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帝国から教会へ キリスト教考古学入門

 せっかくローマにいるのだから、ローマらしいことをやろう!

 そう思いったって、ローマで裏千家のお稽古に通い始めたのは、先日こちらでも白状した通りで、これはまだまだこれから、ひよこどころか、まだ卵がようやく産まれたばかりという状況なのだが、実は、この冬から春にかけてもう1つやっていたことがあった。

 「キリスト教考古学入門」講座。たまたま、SNSでふと発見した、教皇庁立キリスト教考古学学校(Pontificio Istituto di Archeologia Cristiana)による土曜日午前中の、11月から3月まで、全16回の講座。うち5回は実地見学なのが、まずとても興味深かったし、座学のある校舎は、テルミニ駅の近くで通いやすい。いつもならダラダラと過ごしてしまう土曜日、仕事と同じ時間に起きるのはなかなか大変だったが、出てしまえば内容は毎回興味深く、楽しみに通った。

 入門講座らしく、講師は、同校、といっても博士課程まであるレッキとした専門大学施設で、そちらの教授・講師陣が週替わりで登場。「キリスト教考古学の歴史」から始まり、キリスト教布教前後の、ローマにおける埋葬に関する法律や習慣の変化、帝国ローマから、カトリック総本山としてのローマの都市形成、教会の成り立ち、初期キリスト教文学の種別、初期キリスト教図像学など。こう書くとものものしいけれど、何しろ「入門」だから、「埋葬」というのはつまり、そもそも当初は禁止されたり迫害されていたキリスト教徒の「証拠」は、墓地にのみわずかに残るのみ、ということで、それはローマ観光「名物」の一つでもある地下墓地「カタコンベ」を知ることであり、特にその中で「キリスト教徒」を示すシンボルについてとか。初期文学というのは、ズバリ福音書、つまり新約聖書と、その周辺のことであったり、とか。

 昔、ヴェネツィア大学で学んでいたころ、ローマ考古学や中世美術史のほか、初期キリスト教美術史や中世美術史、ビザンチン美術史なども一通りとっていたので、実は全く新しいことというよりは、既に知っていたこと、少なくとも一回は聞いたことがあるようなことも多かったが、もうずいぶん前のことでだいぶ忘れかけていたし、20年近くも経つと、新たな発見や発掘、学説の変化など、さまざまなアップデートがある。一方、ラテン語も古代ギリシャ語も全く勉強していないから、碑文は相変わらず、自分では全く読めない。だが、何より、目の前にあることを知る喜び、聞いたことをすぐに自分の目で確認できる楽しみは、他に得難いものだった。

 3月末の最終回には、簡素ながら終了試験もあった。授業に通っていただけで、ろくに復習すらできていなかったので心配したが、なんとか無事に及第点をいただけた。これから少しずつ、習ったことなどを、忘れないうちにこちらで紹介して行けたらいいなと思う。

6 apr 2024

#ローマ #ローマ生活 #エッセイ #考古学 #イタリア #ローマで学ぶ  #初期キリスト教  

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