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ものかきのおかしみと哀しみ

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すれ違った人たち
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2019年10月の記事一覧

金網にランチを入れた日

金網にランチを入れた日

里山暮らしをしていると、機会が減るものがある。平日ランチもそのひとつ。

まあフリーランスなので、そもそも平日も休日もあるようでないのだけど、世間は「平日は平日」として動いてるので便宜上、意識はする。それでもたまに忘れるときがある。この前も10月22日が祝日だと過ぎてから思い出した。

で、里山には平日ランチのお店はなかなかない。いや、いくつかあるんだけど本気の隠れ家的な店で、どこも変に知り合いだ

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昔、仕事で落ち込んでいたあなたへ

昔、仕事で落ち込んでいたあなたへ

なんか嫌だ。あなたは昔よくそう言っていた。

何が嫌なの? 僕が聞いても答えはなかった。愚問だったといまならわかる。

何かが嫌なのではない。嫌な対象があるならそこから離れるか無くしてしまえばいい。でもそれができないから嫌なのだ。

自分自身のどこからか生まれてくる嫌を、あなたはどうしようもなく全身にまとって仕事をしていた。

あなたが新卒で入った編集プロダクションは激務だった。ピークになると日付

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中野ブロードウェイで牛肉を

中野ブロードウェイで牛肉を

朝、歯を磨きながら、ふと思った。中野ブロードウェイで牛肉を買いたい。そうだ、今日は肉豆腐を食べよう。

僕は早速、着替える。中野ブロードウェイに行くには、それに相応しい服装というのがある。これでも、服には気を使う。スーツとか登山服だと、やはりなんか変だ。違和感なく溶け込める格好にする。

わざわざ中央線に乗るというのもなんだかそれっぽくていいなと、僕はひとりで喜んでいる。

中央線に乗って牛肉を買

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その人が見えてこない人

その人が見えてこない人

話はできる。会話も淀みなく流れる。なのに、話していて相手に違和感を感じるシチュエーションがたまにある。

なんだか話す時間が長くなるのに反比例するように、その人の所在がわからなくなるのだ。

目の前の相手はたしかに僕と話している。だけど「その人」が一向に見えてこない。話せば話すほど「その人」がいなくなり架空の存在と話してる気分になる。ふしぎだ。

じゃあ、いったい僕は誰と話してるんだろう。一応、な

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真夜中のメモ問題

真夜中のメモ問題

ときどき、寝ながら文章を書いてることがある。

何かのメタファーではなく、そのまんまの話。この状態を説明するのって難しいのだけど、夢の中でとかではなくかなり覚醒に近い状態で「文章を書いて」るのだ。ただ手を動かしていないだけで。

この「書いてる」という感覚(手でというのではなく)って、ただ夢で「文章を書いてる夢を見てる」のとは違って、ちゃんと脳がインプット→スループット→アウトプットの働きをしてる

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存在しない町があることについて

存在しない町があることについて

ドイツ西部に「ビーレフェルト」という存在しない町がある。いや、あるらしい。気になる。こういうの個人的にはすごく好き。

存在しない町がある、という時点で論理矛盾だしマイノング的なのだけど。

「ビーレフェルト」という存在しない町がある件については、結構有名な話なので、知ってるよという人も少なくないんだろうけど、こういう話ってふつうは一時的に盛り上がって廃れていくのに、いまだに現役なところがすごい。

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書く仕事をしたいひとが増えてる件について

書く仕事をしたいひとが増えてる件について

まじで? と思ってる。書く仕事ってライターになりたいということなんだろうか。ライターはそんな人気職種じゃないはずなのに。

もしかしたら「書く仕事」といってもライターではないのかもしれない。プログラムだって書く仕事だし、インハウスでだっていろいろ書く仕事はあるし。

純粋に南アルプスの天然水ぐらいピュアに「書く仕事=ライター」をしたいひとが増えてるなら、どういうことなんだろう。

需要に供給が追い

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知らないところでスケジュールが

知らないところでスケジュールが

たまにだけど自分の知らないところで自分のスケジュールが押さえられていて、ドキリとする。ちょっと動悸が速くなる。

なんだろう。自分はここにいるのに、もうひとりの自分がすごく先のほうでなんかいろいろ始めていて、そこに追いついてない感じ。焦燥感と困惑がない混ぜになる。

いや、スケジュール押さえた側も悪意はない。わかってる。

ありがたい話なんだ。先のスケジュールまで埋まるのは。フリーランスは仕事がな

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できるだけわからないところに入りたくなってしまう

できるだけわからないところに入りたくなってしまう

旅にはふたつある。

行きたい場所が明確で、そこに在るものもたどり着くまでの行程もちゃんと見えてる旅。もうひとつは、行きたい場所がぼんやりとしていて、そこに何が在るのか、どうやって辿りつけるのかもはっきりしていない旅。

たぶん、現代の文脈では前者が「旅」や「旅行」と呼ばれ、後者は「彷徨う」とか「徘徊」と呼ばれてもおかしくないんだろう。

べつにどっちが正しいの話ではなく、どっちもありだと思う。ま

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自分の平常を取り戻そうとしたら見えたもの

自分の平常を取り戻そうとしたら見えたもの

異常も、 日々続くと、 正常になる。

コピーライターの神様、仲畑貴志さんの有名なコピーだけど、まあ頭の中はそんな感じ。正常というより、異常が日常になるのほうが近い。

直接的な被害はほぼなくて(それはそれでものすごく助かってる)、でもまだ本来の日常には戻れない状況は、なんていうか真綿でじわっとくるまれてる感がある。

北陸新幹線が全車両の3分の1を失ったのもつらい。ほんとに足だから。道路状況も、

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災害の隣のnote

災害の隣のnote

きょうは書かない、いや書けないかなと思った。noteを。
端的に言うとキーボードを打つ腕が重いだるい。

ぶっといのからそうでもないのまで倒木をみんなで何本も伐り、玉切りして片づけ、土砂崩れ箇所は山の斜面を迂回して歩いて足はそんなに疲れてないのに、なぜか腕がすごく重い。

腕の筋力が弱ってんだよな。最近、キーボードに向かうのと移動ばかりで。

あと、気分。基本的に僕の場合は気分でnoteを書く書か

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なんで人は文章を書くのだろう

なんで人は文章を書くのだろう

仲さんのせつない言葉を読んで考えこんでしまった。

ちゃんとは読まれないかもしれない。それでも書いておきたい。そのどうしようもない気持ちはなぜ起こるのか。どこから来るのか。

もう散々言われてきたけれど、べつに文章を読まなくても書かなくても生きていける。何かを書く人(僕もだけど)は言葉や文章を水や食べ物のように、なくては生きていけないものと同列で扱ってるふしがあるけどね。

そもそも、いまは「読む

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好奇心は猫を殺すのか

好奇心は猫を殺すのか

物騒なタイトルだけど他意はない。そういうワードが入ってるだけで通報されたりbanされるのだろうか。ある意味、それも物騒だなと思うけど。

note酒場でそんな話(どんな話だ)をしていて、その場では答えが出ずにずっと漂ってる。

「好奇心は猫を殺す」

どうやら原典はイギリスの古いことわざらしい。Curiosity killed the cat.
まあそのまんまなんだけど、現在用いられている「ありす

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長い会議

長い会議

ものすごく長い会議に出たことがある。

いや、時間がではなく別のものが長いのだ。たぶん意味がわからない。

さすがに最近は長時間の会議は「いつの時代だよ」ってなるので減っている。

会議は30分というところも増えてるし、もちろんアジェンダは事前に共有される。会議の中身も、最新状況の共有と課題についてのディスカッションに何分、そこから具体的な意思決定に何分というように構造化されてるので、無駄にだらだ

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