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書評;小坂井大輔 第一歌集「平和園に帰ろうよ」

こんにちは、匡成です。新鋭短歌シリーズ第4期に選ばれ、オオトリの歌集だった小坂井大輔氏の「平和園に帰ろうよ」を読みました。

 小坂井氏は私と同じ県であり、歌人としての小坂井大輔氏以前に、読書好きが集まるSNSで「ちゃありぃ」として知りました。そこにも短歌コミュニティがあり、同人PDFを作ったり掲示板に投稿したりしている印象の方が、強いです。

1.平和園は、中華料理店にして「短歌の聖地」

 平和園って何だろう?とずっと思っていました。ツイッターでも歌人の方々が口をついて「平和園」と言っているのを知っていたものの、兼六園とか何処かそういう綺麗な場所があるのだろう、と勝手に想像していました。

でもだんだん小坂井氏のツイッターや、同じく新鋭短歌シリーズの同期生である戸田響子氏のツイッターで、どうやら中華料理店の名前らしいと判ってきました。お師匠である加藤治郎先生や、萩原裕幸先生のツイッターでも歌人が足繫く通うお店だと知りました。

一応ブログなどで小坂井氏の近影は知っていたので、テレビ番組で「二代目 小坂井大輔氏」と書かれて合点がいきました。そうか。「ちゃありぃ」が経営者・料理人だったのかと。

2.許される程度のシニカルな表現が面白い

 小坂井氏自身は、一生懸命「小坂井大輔」を生きておられるけど、名古屋西口のどこそこで見た面白いことをシニカルに、かといって不快にならない塩梅で短歌にしている点が好印象です。正反対のことや全く関係のないことを下の句に持ってくる意外性も小坂井テイストです。

 というのも前述した読書サイトで、私に「匡成さんの歌は情報が多すぎなんです。いろんなことを詰め込みすぎて、複雑になってしまっている」と言われたことがあります。この点は、いまだに上手に使いこなせず、私の短歌は鳴かず飛ばずを繰り返していますが、小坂井氏は「ちゃありぃ」の時よりも磨きがかかっているように感じました。

そしてツイッターで見たことのある歌がたくさん載っていることも嬉しかったです。

例えば

・家族の誰かが「自首 減刑」で検索をしていたパソコンまだ温かい
・届かずに私の後頭部に当たる誰かの願いを込めた賽銭 
                      ともに「粉ミルク育ち」

だとか、

・で、いちばん多いときからどれくらい減ったの優しい友達の数 「むしゃむしゃぺっぺ」
・もし窓があれば夜景の美しい焼肉屋で燃え上がるホルモン 「ホルモン」
・生涯に見る夢すべて繋げたら映画になる神様の計らい 「検問突破」

といった歌です。「神様の計らい」の歌を見た時は、結句9音だ!と驚いたのですが、よく見ると四句目が6音であるために、一字多いだけだと今思いました。それにしてもこれは大好きな歌です。

 最近の自粛ムードを預言したわけでもないのでしょうが、戸田氏がツイートした小坂井氏の歌の1つに、

・パチンコ屋の開店を待つ人達の列は何かの導火線だな 「虎と目が合う」

があり、言い得て妙だと思いました。

後半にあるこの歌も良いです。

・生まれたということそれは世界という大きな詩の一篇になること 「すがりつきたい」

とても良い歌です。これからも「小坂井大輔」という詩は続いていくのでしょう。そして、あとがきで多くの歌人に出会えた喜びを述べています。とりわけ朗読会で知り合った自称;平和園のマナジャこと、戸田響子氏に出会えたことは本当に僥倖だったようです。ツイッターではこのお二人のやり取りが楽しいです。

以上、匡成でした。ご購入はこちらから。


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