているのを見るのは初めてだった。先輩社員から噂だけは聞いたことがあ

        • お前みたいなもんが

          お前は毎日、 頭の中であいつを言い負かしていて、 頭の中で尊敬を集める仕事をしていて、 頭の中にだけ平穏な生活がある。 お前は毎晩、 なんであんなこと言ったんだろうと悶えて、 なんであれを言えなかったのかと落ち込んで、 なんで言わなきゃいけないんだと怒ってる。 お前は明日も、 もっとできたはずだと反省して、 もっとやらなきゃと奮い立って、 もっと何かないのかと足りないものを探し始める。 まったく、お前みたいなもんが、 本当によくやってるよ。 お前みたいなもんが、一番好

        きたざわ と ないとう

          驚くかもしれませんが

          断言します。 隠しておこうとも思ったのですが、永久保存版です。 何回も言いますが、一度しか言いません。 あんまり言いたくないけど、炎上覚悟で書きます。 ごめんなさい。本質言います。 多くの人が勘違いしているんですが、知らないだけで損してることは多い。 これだけは覚えておいてください。 絶対に忘れないでほしい。 これから大切なこと言います。 ハーバード大学によると、ハーバードとは人の名前だそうです。

          驚くかもしれませんが

          説明

          仕事がわからない部下に 丁寧に手順を説明をした わかりましたと彼は言う 携帯がわからない母に 簡潔に技術を説明をした わかったよと母は言う 宿題がわからない娘に 熱心に学習を説明をした わかったと娘は言う 自分がわからない妻に 詳細に人生を説明をした わかったわと妻は言う 妻の居場所がわからない私は 慎重に状況を説明をした わかりましたと警察は言う

          絶たない放課後

           私が小学生のときに住んでいた町は、朝日は朝に見えないし、夕日になる前に太陽は隠れてしまった。四方を山に囲まれていたから。 なんだかいつも薄暗くて、昼を過ぎるとそこはもう夜の入口のような雰囲気の町だった。  全校生徒を合わせても100人もいない小さな小学校には新校舎と旧校舎のふたつがあった。 基本的には教室のある新校舎で1日を過ごすのだけれど、音楽室と図工室と家庭科室を使う時だけ旧校舎を使う。  新校舎から旧校舎へは、後から付け足した渡り廊下を通って、これも後から付け足したの

          絶たない放課後

          なれるものなら

           最初、お母さんが板チョコになった。 「本当に困ったら、私をちょっとずつ口に入れるのよ」そう言いながら、お母さんは銀紙に包まれていった。  それを見ていた大学生の弟は「僕はもっと身近で人を喜ばせるんだ」なんて張り切っていて、数週間後に見たときには結局AirPodsになっていた。  チョコレートのお母さんは、そんな弟を見て「後悔のないようにね」と言った。それはもう口癖になっていて、小さいときから何度も聞いている言葉だ。  私はやっと就職が決まって、部署独自のエクセルの使い方と

          なれるものなら

          いつも近くで

          今この瞬間、世界で一番彼女の近くにいるのは僕だ。 「大嫌い。ムリ」 そう言われた瞬間、僕と彼女の距離は世界で一番遠のいた。 僕たちがいる駅前広場には多くの人が行き交っていて、今彼女の横を通り過ぎた知らない女性のほうが、僕より彼女に近い存在なのかもしれない。それでも、物理的な距離が彼女と一番近いのは、この宇宙で僕だけだ。 彼女はスマホで誰かとメッセージをしている。 その誰かは、ここにはいないけど、僕より彼女に近い人間なのだと思うと悔しい。 「ごめん。やり直してほしい」 僕

          いつも近くで

          ハラハラ☆ハラスメント

          こんにちは! わたし、みんなが楽しくハッピーに暮らせるように世界を守っている少女戦士。 敵の〈ハラスメント〉たちを退治するために毎日大忙し! これまでに倒してきたのは、セクハラ、パワハラ、モラハラ、アルハラ、カスハラなんてのがいたなあ。次から次にハラスメントが出てきて、も〜大変! 今回相談をしてきてくれたのは、20代の男性会社員の生田さん(仮)。 職場の同僚が、普通に暮らして普通に仕事をしてるのが辛いんだって。 生田さんはお金を節約する毎日だし、仕事もなかなかうまくいかな

          ハラハラ☆ハラスメント

          とりあえずの箱

           うちのクローゼットには、とりあえずの箱と呼んでいる箱がある。  片付け術のサイトなんかには定番で出てくるものなのだけど、どこにも置くところはないけど捨てられないものをいったんダンボールに入れておいて、一定期間使わなかったら思い切って捨ててしまいましょうという、ずぼらな僕にもすぐできそうな方法だ。とりあえずボックスなんて紹介されていたんだけど、うちのボックスは案の定すぐいっぱいになって、それでも捨てられないものが永遠に閉じ込められることになったので、開かずの間みたいな雰囲気

          とりあえずの箱

          別に書かなきゃいけないわけでもないし、誰に怒られることもないし、酒でも呑んでる方が幸せなんだけど、やらないと気持ち悪いんだけど、モチベーションも上がらないし、タスクとして書こうとするんだけど、衝動的なものもないし、もうやめちゃうかーとか思いながらYouTubeとか見てたらマグカップ欲しくなってAmazonを開こう思ったらLINEに「今日夜のみどう?」とか来てて、これは行くとダメだけど人生経験のほうが大事でしょってことで「いいね。いきたい!」って返信したから、今日も休まず書いたってことにするための1文字

          別に書かなきゃいけないわけでもないし、誰に怒られることもないし、酒でも呑んでる方が幸せなんだけど、やらないと気持ち悪いんだけど、モチベーションも上がらないし、タスクとして書こうとするんだけど、衝動的なものもないし、もうやめちゃうかーとか思いながらYouTubeとか見てたらマグカップ欲しくなってAmazonを開こう思ったらLINEに「今日夜のみどう?」とか来てて、これは行くとダメだけど人生経験のほうが大事でしょってことで「いいね。いきたい!」って返信したから、今日も休まず書いたってことにするための1文字

          こういう人間

          「わたしは、こういう人間だから」  彼女は、背筋をぴんと伸ばして、目を見開いて叫んだ。「こういう」と言うときに両手を広げている様子は、まるで子どもが抱っこをせがむときのようで、つい抱きかかえたくなる。しかし、3歳の娘の母である彼女を抱っこする理由はない。  こういう人間と言われて「どんな人間?」なんて野暮な返しはしない。そう、彼女はそういう人間だから。自分の欲求に素直で、自分の欲望が最優先で、体の中が自分でいっぱい。抱っこポーズは、自分で自分を抱えきれないと言っているように

          こういう人間

          明日の天気は

           テキストの集合体が作り上げた、先進的で理想的な世界は、デジタルデータのようにはキレイに整わず、エラーが起きまくる現実世界の人間を、極限まで生きづらくした。  その世界は、被害者をできるだけ生まないように、自分が被害者にならないようにするために機能したが、最大の欠陥は、誰もがうっすら加害者であることだった。  堅くて、狭くて、息苦しい。多くの人がそう思い始めると、過去の記憶を辿り始める。良かった瞬間の思い出だけをなぞっては、あの頃のようになろうと訴え始める。  さて、それでは

          明日の天気は

          八話の彼と

           三話目くらいから、なんか変だなって思ってはいたんだけど、六話で確信に変わった。わたし、主役じゃないみたい。かといって、モブキャラでもなくて、いわゆるヒロインの恋敵って役割ってかんじ。  最初は、主役の彼とヒロインが出会う瞬間を見かけちゃったんだけど、なんか、そのときだけ時間がゆっくり進んでる感じになって、世界全体がちょっと明るくなってた。で、ほんと今考えればよくわかんないんだけど、すごいそれに嫉妬しちゃって、その頃は結構ひどい顔してたと思う。恥ずかしい。  私は彼を取られ

          八話の彼と

          世界を救うか、松屋を食うか。

           人生最大の選択だ。私は今、松屋の目の前にいる。大きな選択とは、牛めしにサラダを付けるか、さらには生卵か半熟卵も付けるかということではない。この状況で松屋に入るべきかどうかだ。  状況を説明するためには、話しを20年前に戻す必要があるが、あまり長話をしている時間はなさそうなので、できるだけ簡潔にまとめる。定職につかず、バイトをしながらその日暮らしをしていた23歳の私は、ある女性に出会い一目惚れをする。その女性の周りで起こる事件に巻き込まれていくうちに窮地に追い込まれ、私にある

          世界を救うか、松屋を食うか。