事業の成功確率が飛躍的に高まる「美しい戦略」とは?
◯自己紹介
こんにちは。
ふくろう経営デザイン室と申します。
もともとグッドデザイン賞等を受賞した実績がある一級建築士だったのですが、
中小企業診断士(経営コンサルタント唯一の国家資格)を取得し、
今では経営戦略とデザインの領域で、中小企業をサポートするコンサルティングをしております。
◯「美しい戦略」とは何か?
販売数20万部を超えて世のビジネスマンに愛される経営戦略論の名著「ストーリーとしての競争戦略」(楠木建著)では次のような図があります。
筋の良いストーリー、筋の悪いストーリー
(引用:「ストーリーとしての競争戦略」楠木建)
この図の①・②といった番号は、「経営における打ち手」(組織の体制、生産方式、商品やサービスのメニュー・品揃え、店舗の雰囲気、商品のデザインなど、会社を構成する様々な要素)を示しています。
この「経営における打ち手」が強く、太く、長く繋がっており、一つの方向性に向かっているものは「筋の良いストーリー」で、競争力が高いと著者は言っています。
このように、全てがコンセプトに従って、「経営における打ち手」が一つに方向に繋がっている筋の良い戦略は「美しいな」と感じます。
これを私は「美しい戦略」と呼んでいます。
例えば、スターバックスコーヒーは下のような戦略の構成になっています。
(「ストーリーとしての競争戦略」楠木建 を元に作成)
スターバックスは珈琲を売っているのではなく、
第三の場所(家庭でも職場でもない場所)でゆったりとくつろぐ経験や文化を売ることで、高い来店頻度と高い単価を実現させています。
これを可能にするために
店舗の雰囲気:間接照明、緩やかなBGM、大きめのソファ、各々の利用形態に合った様々なタイプの席を用意することでゆったりとくつろげるように。
出店と立地:まず都会の一等地に集中出店。「第三の場所」というコンセプトを真に必要とする都会のビジネスパーソンをターゲットに、そのコンセプトを強烈にインプットさせ、口コミでコンセプトを広げていく。
スタッフ:マニュアル通りの機械的な応対にならないよう、スタッフの教育に力を入れる。お客さんとのコミュニケーションや気の利いた応対が可能なように。
メニュー:珈琲の香りは豆の鮮度によって大きく左右されるため、珈琲豆の鮮度を非常に厳しく管理。それによって店内が珈琲の心地よい香りで満たし、リラックスできる雰囲気にしている。
など様々な打ち手を工夫しています。
さらに、全店直営方式だからこそ、これらを高い水準でこれを実現することが可能になっています。
以上がスターバックスの戦略の骨子です。
色々な要素が「第三の場所」というコンセプトに向かっていることで高い価値を提供していることが分かりますね。
◯なぜ「美しい戦略」は成功確率が飛躍的に高まるのか
経営者の方は自身の会社を、従業員の方は自分の働いている会社を想像して、次の質問に答えてみて下さい。
質問1.会社や商品、事業に目的やコンセプトはありますか?
これはそこそこ多くの人がYesかもしれません。
2.その目的やコンセプトは「ありきたりで他の会社でも言えるようなもの」ではなく、自社だからこそ掲げられる「唯一無二」のものでしょうか?さらにそのコンセプトに価値を感じてくれたり、目的に共感してくれる顧客は十分に居るでしょうか?
ここでYesと答えられる人は意外と多くはないかもしれません。
3.「経営における打ち手」(組織の体制、生産方式、商品やサービスのメニュー・品揃え、店舗の雰囲気、商品のデザイン、HPに掲載している情報、導入している制度、販促方法など、会社を構成するあらゆる要素)は全て、コンセプトと直接・間接的に最適な形で結びついていますか?コンセプトを顧客が享受できる状態になっていますか?
ここでYesと答えられる人はかなり限られるのではないでしょうか。
自分の感覚では全てYesと答えられる中小企業は1割か、もっと少ない気がしております。
一方、これらを全て実現できている「美しい戦略」では、同じ商品をつくっていても高い価値を提供できます。なぜなら「経営における打ち手」が全てコンセプトの価値を高めようと働くからです。
ラグビーをイメージしてみましょう。
「美しい戦略」は全員がONE TEAMで相手に向かってタックルしてるイメージ
「美しくない戦略」はチームの何人かが相手とは別の方向にタックルしているイメージです。
どう考えても「美しい戦略」の方がめっちゃ強そうですよね。
では、これを実現できている会社が1割にも満たない中、自社が「美しい戦略」をつくって実現できたとしたら?
競合の中で抜きに出られそうですよね。
これが「美しい戦略」の成功確率が飛躍的に高まる理由です。
◯ここで注意すべきこと
よく陥りがちな罠に「売れないのは営業方法のせいだ」と思ってしまう事があります。
戦略が十分に整っていない場合、いくら営業方法・販促方法を変えたところで、もしかしたらあまり意味がないかもしれません。
もっと根本を変えなければならないことに気が付かず、新しい営業方法・販促方法を試しているとズルズルとコストだけが重なっていくことになってしまうため、注意が必要です。
(因みに、需要に対して供給が少なかったり、法律や商習慣で守られたりしていて「そもそも競争が発生していない状況」だと、戦略が微妙でも売れたりもします。高度経済成長期にただ頑張っていれば成果が出たといわれる理由もコレで、供給が足りていなかったからです。
また、個人事業主で「自分一人くらいの売上があれば大丈夫な状況」でも、戦略がなくても結構何とかなったりするケースもあります。)
◯では、どうすれば「美しい戦略」を立てられるのか
「美しい戦略」を立てるのはなかなか簡単なことではありません。
まず経営に関する一般的な知識は必須です。
個々の「経営における打ち手」の結びつき(最初の図の①→②など)は、例えば
「社員の権限を増やす→モチベーションは上がるがコントロールがしにくくなる」
「多品種生産する→顧客の要望に応えられるが効率は下がる」などが、経営に関する一般的な知識を示しています。
さらに、これら全体が目的に向かうよう、バランスをとりながらうまく構成する必要がありますが、これがなかなか難しいです。
ここで重要になるのが「デザインの思考回路」だと考えています。
というのも「デザイン」をするときの思考回路と「経営戦略」を立てる際の思考回路がほぼ同じだと感じています。
(ここからちょっと抽象的な話で小難しい話になるので読み飛ばしてしまっても構いません)
デザインを行う際の思考方法を図にまとめると次のようになると考えています。
(もちろん、デザインするときの思考回路はデザイナーによっても違いますが、少なくとも自分と回りのデザイナーはこんな感じに考えている人が多そうです。)
自分が以前デザインを担当し、グッドデザイン賞等も受賞した珈琲店「イルマン堂」を例にすると次のようなイメージです。
1:クライアントの「こんなお店にしたい」をヒアリングし、ざっくりとした方向性を定める
2:「暗くしたい」「家具はモルタルのような素材を使いたい」「インパクトが欲しい」「落ち着く感じも欲しい」といった個々の要望を抑える。また、階段や水回りの位置、動線によりある程度プランが定まる。
3:条件を満足させた、アーチで洞窟のような空間を構成するという解をひらめく。
4:空間のイメージに合わせて、仕上げの素材や家具・扉・照明など細部を整えていく。
デザインとはまさに「ゴールに向かって全体を適切な構成にしていくこと」と捉えることができます。
一方、経営戦略を立てる際の思考回路もこれとほぼ同じと考えていて、次のようなイメージになります。
以上、少し抽象的な話になりましたが
「デザインと経営戦略を考える際の頭の使い方ってとても似てるよ」ということを抑えてもらえれば大丈夫です。
要するに、「経営に関する一般的な知識」と「デザインをする際に用いる思考回路」
これらが「美しい戦略」を立てるのに重要だと考えております。
戦略を上図のような方法でまとめていると、別の中小企業診断士さんからも
「よくそんな頭の使い方ができるね」と言っていただける事があるのですが、
単純に私にデザインの思考回路が頭に染みついている為だと思います。
あ、因みに『「美しい戦略」が立てられれば100%一発でうまくいく』という程簡単なものでもないことを特筆しておきます。
実際に顧客などの反応を確かめながら、より「これだ!」と思える戦略へ素早く対応させていくことも非常に重要だと思います。
しかし最初から「筋の良い」状態になっていれば、成功確率は飛躍的に高まるでしょう。
◯まとめ
いかがでしたか。
内容をまとめると次のようになります。
・「美しい戦略」とは「打ち手」が強く、太く、長く繋がっている「筋の良いストーリー」がある戦略のことである
・世の中の多くの企業は「美しい戦略」ではないため、「美しい戦略」が実現できれば成功確率は飛躍的に高まる
・美しい戦略を立てるには「経営に関する一般的な知識」と「デザインをする際に用いる思考回路」が重要となる
もし先ほどの質問に対して全て「Yes」ではなく、かつ、自社の製品・サービスが思うように売れないと悩んでいる場合は戦略を見直しても良いかもしれません。
(ポジショントークのようになってしまい恐縮ですが、、)
戦略の策定がご自身だけでは難しいと感じた場合は、ぜひデザインの思考回路を持ち合わせた経営コンサルタントである我々にご相談下さい。
戦略を考えることがめちゃくちゃ大好きな私が全力でサポート致します。
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