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生きづらさを抱えた人にとって、図書館への就職は救いになるのか?

ネットを見ていると、メンタル系の疾患や対人関係の問題など、なんらかの生きづらさを抱えている人が「図書館司書になりたい」とつぶやいている記事に遭遇することがあります。

あるいは「発達障害の人に向いている職業リスト」になぜか「図書館員」が挙げられていたのも見たことがあります。

また私の勤務先では、メンタルを病んで休職していた人が、復帰直後に図書館へ異動になる例もありました。
人事としては「まあ図書館でしばらくリハビリしてね」という配慮なのかもしれません(実際にはめでたく復活する人もいれば休職に逆戻りする人もいるようですが)。

やはり図書館には「マイペースで落ち着いて仕事できそう」「本が相手だから対人ストレスが少なそう」、あと「閑職」というイメージがあるのかもしれません。

実際に図書館で十数年働いている身として「本当にそうなのか」と聞かれたら、「うーん…場合によりますね…」としか言えません。

まず正規職員の場合、図書館員である前に事務方としての組織人なので、いわゆるブルシットジョブ的なこと、会議のための会議とか、ものわかりの悪い上司を満足させるための無意味な報告書作成とか、予算削減のプレッシャーからは逃れられません。
非正規であればある程度そこは回避できるかもしれませんが、給料が安いとか雇用が不安定であることは、それ自体がけっこうなストレスです。
派遣や業務委託の場合、客から無理難題を要求されたり、下請けいじめのようなことをされる可能性もあります。

対人ストレスに関しては、まずカウンター業務はほぼ接客業ですので、「人間が苦手だから図書館に」という人だとかなりきついのではないでしょうか。クレーム対応もありますし、相手の意図をくみ取って対応するコミュニケーション能力も必要です。
ただ館種によって、不特定多数ではない限定された利用者を相手にする図書館では、比較的負担は軽い印象があります(公共図書館から転職してきた人が「利用者が話のわかる大人ばっかりでラク…」とつぶやいていました)。
「お金を受け取らない」「利用者の身元が割れている」点では民間企業の店員よりやりやすい部分はあるかもしれません。

またすべての職場と同様、図書館にも一定の割合で「人間性に問題のある人」が存在します。少なくとも「図書館員はぜんぶいい人」ということはないです。図書館は業務の性質上「閉鎖された空間で特定のメンバーと仕事する」要素が強く、人間関係で問題が発生すると逃げ場がありません。盗難防止のため建物の出入口も限られていることが多く、嫌な人を避けて通るのも難しいです。

もちろん労働条件が良く、理解ある上司のもとで人間関係も良好なら楽しく働けると思いますが、これは図書館でなくても同じですね。

あとヒマかどうかですが、これは本当に図書館によるとしか言いようがありません。職員が連日深夜まで残業しているところもありますし、非正規で残業しない契約であれば定時には帰れるでしょうが、逆に時間内にすべてを終わらせなければいけないわけで、勤務中の負担はむしろ重くなります。
さすがに全部署のなかで図書館が一番長時間労働、ということはなさそうですが、世間で思うほどヒマではないです。
ちなみに昔の作家は図書館勤めをしながら勤務中に長編小説を書いたりしている人がよくいますが、現代ではさすがにちょっと無理ではないでしょうか。

なんだかマイナス面ばかり書いてしまいましたが、私自身人づきあいも苦手で世渡りも下手、よそで使いものになるかわからない人間ですが、なんとか働いてこられたのは図書館だったから、とも言えます。

職場で嫌なことがあっても、書架の整理や本の装備、目録や分類に頭を使っていると、すこしリセットされるようです。そればかりやっているわけにもいきませんが。

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