「メンバーの気持ちが下がってきた…」副業ゆえの難しさを打開した裏話【PMI奮闘記#5】
副業人材でチームを組み、M&A後の経営改善を支援する「継人(つぎびと)プロジェクト」。昨年夏の始動からあっという間に半年以上が過ぎました。
これまでの体制を一度仕切り直し、チーム制から個別タスク制で進めることになったメンバーたち。その背景には、副業プロジェクトならではの難しさがあったようです。
順調に見えた彼らの挑戦は、どこで壁にぶつかり、そしてどう乗り越えたのか――。今回は、ヒューマンアール代表取締役・丸山直幸氏に“舞台の裏側”を詳しく伺いました。
(文責:田原未沙記)
副業プロジェクトゆえの“やりにくさ”に直面
外国人材の派遣・紹介をおこなう株式会社ヒューマンアールを舞台に、このプロジェクトが始動したのは2023年7月のこと。多様なバックグラウンドをもつ副業メンバーの力を借り、当初は順調に進んでいきました。
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代表取締役・丸山「プロジェクト発足時は、①既存事業拡大、②新規事業開発、③コミュニティ運営という3つの軸でスタートしました。具体的な戦略を練っていく最初の3か月間(2023年7~9月)は、この3チーム制がとてもよく機能したと思います」
最初はいわば「頭を動かすフェーズ」。1年後の売上1.5倍という目標に対し、まずは戦略を3本柱に分けたことで、各メンバーのやるべきことが見えてきました。
しかし、そこから「実行するフェーズ」に移っていくと、次第にメンバーの足並みが揃わなくなっていったといいます。
丸山「継人メンバーが普段どこまで動けるのか、作業をどこまで任せられるのか。本来であれば、スタート時点でもっと具体的に把握し、一人ひとりの行動・役割を解像度高く考えておくべきでした。これは、私の大きな反省点です」
例えば資料作成にしても、ヒューマンアールの社員側でやるのか、継人メンバーにやってもらえるのかがはっきりせず、スムーズに進まない。計画の遅れが発生しても、スピーディーな修正が難しい……
コミュニケーションを取ろうにも、副業で参画しているメンバーはどうしても稼働時間が限られてしまいます。社員は手を動かせる状況でも、チーム内で思うようにペースが合いません。
「どうやって接していけばいいのか?」
「どうやってプロジェクトを進めていくべきか?」
双方からそんな“迷い”が出るようになり、社員(本業メンバー)が継人プロジェクト(副業メンバー)に合わせて動く、という状況になっていきました。
丸山「連携がうまく取れず、お互いにモヤモヤを抱えている状況は、10~11月頃に強く感じるようになりました。全体のモチベーションや温度感が下がってきちゃったなと」
全員が同じ社内にいるわけでもなく、基本的なコミュニケーションは、Slack上と週1回のチームミーティングのみ。本業やプライベートとの兼ね合いもある中で、足並みや温度感が揃いにくいのは必然だったのかもしれません。
また、チーム制のため、自分の手応えに不安を抱くメンバーもいたようです。
「本当に自分が必要なのか?」
「どこまで自分が貢献できているのか?」
「他に自分ができることはないのか?」
丸山「ただ、こうした課題感に対して『なんとかしなくちゃ』とは思いつつ、実際にどうすればいいのかわからなくて。かなり悩みましたし、苦労しました」
メンバー提案の「1on1」が打開策に
そんな状況を打開するきっかけになったのは、継人メンバーでありこのプロジェクトの発起人でもある、田保祐一郎氏の提案でした。
「いったん、1on1(1対1の面談)をしてみるといいですよ」
田保氏の本業は大手通信キャリアの会社員。これまで主に新規事業の立ち上げ(0→1)や、立ち上がり間もない事業のグロース(1→100)に携わってきた経歴をもち、本業外でも地方活性化プロジェクトを複数手がけている実力者です。
丸山「田保さんには色々と相談しましたね。社内でも経営層トップと社員の間をつなぐような立場の方ですし、経験をふまえてアドバイスしてくださいました。私の中では、勝手にメンターの一人だと思っています」
アドバイスを受け、継人プロジェクトは仕切り直しのためのトップミーティングを実施。
これらをうまくマッチングさせ、一人ひとりの役割を明確にし、全員が迷わず手を動かせるようにしよう、と方針を確認しました。
そして2023年12月から、各メンバーとの1on1が始まったのです。
面談の中では、あらためて個人の得意なことや、うまく進められるイメージがわきそうなことを、丁寧に掘り下げていきました。
継人プロジェクトでは、実はそれまでメンバーを深く知る機会がなかったといいます。それぞれの得意分野については、最初の自己紹介と、Slack上で触れた程度。その後は、タスクに対する「立候補制」でスタートしたからです。
さらに、ヒューマンアールの経営状況(=現在まだ収益が出ていない状況)を営業利益までありのままに公開し、目標と現在地を共有しました。
丸山「数字をすべてオープンに共有することは、自分の不甲斐なさをさらけ出すことになり、正直とても覚悟が必要でした。それでもやはり、1on1の機会を設けて本当によかったと思っています。対話を通じて、メンバーの本音や、プロジェクトに対するやりがいも確認できました」
1on1でのやり取りを経て、タスクと人材の個別マッチングに着手。メンバーからも「やるべきことが明確になってよかったです」という声が多数挙がりました。
そして2024年1月からは、3チーム制ではなく、個別にタスクを割り当てて進めていく「新体制」で再スタート。その詳細は、前回の記事でお伝えした通りです。
仲間同士の横のコミュニケーションにも期待
2024年が始まり、新たなフェーズに入った本プロジェクト。今、ヒューマンアールから継人メンバーに期待するのはどんなことでしょうか。
丸山「個別タスク制に変わるとはいえ、プロジェクトとして目指すところは同じです。明確になった自分の役割に対して、まずはモチベーション高く取り組んでいただけると嬉しく思います。
さらに、自分以外のタスクにも関心をもち『大変そうなら手伝うよ』といった声のかけ合いが自然に発生するといいですね。せっかく縁あって集まったメンバーなので、横のつながりが強くなればもっと素敵だなと考えています」
一方、継人メンバーがこのプロジェクトに期待していることについても、1on1を通じて聞いたようです。
丸山「皆さん一人ひとり濃淡はあるにしても、自分にとって未経験の業界で、しかも小規模な会社の経営に携われることに期待を寄せているようです。将来的な自分の付加価値を上げる経験、と考えている方が多い印象ですね」
プロジェクト全体リーダーの長田明氏(仮名)も、次のように加えました。
長田「経営者じゃないけど、経営に携われる。継人プロジェクトの最大の魅力は、そこにあると思います。M&A直後、PMIのフェーズに関われるチャンスはなかなかありません。成功も失敗も、リアルに体験できるのがいいところです。
ただ、“実習”のような経験ができるからといって、企業は学校ではありません。副業で携わるメンバーは貴重な機会に感謝し、成功や失敗も自分で分析して糧にしていく、主体的な姿勢が求められると思います」
プロジェクトの目標「1年後に売上1.5倍」の期限は今年の9月。新たな試みだからこそ直面する壁を乗り越え、一歩ずつ前進する様子を次回以降も引き続きお届けしていきます。
なお、本プロジェクトは、TRANBI副業部(無料オンラインコミュニティ)から生まれた有志メンバーで挑戦しています。少しでもご興味があれば、ぜひお気軽にご参加ください!
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