加太漁港/海辺の水彩画
絵・文/ 岡本幸雄
加太は、和歌山県の最北に位置する漁港である。
港の西にまっすぐ伸びる赤灯台堤防があり、いつも多くの釣り人で賑わっている。この波止ではアジやイワシの回遊魚からマダイ、スズキなどいろいろな魚が釣れる。特に、外向きでは青物やチヌも狙えるとのことで、筆者が訪問したこの日も家族連れからベテラン釣り師まで竿を出していた。
加太漁港のすぐ沖には大小4つの島が連なる。友ヶ島だ。 西の沖ノ島、東の地島のほか、小さな神島、虎島で構成されている。
友ヶ島水道に大きく張り出した沖ノ島には、昔の砲台跡が散在する。これは明治のころ外国艦船の進入を防ぐために造られた名残である。
資料によると、対艦用の砲台は一度も使われなかったようだ。第二次大戦終了後、友ヶ島は瀬戸内海国立公園に指定された。終戦のタイミングに合わせて爆破処分された第2砲台以外は軍事施設跡が比較的良好な状態で残っているとのことである。
島の真ん中あたりには湿地帯植物が群生しており、いろいろな植物の見学ができるほか、修験道にまつわる史跡や行場も現存する。
島へ渡るには加太漁港から友ヶ島汽船に乗るとよい。わずか30分の船旅だ。季節によって運航回数は異なるが、1~2時間に1回という少ない便数なので乗り遅れのないように一一。
加太漁港は、古くから海上交通の要所として栄えた。明治後半からは紀州航路、淡路の洲本や由良と連絡する客船航路が結ばれ繁栄した。
港を囲むように走る県道65号線沿いには活魚料理店が並ぶ。漁港前の「いなさ」に入った。店の窓からは加太漁港から淡路島までが一望でき、伊勢エビの造り、アワビや蛸などの海の幸がいただける。
メインは地元で上がった加太真鯛のしゃぶしゃぶだ。大きく厚い切り身のぷりぷりコリコリした透明感のある白身をほんのわずか湯通しし、口に運ぶ。なんとも言えぬ、旨い鯛だ。1年を通じていろいろな魚介類が獲れるので年中旬をいただくことができる、実に幸せな港町である。
漁港のすぐ近くに淡島神社がある。港から赤鳥居までわずか30メートル。その奥まったあたりに本殿がある。
ここは全国の淡島神社・粟島神社・淡路神社の総本社で、縁結びや安産、子授けにご利益があるとされており、多くの人々に信仰される神社である。一般には、毎年3月3日に行われる雛人形を白木の舟に乗せて海へ流す神事で知られている。