見出し画像

チェルシーに見た、コーナーキック攻撃戦術

コーナーキック攻撃戦術
~チェルシーより~

 今回は、セットプレーの局面であるコーナーキック攻撃において、チェルシーを分析します。
 分析の対象としたシーンは、23-24プレミアリーグ第12節のマンチェスター・シティ戦での1点目のシーンです。これを分析することで、チェルシーに見られた攻撃パターンに対する個人的な見解をまとめます。


チェルシーの
コーナーキック攻撃

① ベースとなる配置
 チェルシーはコーナーキック攻撃時、下図のような配置となる。
 説明すると、キッカーのエリアに2枚、ゴール前のフィニッシャーのエリアに6枚、後方のマーク/カバー要員として2枚を配置する。ここで、全体の配置を「キッカー - フィニッシャー - マーク/カバー要員」の順で「2-6-2」と表すこととする。

コーナーキック攻撃時の配置「2-6-2」


② キッカー
 ここから、それぞれのエリアにおいて分析する。
 まずキッカーのエリアでは、ボールをキックする選手は右利きのコナー・ギャラガーであり、右からのコーナーであるためアウトスイングとなる。(アウトスイングとはボールがゴールから離れていくような軌道のこと。逆に、ゴールへ向かうような軌道をインスイングと呼ぶ。)
 また、ショートコーナーの選択肢として、このエリアにもう1人(スターリング)を配置する。

キッカーのエリアでの配置


③ フィニッシャー 
 次に、本題となるフィニッシャーのエリアについての動き方等を見る。
 まず図の通り、ニアサイドでアクションする選手を黄、ファーサイドでアクションする選手を青、本命のターゲットとなる選手(チアゴ・シウバ)を赤とした。ここから順を追ってゴールシーンを説明する。

フィニッシャーのエリアでの配置

 初めに、ニアサイドには3人が図のように立つ。ここで、うち1人がボールへ向かって走り、残りの2人は敵ディフェンダーの動きを止めるようブロックする。これにより、ボールへ向かった選手と敵をブロックしている選手の間にスペースが生じる。

ニアサイドでの動き方
ニアサイドでの動き方(別角度)

 ここで、ターゲットとなる選手(チアゴ・シウバ)が、ニアサイドにできたスペースへ走り込む。このとき、ファーサイドでは残りの2枚(ディザジ、ジャクソン)がゴールへ詰める動きをする。なお、この2枚は身長が高く、競り合いの強い選手である。

ターゲットとファーサイドの選手の動き方
ターゲットとファーサイドの選手の動き方(別角度)

 そして、このニアサイドの空いたスペースにボールが蹴られ、ターゲットとなるチアゴ・シウバがフリーでヘディングをし、ゴールを決めた。

ゴールのシーン

 ここまでをまとめると、ニアサイドの3人でスペースを作り出し、そのスペースにターゲットとなる選手が走り込みヘディングによるシュートをする。仮にシュートが反れた場合でも、ファーサイドでアクションした残りの2人が詰める。といったシナリオであったと思う。


④ マーク/カバー要員
 
最後に、マーク/カバー要員について見ていく。
 チェルシーの場合、このエリアには、コーナーキック後ボールロストして敵のカウンターとなった場合に対応するため、ボール奪取能力が高く、ランニングのスピードが速い選手(カイセド、リース・ジェイムズ)を配置していた。

マーク/カバー要員のエリアでの配置


 今回は、チェルシーのコーナーキックの攻撃について分析しました。
 チェルシーは、ゴール前のニアサイドに意図的にスペースを作り出し、そのエリアにターゲットとなる選手を送り込むかたちで、ゴールを奪いました。
 個人的な見解ですが、ニアサイドのエリアでターゲットとなる選手がヘディングすることは非常に有効だと考えます。その理由はいくつかあります。
 まず、ニアサイドのエリアは、敵のGKが飛び出すことができないエリアです。なぜなら、飛び出してしまうとゴールががら空きになってしまうからです。そのため、攻撃側はフリーでヘディングできる可能性が高くなります。
 さらに、ニアサイドの場合、ヘディングする選手は軽くフリックするだけでボールをゴールに送り込むことができます。このとき、敵のGKからしたら、ニアポスト際にいる敵が目の前でボールに触れてその軌道が変わるため、反応するのが非常に難しくなります。
 そして、ニアサイドのエリアには、比較的速いボールを送り込むことができるため、守備側にとって対応が非常に難しいエリアとなります。
 以上の理由より、私は、コーナーキックはニアサイドを狙うべきと考えます。ただし、これについては、あくまで自分たちの戦力を前提とした上での話であり、そこに相手を弱点を突くような方法を試合によって考える必要があると思います。さらにいうと、試合中に選手たちが自らの判断で解決できるような柔軟なパターンであればなお良いと思います。

画像参考)
23-24 プレミアリーグ第12節 チェルシーvsマンチェスター・シティの試合映像より引用 


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?