過去を捨てた女達 4 子育ての呪縛
良い母親、愛情深い母親とはどんなものなんだろうか?子育てをし始めてずっと拭えない疑問。
てがかからなくなっても、そこはずっあった。
きっとそれは、自分の母親がその理想からかけ離れてたせいなのかもしれない。良妻賢母とはかけ離れた母親だが、虐待する母親ではなく、愛情もあるんだと思う。でも、母親としては何かがかけており、それが何なのか言葉には言えない。
そんな母親から育った自分は、まさにそんな母親像になっているのかもしれない。虐待やネグレクトまではいかない、愛情はある。でも、他のお母さんに比べてて愛情は薄いのかしらと首をかしげる事が多い。我が子なんだけど、我が子の感覚が人より他人事なのだ。
夏美は、そこの感覚をすごく不思議に思っていた。早く巣立って自立してほしい。シングルマザーになってもその感覚は強い。ずっと側にいてねという気持ちはさらさらないのだ。
夏美は目の前のバーテンダーに問いかけた。
「私は冷たいのだろうか?」
「そんなことありません。でも、ビールは冷えた方が美味しいから」
そう言うと、冷えたグラスにビールが注がれる。
「自慢のクラフトビールです」
夏美は、フルーティな味わいのクラフトビールを半分ほど飲み干した。
夏美は、再婚した夫に言われた事を思い出していた。私の子育ては甘いらしい。ただ、その事が愛情深い母親像との一致ではなく、子育て下手だからこそ、甘く感じるのかなと、最近ようやくわかったような気がする。
ただよくちまたのイメージの、
つい甘く育ててしまうのよね
息子は可愛いとか、
目に入れても痛くないほど可愛い
そんな感情はあまりない。
でも、なんか乾いた感じを抱きながら、子育てを続けてきた。もちろん真剣に怒ることも、お弁当を作ることも人並みに子育てしてきた。
もちろん、愛情がないわけではない。
愛し方が下手なのかもしれない。
それが子育てという呪縛となり、
自分を苦しめていたように思える。
もうすぐ息子は20歳になる。
このご時世、就職はまだ先になりそうだ。
でも、そのうちなんとかなるだろうと思っている。その感覚がそもそも他人事らしいのか、甘いらしい。
私はわたし、息子はむすこ
それ以下でも以上でもない。
ただそれだけ。
夏美は、そういつもいい聞かせている。
やはり変わりものなのかもしれない。
息子も夫もいないこの1人の時間は、夏美は好きてある。
そして、夕方のこの時間を好きなクラフトビール飲むひととき。
半分残っていたビールを飲み干した瞬間、ほんの少しだけ呪縛から解放されたように気がした。
それは、今までそれなりにしてきた子育てに対する労りのご褒美。そして、1人の時間を愛せるようになったご褒美でもあるのかもしれない。
さあ、私の時間を楽しもう。
バーの外では、やはり1人の時間を楽しむようゆ、黒猫も夕日を浴びながらまどろんでいた。
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