留学生との25年間9:お正月
しばらく投稿をお休みしていたのだけど、年末年始のお休みにちょっと時間ができたので、留学生の「お正月」について書きたいと思う。
(日本にいる外国人留学生は9割がアジア人なので、アジアのお正月についてわかる範囲で書いてみます。間違っていたら教えてください。)
中国では「春節」と呼んで「旧正月」を祝うことは、「爆買い」(すでに懐かしい言葉だ)ニュースなどで聞くが、旧正月を祝うのは中国だけではない。韓国、ベトナムでも旧正月を祝う。モンゴルも旧暦で正月を祝う。誰かがモンゴルはちょっと違うと言っていたので、もしかしたら日にちは違うのかもしれないけど。
毎年旧正月の時期になると、留学生たちが集まってお祝いをしている。勉強やバイトで忙しくしていても、この時ばかりは時間を作って友達と過ごす。本当は国の家族と過ごしたいのだろうけど、旧正月は1月末から2月。帰国は難しいので、友達と集まってお祝いするのだ。
ちなみに今年(2022年)の旧正月は2月1日だ。留学生から「旧正月の時期は寂しくなるから、みんなで集まるイベントをしてほしい」、「餃子パーティーがしたい」という声があったが、テスト期間とも重なるし、コロナ禍でパーティーは難しい。
日本に「おせち」があるように、彼らの国にもお正月料理があるようだ。中国ではお正月に餃子を食べる、なんてことを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれない。以前中国の学生と餃子づくりをしたことがあったが、餃子の皮から自分で作る本格的なものだった。手際よく作業をすすめる学生、指示についていけない自分。教室とは立場が逆転していた。
ベトナムは「バインチュン」という、何かの葉っぱにつつまれたおこわのようなもの(もち米の中に緑豆と豚肉なんかが入っている)を食べる。なかなか日本では材料が見つからないし、作るのも難しいようで、日本でバインチュンを手にいれた留学生がフェイスブックに喜びの投稿をしていた。その喜び方にこちらまで嬉しくなった。食べ物の力って大きい。
私は毎年旧正月の日をチェックして、そのころになると留学生に「おめでとう!」と言うようにしている。「異文化への配慮」をしていたつもりだったが、それ以外の時期にお正月を祝う国がけっこうあると数年前に知った。「配慮」したつもりだったが、だいぶ足りなかった。
タイが4月に「水かけ祭り」をしてお正月を祝うというのは聞いたことがあったが、ミャンマーもカンボジアも同じころお正月を祝うのだそうだ。ミャンマーにはタイのように水かけ祭りがあるとか。ミャンマーとタイは歴史的にもつながっているので文化的にも似たところがあるのかもしれない。
旧正月の2月ごろにも帰国しにくいが、タイやミャンマーの4月なんて言ったら、日本では全く「お正月」という気分はしない。留学生にしたら、この時期日本でお正月ムードに「共感」を得ることは、はなからあきらめているだろう。
しかし、特に家族を大切にするアジアの留学生だ。「お正月に一人」は精神的にこたえるのではないだろうか。
ベトナムではお正月は家族だけではなく、(日本の成人式のように)旧友に会う習慣もあると、ある学生が言っていた。「(それができない自分は)取り残されているような気がする」そうだ。だから母国のお正月は、せめて同国人で集まって母国の料理を作って一緒に食べる。国の言葉で思いっきり話す。
私も留学していたころ、テストが終わった後などに、日本人の友達の家で集まって食事をするのがとても楽しかった。食べ慣れたものを食べ、日本語で思う存分に話す。言いたいことを思ったままに伝えられるって何て素晴らしいことだ!と感じた。そして「分かり合える」という感覚。おいしくて、自由で、安心できて、正直、留学で一番楽しかった思い出の一つだ。
おととしからコロナで国を越えた移動がとても難しくなった。2年ぐらい帰国していない、という留学生も多い。「こんなご時世」と言ったらそれまでだが、この先いつ渡航が自由にできるようになるのかも分からない。留学生もご家族もどんな気持ちでいるのだろうか。
今年は留学生たちが家族と再会できるといいなあ、そして来日できずにいる新しい学生たちが日本へ来られたらいいなあ、お正月にこんなことを考えている。
今年も読んでいただき感謝しています。
2022年が皆さんにとって素敵な年になりますように!
yunsan_3さん、素敵な写真をありがとうございます。
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