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ものかきのおかしみと哀しみ

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#ものかきのおかしみと哀しみ

「狭き門」は広い

「狭き門」は広い

思い込みは怖い。まあ、気づかずにいるうちは思い込みとさえ考えないのだけど。

人間とヤギをやってそれなりになるけれど、いまだに自分に見えてる世界の危うさに「ハッ」とすることがある。

「狭き門」の捉え方もそうだ。

もしかしたら、そんなの常識レベルなのかもだけど「狭き門」と言われると「大勢が殺到して、そこを通過できるのは一握り」みたいに捉えてた。

本来の意味はそうではないらしい。

作家の森博嗣

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書くために、書かない時間

書くために、書かない時間

最近、僕は文章を書かない。いや、書いてるんだけど書かない。また、なんかおかしなこと言ってるけど。

このnoteもそうだけど、人は文章を書く。

なにか伝えたいこと、言葉にしたいこと、そんなんじゃなくてとにかく読まれたくて書きたい人もいる。じゃなきゃ、こんなに世の中に文章が溢れてこない。

それは、べつ悪いことじゃない。

昔みたいに、文章を書いてリリースするのが限られた人たちだけなんてつまらない

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僕が小説を書けない理由

僕が小説を書けない理由

技術的には書ける。書き方も知ってる。たぶん。

仕事で頼まれて書いた小説だって何冊もある。ライトなのから、そうでもないものまで。

「売れること」が命題な小説(小中学生から大人まで幅広く読まれるやつ)も書いてきた。とあるシリーズは累計100万部超えていまも地味に重版してる。もちろん、僕だけの力ではないけれど。

なのに書けない。またちょっとこいつ何言ってんだが始まってるけど。林さんにもちょいちょい

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安全安心な穴

安全安心な穴

一応、断っておくと、これはべつに特定の事象とか特定の誰かの発言について、主義主張とかどうこう言いたいわけではなくて。

言葉の使い手として、ここのところ「なんかモヤっとする」の正体を考えてみたいだけのもの。

べつにふだんから何かの言葉の揚げ足を取ろうと待ち構えたりはしてない。そんな暇な人は少ないと思う。それでも、どうしようもなく、見聞きしたときに「?」と思う言葉。

最近だと「安全安心」とかもそ

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書けるけど書けないのサインが出たときは

書けるけど書けないのサインが出たときは

プロだからいつでもどこでもどんなときでも「書ける」は、半分正しくて半分正しくない。

たしかに書く必要があれば書くことはできる。打席に立っているのに「ボールが来たらどうしよう……」ということはない。たいていのボールは打ち返せる技術というか経験は持ってる。

そういう意味では、いつでもどこでもどんなときでも書ける。

のだけど「書けるけど書けない」こともある。狭い意味での仕事として書くではなく、もっ

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想いと信念は何がちがうのかの話

想いと信念は何がちがうのかの話

似ているようだけど、全然別のものという言葉や概念がある。

その違いを考えたりするのがわりと好きだ。数少ない「趣味」と言えるかもしれない。嘘です。趣味ではない。そんな趣味あまり聞いたことない。

たとえば「想い」と「信念」の違い。

何かを成し遂げてきた人、成し遂げようとしてる人とインタビューで対話してると、その領域の話がよく出てくる。

といっても、べつに「どんな想いがあったんですか?」とか「信

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なぜ書き続けるのか

なぜ書き続けるのか

師走ですね。あるいは年末。あと、最近、以前よりクリスマス云々あまり言わない気がする。個人レベルでもメディアでも。

あ、でも気のせいかもしれない。自分の周りが静かなだけでめっちゃクリスマス盛り上がってる人もいるかもしれない。

まあ、もともと日本の場合、クリスマスのポジションというか建て付けが独特だったから(もちろん宗教的意義においては別)、とくに何もないでも問題ないのだけど。

それはともかく、

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経験してないと出てこない言葉が好きだ

経験してないと出てこない言葉が好きだ

そのまんまなんだけど。言葉についての短い戯言。

取材でもそうじゃなくても、誰かの話を聞かせてもらっていて「持っていかれそう」な瞬間がある。

言葉の被写界深度がそこだけ浅くなって、言葉だけがその場で浮き上がるというか。迫ってくる感じ。

周りの情景がスローモーションで静かになり、その言葉がクリアに像を結ぶ。

経験してないと出てこない言葉が出てきたときっていつもそうなる。それって、すごく心がつか

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信頼できる書き手は「声」を聴ける

信頼できる書き手は「声」を聴ける

苦しい文章と苦しくない文章がある。書いてても読んでてもね。

じゃあ、その文章はどこから生まれるのか。そんなの書き手の中からでしょと思うかもしれない。

たしかに文章生成的なAIを使ってなければ、書いてる人の中から生まれる。のだけど、そうやって生まれる文章にも息ができてるのと、息が上手くできてないのがあって。

息が上手くできてない文章は、なんていうか文章そのものの呼吸が浅い気がする。読むのもちょ

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呑み書き二日酔いリターンズ

呑み書き二日酔いリターンズ

正直に告白すると、僕はリアルで二日酔いになったことがない。

そんなふうに言うとめちゃくちゃお酒強い人みたいになりそうだけど、そんなことはない。弱くもないけど強いの自覚もない。というか、なんでお酒の基準だけ「強い弱い」なんだろ。

コーラが強い人とか弱い人とかあってもよさそうなのに、あまり聞かない。俺、コーラ弱くてさ、呑みすぎるとだいたい記憶失くすんだよねー、とか言ってる人いたらそれはそれで怖いけ

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山とごきぶりホイホイには勝てない

山とごきぶりホイホイには勝てない

山を眺めるのが好きだ。

まあ、いまの仕事環境は視線を画面から外せば山が見えるから、好きでもそうでなくても視界には飛び込んでくるのだけど。

山を眺めていて見飽きるってことがない。不思議なことに。

べつにすごく山岳マニアというわけでもなく、ほうじ茶ラテ好きですねーというのと同じぐらいの感覚で山を愛でている。お茶と一緒にするな。

なんで山を眺めるのか。単純に癒されるからというのもあるけど、なんて

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ときには古い解像度で

ときには古い解像度で

なんか疲れてるというか、もやってる人が多かった気がする。この夏。根拠はないんだけど。

そりゃ、いろいろあるさ。頑張りたくても頑張れないこととか。わかってるけどできないこととか。

そういうときって解像度が下がる。

なんだろう。なにかを見ても、なにかの出来事に接してももやる。

もちろん「解像度」と言えば、画像とかパソコンのディスプレイなんかの「解像度が高い、低い」という話なんだけど、ビジネス文

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裸の幽霊と会った話

裸の幽霊と会った話

こんなふうに書くと、まるで怪談のようなのだけど。残念ながらそういうのではない。そっちを期待した人は、そっとページを閉じてもらえれば幸いです。

昔から「なぜ幽霊は服を着ているのか問題」はずっとある。一部ではそこの考察が熱心になされているらしい。言われてみれば不思議だ。

だけど、僕が出会ったのはこれから夏のシーズン本番を迎える幽霊ではなく、どっちかというと概念としての幽霊だ。背筋が凍る系ではなく、

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