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他者と関わる|家族とは|人類学者・磯野真穂さんの講義受講ノート2

磯野真穂さん主宰の「他者と関わる」という講座の第二回に参加した。

一回目のテーマは「他者とはだれか」だった。

今回のテーマは、「家族とは何か」だ。

家族と会社のお医者さんと名乗っているわりに、家族の定義がわからない。
やはり、普段なにげなく使っている言葉の概念を定義しようとする試みは至極興味深いことだ。

家族とは何か。

医学では、人体を構造(解剖学)と機能(生理学)から学ぶ。

これを家族に当てはめてみると
家族の構成員は誰か?
その役割はなんだろうか?
の二つの問いが存在する。

あなたにとって、「家族」とは誰だろうか。
講義では雇用保険法上の定義が紹介されていた。
ちょっと自分でも調べてみると、第六十一条の四 介護休業給付金の項目では対象家族を

当該被保険者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母

としていることがわかった。
この定義だと兄弟は入らない。
仕事上の感覚だと、家族といえば本人の兄弟は家族に入る。

一方で、民法では家族の定義はなく、親族が定義されているだけらしい。
ちなみに民法第725条によると親族とは、

1 六親等内の血族
2 配偶者
3 三親等内の姻族

らしい。
このあたりの親族と家族とが混合して、自分の家族のぼんやりとした定義があったように思う。

逆に、文化人類学の視点からは、夫が妻と子のもとに通うのみの妻訪婚というものが紹介され、構成員の定義の難しさを感じた。

では、家族にはどんな役割があるのだろうか。

家族の役割

講義では、
1個人と社会の媒介項
2自然と文化の媒介項という二つの役割が示された。

(以下講義を聞いた上での自分なりの解釈と感想を交えて記載)
個人は、家族を通して社会を学び、社会へと巣立っていく。
この役割を中心に家族を考えた時に、必ずしも親族が家族の役割を担う必要がないのは明白だろう。(親、兄弟、養護施設など)
学校がこの機能の一部を果たしているとも言える。

自然と文化の媒介項というのが、難しかった。
極端な話、生まれたての赤ちゃんの状態が自然に近い状態と考えると少しわかりやすい。
赤ちゃんは身体維持の必要性を家族によってケアしてもらう必要がある。
この辺も、家事育児のアウトソーシングによって、変化してきているのだろうとは思う。
そして、徐々に自然側から文化側に近づいていくと、娘と一緒にお風呂に入ることを許されなくなる父という時期がやってくる。
娘のことを思うと、リアルにせつない感情が生まれた。
大人になって、文化側に寄ったとしても、家族と一緒にいるときには、メイクをオフにしているとか、パンツ一丁で歩くとか、身体的に油断した姿を見せることができる。

「家族」と「職場」の人間関係において、決定的に違うのは何か?という問いがあった。
そこで、職場の人間関係は目的が共有されている必要がある、という意見になるほどと思った。
一方で、家族は目的がなくても存在する。

本当にそうだろうか。
僕は違うと思う。
目的がなくても存在しているように思えるが、家族にはちゃんと目的がある。
家族全員の幸せなのか、親からしたら子供の幸せなのか、そもそも家族にとっての幸せとはなにか。
暗黙の了解になっているのではなかろうか。

COVID-19におけるご遺体の議論

そして、最後に、COVID-19関連で、遺体観の話になった。
COVID-19で亡くなった方のご遺体には家族は触れることができないことについての議論だ。
波平恵美子によると、日本には日本の遺体観がある。
僕はコメントに「遺体には魂があると信じている」と書いた。
これは僕の意見というよりも、臨床で目にしてきた光景を思い出して書いたことだ。
最期の時がきて、「死」を宣告したあと、必ずと言っていいほど、家族はご遺体に触れる。
まだそこに「生」があるかのようにだ。
そして、ご遺体を火葬することで、魂のよりどころとしての身体が消滅して、ようやくお別れとなる。
だから、たとえ遺体になったとしても、身体に触れることができないということは、この大切な別れの過程を省略してしまうことであり、遺族のグリーフケアにとって必要なステップを取り去ってしまう悲しさがある。
必要な過程だから省力するなと言いたいわけではない。
感染症の観点からだけではなくて、緩和ケアや遺族ケアといった倫理的な観点も考慮していくことが必要かもしれない。

家族について、「死」について、もっと対話する機会が増えていくことを願う。

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