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新規事業創出の極意⑦まずは行動してみませんか?

今までに、民間企業、大学、NPOの立場で新規事業創出にそれぞれ携わってきました。個別の具体例は色々と問題になってしまいますが、折角の経験なので考え方などをまとめて欲しいと知人に勧められました。もちろん、公開可能な範囲の内容だけです。

前回は「人間関係構築力」について記事化しました。

7回目のテーマは「実行力」です。特に新規事業に関してはやってみないと分からないという部分も多いので、机上で精緻なビジネスプランを作るよりも、顧客ヒアリングやスモールスタートの実施などの「実行力」が重要だと思っています。

今回の記事ではその辺の想いが伝えられれば幸いです。

新規事業の構想を作る(机上での仮説検証ステージ)

新規事業を始めるにあたって、最初の段階としてビジネスモデルを考えます。ここでは、5W1Hを分解して考えて、「誰に価値を提供するのか?」、「どんなサービスを提供するのか?」、「そのサービスがどういった点が喜ばれるのか?」、「いつサービスを展開するのか?」と整理します。もちろん、「なぜ自分たちがやるのか」、「差別化要因はどこか?」などもしっかりと精査します。

大企業によくある失敗は、この段階の精緻な構想にこだわったり、不明点が多すぎて次の段階に進まないことです。上司に説明しても、「現時点では良く分からないことが多いので、もう少し情報を集めます」という結論になってしまいがちです。

でも、やっぱり限界はあるのです。誰でも入手できる情報はごく一部ですし、同じ情報を見ている人が五万といるので、それほど価値はないです。この机上仮説段階のビジネスモデルを適当にまとめろとは言いませんが、事業化成功要因や仮説的課題を自分たちなりに腹落ちしていれば、次の段階で再検証をするので大丈夫です。

むしろ、この段階で多くの時間を使ったり、外部を活用した市場調査や分析まではやっている必要はないと思います。

机上での仮説検証ステージのブラッシュアップ

前述の机上検証で整理した内容は基本的には正しくないことが多いです。そこで、次の段階として、「社内の有識者」や「顧客」、「業界の有識者」の生の声を聞きながら内容の精度を上げていきます。

具体的なヒアリング対象としては、社内の関係者であれば、「技術的に作ることができるのか?」、「自社に商流があるのか?」、「同業他社の状況は?」など、考えているビジネスプランに近いところで技術開発やマーケティングなどを実担当している人に聞いてみましょう。

必ずしも全てを知っている訳ではないですし、意見の中に主観も入ってきますが、その道の専門家としてビジネスの最前線で活動している人の意見は無視できません。もちろん、社内なので無料で比較的容易に相談できるので、これをやらないという手はないです。

また、多くの人の意見を聞いてみるのも大事です。可能な範囲で多くの情報を集めて、当初のプランをブラッシュアップしていきましょう。

そういった社内の有識者たちは実際に事業化するときの受け皿となってくれる可能性も高い人たちでしょうから、今後のことも考えると良好な人間関係を作っておいた方が良いです。後で、「そんな話聞いてないよ~」なんて言われたら、色々と面倒くさいですし。

外部の人では、想定しているビジネスの顧客やその顧客、業界のエキスパートなどで特にマーケットリーダーやイノベーターの企業に所属している人にヒアリングできることが重要です。

どの業界でも常に時代をリードして新しいビジネスを展開している企業がいますので、その企業から情報を収集できる状況を作っておくことが非常に重要になってきます。ネット上で得られる情報では限界がありますので、如何に有益な情報を他社に先駆けて入手できるかが大事です。

突然、良く分からない人から相談されて、最初からぺらぺらと重要な情報をしゃべってくれる人なんて基本的にはいませんよね。継続的な関係を構築しながら、情報交換できるようにしておくと良いですね。

では、どうやってそういった社外の人と知り合いになれるかというと、これは地道な活動が大事です。自社の顧客であれば良いですが、そうでない場合は各種会合で声をかけて継続的にコンタクトをしたり、社外の業務を一緒にやったり如何に自分のことを覚えてもらうかが重要です。

こういった活動を通じて、机上検証で立てたビジネスモデルを、実現可能性やリスク、自社の優位性などを改めてブラッシュアップしていきます。やはり、実際にこのような活動を通じていかないと、どんなに優秀な人でも机上の理論だけでは良いビジネスプランんにはならないと思います。

どうも社内政治が強く求められてしまう企業だと、上司の方ばかり向いて仕事をすることが普通になって、顧客の声を聞くという発想にならなくなってしまうのです。確かに、上司は自分のビジネスモデルを承認する立場ですが、実際に使ってくれるユーザーは顧客なので、是非こちらの声を聞くようにして欲しいです。

ビジネスモデルをまとめる手法

ビジネスモデルを整理する手法は下記のように色々とあります。基本的には色々なところで解説もありますし、ある程度のキャリアの人であれば実際にやってみれば習得にそれほど大きな障害はないと思っています。

それよりも、上記の顧客ヒアリングの活動を通じたブラッシュアップをどうやってやっていくのか、そちらの方が重要です。ここで記載の内容は、それを整理するための手段だと思っても大丈夫です。ここでは概略のみ書いておきます。

①SWOT分析

強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」の頭文字から命名されたフレームワークです。それぞれのセグメントに分けて、整理します。

②3C分析

「Company」、「Customer」、「Competitor」の3つのCをもとにマーケット環境を分析する方法です。競合他社や市場環境をしっかりを整理して、今想定しているビジネスが市場で受け入れられるかの判断に用います。

③PEST分析

「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」の4つの観点からマクロ環境を分析します。政治経済やテクノロジーの大きな潮流を見ながら、将来のトレンドを考えていくようなフレームワークです。

④ポジショニングマップ

市場における各商品のポジションを、縦軸と横軸とからなる2次元の座標によって表現します。

例えば、ビールであれば、「苦味」 vs 「さわやかさ」、「コク」、「キレ」など、消費者の好みが分かれるところで分類します。市場の中で競合が少ないところを明確化できます。

⑤ファイブフォース分析

「新規参入の脅威」、「代替品の脅威」、「買い手の交渉力」、「売り手の交渉力」、「業界競合他社」という業界に影響を与える5つの力を分析することで、事業リソースを投資すべきか、撤退すべきか、などの判断を行う方法です。

サービスを展開するときも「実行」が重要

実際に新規事業で新しいサービスを展開していく際にも、「実行」という点が重要です。最初から大規模に展開すのではなく、自社の経営にほとんど影響がないレベルの小規模なスモールスタートが大事です。

お菓子などを特定の地域で先行販売して消費者の動向を観察するということも良くやっていますよね。それと同じです。どこで実施するかは精査が必要ですが、まずはスモールスタートで始めて自分たちが考えたビジネスモデルの検証をしましょう。

実際問題として、机上検証や顧客ヒアリングの段階をあまりにも長く時間を設定して、人件費を使うくらいなら、その費用を使ってサービス展開したほうが良いです。

結局、作り上げたビジネスモデルは指摘しようと思ったら、いくらでも突っ込むことはできます。ただ、実際にやってみて、「小規模ですが、ここまで成果がでます」と言えたら、説得力が圧倒的に違います。

その結果、自社がこういった取り組みをしているという宣伝にもつながりますし、何よりも市場の反応がダイレクトに伝わってきます。また、担当者のモチベーションも飛躍的にアップします。やっぱり、机上で考えているだけだとモチベーションの持続は大きな課題です。

実際に自分たちが考えたビジネスが形になるということが、その担当者にとっては全てに勝る良い経験だと思います。それが良い成果につながろうと、残念ながら残念な結果になろうと、経験として担当者の成長につながります。その手前段階で辞めてしまったような内容では正直、担当者の成長につながるようなことは少ないと思っています。

今回伝えたかったのは、実行することの重要性です。自分から動かずに評論家的なことをいう人が結構多いです。でも、実行した人でないと新しい事業は生み出せません。

次回は「熱意」と「情熱」という観点で記事をまとめていきます。ご期待ください。また、Twitterも引き続き強化中ですので、是非宜しくお願いします。

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