中心体のスピロヘータ起源を信じた、在りし日の空中遊泳

マーギュリス博士が私も含め、数え切れない前世紀の学徒に、巨大な夢を与えてくれたことは、間違いの無いことだと思う。だが、表題の生命現象は、おそらくは違うのではないかという見解が圧倒的に多いと、認識している。「大学時代の卒業論文に関して」のカテゴリーは、本記事で終わりとしたい。大昔の十字架が完全の消え去ることがないにしても、老体が、この辺で打ち止めにするのが良い人生ではないか、と自身に語りかけてくるようで、そうしたまでのことである。


2010年2月号のBiological Bullteinでは、生きた化石と呼ばれているオーストラリアシロアリ(Mastotermes darwiniensis)の腸管内に生息するトリコモナス類のMixotricha paradoxaに同じく生息している寄生性のスピロヘータが接触している電子顕微鏡の構造が発表されている。Mixotricha paradoxaの繊毛構造である中心体-キネトソームの構造は以前よりスピロヘータに類似していることが示唆されてきたようだが、今回の観察では、スピロヘータが変形して棒状になり、あたかも波動毛になって連結しているような状態や、抗生物質や酸素など環境圧から身を守る形態である球状繁殖体(RB:round body)の形態ですら、残った本来の蠕虫の形態で接触しようとしている状態まで掲載されている。実際にスピロヘータとMixotricha paradoxaの細胞膜との背触部分は、吸盤で軽く吸い付くような形態になっているが、密に繋がっている点は疑いようのない顕微鏡像となっている。


Spirochete Attachment Ultrastructure: Implications for the Origin and Evolution of Cilia | The Biological Bulletin: Vol 218, No 1The fine structure of spirochete attachments to the plasma membrane of anaerobic protists displays variations here interpreted as legacies of an evolutionary sequence analogous to …

www.journals.uchicago.edu


スピロヘータには有糸分裂関連因子や細胞骨格上を走行するモーター蛋白質の存在がゲノム解析で示唆されるようだから、原初の世界ではリン・マーギュリスが描くような、スピロヘータ様真性細菌が硫黄を含む球体のある環境でThermoplasma様古細菌と接触し、豊富な炭素関連の栄養源を得て、核の成立となり、ミトコンドリアのない初期の真核生物(karyomastigont=核繊毛型のものである。トリコモナス類などが該当する。西村三郎氏の動物の起源論という和書の最終結論の動物群にもなる。興味のある方にはお勧めである)が成立したという、大雑把だが明快な仮説を裏付ける証拠となりそうである。しかし、スピロヘータ由来と断定できるRNAおよび類似の低分子核酸については、いまだに発見されていないと思われる。細胞の共生進化ではあると推定されているが、こちらについても是非発見を待ちたい。


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