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第3章:2015年の文献より(2)

同じく2015年のCell & Developmental Biology誌では、微胞子虫が属するミクソゾア門の多細胞化について考察している。

ミクソゾア門は、nematocystのタンパク質が刺胞動物の刺細胞のタンパク質に近いことがわかっていることから、刺胞動物の一員という位置付けになっている。また、ミクソゾア門の極性被膜(=nematocyst)の発生とメデューサのnematocystの一種であるatrichous isorhizaの発生は相同性があるとされている。


粘液胞子虫の胞子は、単に生命活動を停止しているのではなく、機能的に分化している。しかし、刺細胞とnematocystが形として似ているだけでは、nematocystを組織とは呼べない。刺細胞も、極性被膜も、後生動物の組織を構成するレベルとはいえない。いずれにも多細胞性が見いだせないからだ。


刺胞動物のcnidoblastは刺細胞とcapsulogenic cellに分化するが、この2種類の細胞は刺胞動物にしか存在しない。後者は、間充織細胞のように体の内側から外側へと移動する。多細胞動物らしい細胞の挙動である。


ミクソゾア門の上皮は、宿主への感染時に形成されるが、感染に適応した上皮の構造は後生動物らしい構造と考えられている。この上皮細胞は、通常の細胞分裂では増えないことがわかっている。粘液微胞子虫の中では、Myxobolusのように、ディプロイド細胞が栄養細胞から分割して作られる。Aurantactinomyxonのように他では減数分裂と融合で被覆細胞や更に内側の細胞ができていく。


袋のようなmalacosporeaでは、外肛動物に寄生する種がいる。宿主の細胞間に入り込み、上皮層の間を細胞外マトリクスで埋め、自身は筋肉のような壁を形成して定着する。この構造や組織と呼べるレベルにあるという。


これらの例から、ミクソゾア門は組織の段階に達したといえるのではないか。


使用文献

Myxozoa in Haeckel’s Shadow Stanley Shostak著 Cell & Developmental Biology Volume 4 Issue 2 2015

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