身近な分子栄養学
当院は健康長寿を目標としたアプローチとして、運動と食事(栄養)を特に大切にしています。
運動では理学療法士、健康運動指導士による心臓リハビリとメディカルフィットネス、食事ではサプリメントの使用や管理栄養士による栄養指導などを行っております。
人間の体はさまざまな栄養素から構成されており、細かい細胞や分子レベルで機能しています。
その細かい細胞を栄養素により効果的に機能させていく学問が分子栄養学です。
分子栄養学は、食べ物が私たちの体にどのように影響を与えるかを分子レベルで研究する学問であり、例えば、食事に含まれるビタミンやミネラル、タンパク質、脂質、炭水化物などがどのように体内で働き、健康や病気にどう影響するかを探ったりします。
このように聞くと難しい話に聞こえますが、身近な症状や病気と栄養素の関係がわかると、日々の生活の中で意識するだけで、症状が軽減したり、改善することがあります。
現代社会では、健康や美容のためにさまざまな食事法やサプリメントが流行しています。しかし、身体に良いからといって摂取するのでは、あまりにも浅はかで効果的とは言えません。
サプリメントは本来、薬を処方するように、症状の原因や関連をしっかり評価し根拠を持って摂取するべきです。
どの栄養素が体に必要で、どのように摂取すれば最も効果的なのかを理解することが分子栄養学を学ぶことの一番の理由かもしれません。
身近な例としてビタミンCが体に良いことはよく聞かれます。
ではなぜビタミンCが体に良いかはご存知でしょうか。
その部分を理解するためには抗酸化作用や免疫システムのことを知っている必要があります。
もちろん難しい話を無理やり理解する必要はありませんが、分子栄養学というものを少しでも知って、日常生活に生かせればと思います。
分子栄養学を利用する上でサプリメントを思い浮かべる方もおられると思いますがまずは食事が一番です。
サプリメントは栄養素を抽出し、高濃度に合成して作られています。
しかし栄養素は単体で働くものはほとんどありません。
色々な栄養素が協力、協調しあって体を構成しています。
そのため自然の食材に勝るものはないと思います。
しかしながらある特定の栄養素の欠乏による症状や病気の場合は、サプリメントの方が効果がある場合があります。
利用方法については色々な意見があると思いますが、詳しくや医師や管理栄養士の意見などを参考にしていただければと思います。
分子栄養学の詳しい話はしませんが、少しでも身近に感じてもらうために身体症状との関係についてすこし勉強したいと思います。
五大栄養素は以下の通りですが、各栄養素の中にさらに細かく種類が分かれています。
1. タンパク質 2. 炭水化物 3. 脂質 4. ビタミン 5. ミネラル
例えば頭痛と関連する栄養素には以下のようなものがあります。
1. マグネシウム
役割: マグネシウムはミネラルの一種で筋肉の収縮と弛緩、神経の伝達を助ける重要な物質です。血管の緊張を緩和し、偏頭痛の予防に役立ちます。
不足すると: 筋肉の緊張やけいれんを引き起こし、頭痛を誘発することがあります。
食事例: ナッツ(アーモンド、カシューナッツ)、種子(カボチャの種、ひまわりの種)、ほうれん草、バナナ
2. リボフラビン(ビタミンB2)
役割: ビタミンB2はビタミンの中のビタミンBの一種でエネルギー代謝に関与し、細胞のエネルギー生成を助けます。偏頭痛の予防に有効であることが示されています。
不足すると: ビタミンB2不足はエネルギー代謝の低下を引き起こし、頭痛のリスクを高めます。
食事例: 牛乳、卵、アーモンド、葉物野菜(ケール、ほうれん草)
3. コエンザイムQ10
役割: コエンザイムQ10は細胞のエネルギー生成をサポートし、抗酸化作用を持つ栄養素です。
不足すると: コエンザイムQ10の不足はエネルギー生成の低下と酸化ストレスの増加を引き起こし、頭痛の原因となることがあります。
食事例: 肉類(特に内臓肉)、魚(サーモン、マグロ)、全粒穀物、ナッツ
4. オメガ-3脂肪酸
役割: オメガ-3脂肪酸は抗炎症作用を持ち、血管の健康を維持します。頭痛の予防に役立ちます。
不足すると: オメガ-3脂肪酸不足は炎症の増加や血管の不調を引き起こし、頭痛のリスクを高めます。
食事例: 魚(サーモン、マグロ)、フラックスシード、チアシード、くるみ
頭痛と関連するものの一部ですが、これだけでも栄養素が複雑に関連していることがわかります。
もちろん栄養素だけで解決できるものばかりではありませんが、身体が色々な栄養素から構成されていることを考えるとその重要度がわかります。
頭痛以外にも、味覚障害や肌荒れ、貧血、冷え、めまい、生活習慣病などに至るまで多くの疾患、症状が栄養素と関連していることがわかっています。
バランスの良い食事摂取が大切なことは言うまでもありませんが、そこに栄養素の考え方や食材、サプリメントなどを有効に利用することで解決できる症状があるかもしれません。
このような考え方を是非身近に感じていただき、日々の生活に生かしていただければと思います。