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#3 英語下手でも外資系企業で評価され続ける方法 - Vol.2(入社後編ー外国人上司とうまくやっていくには)

私は今までに10回の転職を経て通算11社に勤務してきましたが、そのうち8社は外資系企業で、通算10人の外国人の直属上司にレポートしてきました。最初の外国人上司はイタリア人で、その後、インド人、オランダ人、アメリカ人、イギリス人、中国人、ドイツ人と続き、今までにアジア系、アメリカ系、ヨーロッパ系諸国出身の上司と一緒にお仕事をしてきました。ありがたいことに、例外なくその全ての方々と楽しくお仕事をさせて頂き、一定の良い業績評価をいただくことができました。(一部の日本人上司とはたまにソリが合わないことはありましたが。)

前回#2の記事でもお話しましたが、私は流暢な英語が操れるわけではありません。私の英語の知識はおそらく大学受験の時の資産を食い潰したまま進化を止めていますし、語学に対する興味も関心も情熱もありません。そのような状態でもさまざまな国出身の外国人の上司と特に大きな問題なく一緒に仕事してきたので、少なくとも仕事という場面ではおそらく卓越した英語力などよりもっと他に求められるものがあるのでしょう。

現在は「英語屋」の人材価値が相対的に低下している。

私が大学を卒業した2000年頃は、外資系企業に就職する(または就職を希望する)学生はまだ少数派でした。私のクラスでも大部分の人が日本企業に就職しましたし、私もその一人で、外資系企業への就職など選択肢にもありませんでした。
その頃は外資系企業もまだ日本市場に参入して間もない会社も多く、現在誰もが知る数々のグローバル企業も当時はまだ日本拠点の社員数が数十人程度だったりなど、参入してからそう年数の経っていない小規模の外資系企業が多数あった時代でした。
まだ日本に上陸して間もなく、海外本社の力を借りながらまずは日本でのオペレーションを確立していかなくてはならない、いわばスタートアップフェーズの外資系企業では、海外本社の社員、またそこから立ち上げのために派遣されてきた社員と密にコミュニケーションをとらなくてはなりません。このフェーズの企業では高度なレベルの英語でのコミュニケーション能力が求められ、採用においても語学力が非常に重視されました。当時は英語教育で有名な大学の学生が外資系企業に多く採用されていたことを記憶しています。

海外で流行って鳴り物入りで日本市場に参入し、オペレーションを立ち上げ市場を開拓しプロダクトを出せば売れる成長期を経てやがて時は流れ、日本市場にも似たような競合が乱立し、市場も成熟し、大規模に成長した外資系企業の成長も停滞期に入ります。成熟しきったビジネス市場で何とかブレイクスルーを見つけ事業を成長させていかなくてはならないフェーズに入ったのです。
この段階になると、今度は実際にそのビジネスの知識と経験があり、成長機会を見つけて事業を実際に伸ばしていくことのできる人材が必要になります。流暢な英語を駆使したコミュニケーション力は以前ほど最重要視されなくなり、より関連したビジネスの経験、知識、能力(+ある程度の英語力)がある人材へ採用ニーズがシフトしていきました。現在は、いわゆる単なる「英語屋」の転職市場での価値が相対的に低下していくフェーズに入っているのです。(もちろん卓越した英語力+卓越したビジネス力を併せ持っている人は非常に重宝されます、実際には数は多くないでしょうけど。)

下手な英語を武器に外国人上司の信頼を勝ち取るには

自分で言うのも何ですが、私は見た目は真面目そうに見えます。(そして実際に真面目です。)また比較的静かでおとなしめ、自分が輪の中心になってたくさん喋る方ではありません。普段日本語でもそのような状態なのですから、英語になるとさらに静かにおとなしくなります。基本仕事で必要なこと以外喋りません。そういった私の見た目、性質、振る舞いが、実は外国人上司の厚い信頼を得ているのではないかということにかなりの確証をもって気づいたのは、今から6年前、8社目の外資系企業に勤務していた時でした。私が話す時は、外国人の経営陣や投資家たちが真面目な顔をして身を乗り出して私の言葉を聞こうとしていたのをよく覚えています。ほとんど自分からは喋らない真面目そうに見える大人しそうな女性が何かを話し始めた時、何か思慮に富んだ素晴らしい意見を言っているのではないか(別にそんなことはないのですが)、私の流暢とは程遠い下手な英語は、口下手だけど真面目で誠実で信用に足る人物なのではないか、英語に慣れていないせいで多くを語らないけど、言っていることは端的でシャープで核心を突いている(単に英語力がないから長文で喋れないだけなのですが)、実はすごく頭のいい人物なのではないか、と外国人上司たちに思わせていたようです。昔、滅多に喋らない日本人が何か意見を言うときは、何かすごいことを言っているのではないかとアメリカ人達は皆身を乗り出して聞いていた、という笑い話を聞いたことがあるのですが、まさにその状況を彷彿とさせ苦笑してしまいました。

私の知る限り、外国人マネジャーの方々は非常によくしゃべります。とてもよく喋るので私などはよく意識が飛んで話の中間部は聞き流すことが多いです。基本的に彼らは喋りすぎる傾向があるので、逆に流暢すぎない英語の方が誠実そう、かつ思慮深いことを言っていると思われて私のケースでは(少なくとも仕事の場面では)プラスに働いてきたようです。(日本人でもペラペラとお喋りな人よりも多少口下手で素朴な人の方が信用されやすい傾向があるとは思いますし。)
そのことに気づいてから、私は下手な英語を逆手にとって敢えて武器とすることにしました。もともと流暢な英語は話せないのですが、必要以上にわざと日本人アクセントの強い英語でゆっくりはっきりと意図的に話すようになりました。その方が身を乗り出して聞いてもらえるので。その上、私は新卒から7年間システムエンジニアやIT系の技術関連職についておりましたので、それとなく「私、昔エンジニアからキャリアをスタートさせたのでもともと口下手なんですよ。」なんて言っておくと期待と信用がさらに爆上がりします。

最初に小さな実績を積み重ねていけばすぐに信頼される。

真面目そうな見た目と誠実そうな雰囲気だけではすぐに化けの皮が剥がれますので、下手な英語で外国人上司から信頼を得るには、実務面におけるプラスアルファが必要です。

私は今までに11社の企業で10人のダイレクトレポート(直属)の外国人上司のもとで働いてきました。ドットラインレポートの上司を含めるとおそらくその2倍以上の外国人の上司がいたと思います。私が一緒に仕事をした外国人上司たちは皆例外なく、自分のキャリア開発に貪欲で今の仕事を踏み台にしてよりステップアップしていきたい、という感じの人たちでした。
多くの外国人マネジャー達にとっては、日本市場の担当は自分のキャリアのいちステップにすぎず、ここでの実績をアピールしていずれ海外本社やリージョナル本社の要職にステップアップしたいと思っています。つまり、日本市場に骨を埋めようと思っている人達ではありません。ですので日本語を流暢に操り、日本人並みに日本市場を深く理解しているという人たちではまずありません。そのような状態で彼らはアサインされた日本市場で何らかの実績を出していく必要があるのです。当然、日本のマーケットや実務をよく知らない外国人マネジャーは、まず自分にそれらを分かりやすく教えてくれ気づきを与えてくれ、実務で何らかの実績が出せる人を部下に求めています。
特に外資系企業では(特に管理職で入社した場合は)、入社後6ヶ月以内にquick win(何かしら早く達成できる小さな成果)を出せとよく言われます。入社後2〜3ヶ月でチームへのオンボーディングを終え、それぞれのスタッフがどんな業務をしているかを理解した上で、自分の担当事業についてどこに成長機会があるか、成長機会があればそのために何を改善していけばいいのかについて一つずつ見ていき、改善点を見つけていきます。例えば、ウェブサイトの商品ページにこの情報を載せたらどうか、とか、新しい顧客とのコミュニケーションツールを導入したらどうか、とかEメールの内容と回数を変えてみてはどうか、など本当に小さなことで良いのです。また、メンバーが行なっている業務でまだ会社に認知されておらず日の目を見ていないがこれは業績改善のためにとても重要な業務ではないか、というものを見つけたらそれを上司や会社に認知させて会社からのサポートを得て拡大していく方法を考える、というのもあります。

自分でビジネスの成長機会をひとつずつ特定しながら、小さなことでも良いのでまだ手がつけられていないところ、改善が必要なところを見つけ出し、上司や周囲を巻き込みながら実施して小さな成果を積み重ねていく。私は、いわばquick winを積み重ねていくことが、外国人上司からの信頼を短期間で得ていく近道だと考えています。外国人上司は、自分が責任者となったことで現場にこういった変化がもたらされた、新しい何かを導入して現場がこう改善された、など、自分が現場にどのような変化をもたらしたかによって評価されるので、彼らにとって、(たとえ小さなことであっても)分かりやすく「現場の課題はこれで、成長機会はこれで、そのためにこういう改善点があったので、これらに取り組みます、それらの進捗はこうで、これとこれができています、これは業績にこう貢献しました(orする予定です。)」といったコミュニケーションをすると、その改善を自分の成果として会社に逐次アピールできるので非常に喜びます。
私の今までの経験では、英語が非常に流暢で一見仕事ができそうな雰囲気を出している人たちの中でも、口を動かすだけで実際には行動せず、新しい案件を相談されてもできない理由を散々と流暢な英語で喋りまくる、といった種類の人の割合が多いように感じてきたので、さほど英語が上手でなくてもquick winを積み重ねて外国人上司に現場にもたらした変化を感じさせてあげるようなコミュニケーションをした人の方が早く信頼を得ることができ、評価されます。

外国人上司と外資系企業でどのようにうまく付き合っていくかについては非常に深いトピックなのでまた別の回で深掘りすることにして、次回では、自分が活躍できるような環境をどのように見極め選んでいくかについて、私の事例を共有しながらお話しします。


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