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そのニュース、本当に正しいですか?


僕の入っているオンラインサロンはちょっと変わっている。

ラグジュアリーブランドのデジタルプロモーションをメインに手掛けられているマーケティングスペシャリストのナカヤマン。さんが主催するサロンなのですが、

<参考記事>


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こんな感じでサロンオーナーではなく、入会している誰からともなくslack内でお題がやってきてスレッドが立つ。僕は過去、実験的にいくつかオンラインサロンに入会した事があるのだけど、経験上スレッドを立てるのは大概サロンオーナー、もしくは取り巻きのインフルエンサーが少しあげる程度。(何だったらスレッド内の発言もほぼ中心メンバーのみ)

しかし、こちらのサロンではほぼ一般のサロンメンバーからの問題提起や情報共有からスタートするのが特徴的。ファンクラブ形式ではなく、17世紀のサロン文化のアップデートを目指してコミュニティづくりをしているという点も他のサロンには全くない価値の一つ。当時の文化人たちは、交流する事でスキルを伸ばしフランス文化の発展に大きく寄与したという歴史があり、それを現代でも実現しようというのがこのサロンの趣旨となっています。ファッション業界の人間も多く参加しており、ファッションやアート関連のスレッドが立つのも珍しくないのですが、その中で先日興味深いお題が出てきました。

売上好調「STYLEVOICE.COM」の実態は?

STYLEVOICE.COM(スタイル ヴォイス ドットコム)というファッションECモールをご存知でしょうか?ジュングループ・マッシュスタイルラボ・デイトナインターナショナルの3社の合弁で立ち上げられたECモールであり、ECでの百貨店を目指した取り組みになります。オープンしたのは昨年の11月、構想自体は2018年から報じられていたので業界内でも認知は高いのではないでしょうか。そんなスタイルヴォイスですが、売上好調との報道を受けて今回のスレッドが立ち上がりました。

ジュン、マッシュ、デイトナの合同EC コロナ禍で「信頼できる発信」を武器に滑り出し好調<WWD JAPANより>

2019年11月のスタートから半年が経ち、軌道に乗り始めている。今年に入ってからは2月の売上高が前月比2.8倍、3月は同1.6倍、4月は同1.7倍と月を追うごとに大きく伸長。売上高は初年度計画20億円に対し、「確実に上振れする」(片山裕美スタイル ヴォイス社長)見込み。
<中略>
片山社長は、「記事コンテンツの認知度が徐々に高まり、ファンが作れ始めている」と自信をにじませる。

WWDの記事から抜粋すると重要な箇所は上記。売上が毎月大きく伸長しており、当初計画していた初年度20億円という計画が上振れする見込みである事と、その原因が記事コンテンツを起点とした認知度向上とファン獲得にあるという事。当初の目論見通りの展開と、それを超える売上を作れているのは素晴らしい事ですね。ファッションECモールはZOZO一強が長く続いていますが、そこに歯止めをかけれる存在になるか期待が膨らむところです。

これに対して、AIのレコメンドサービスを提供するファッションテック企業「ニューロープ」代表の酒井さんが問題提起。

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上記のように、slack内で専門性が高いと思われるユーザーに名指しで遠慮なくヒアリングしていくのもこのサロンの文化だと思います。おかげで活発な議論が生まれやすい。酒井さんからは問題点として「MD計画の立てにくさからトータルで採算が取れるかどうかが疑問」といった内容が投げかけられました。

また、他方でスタイルヴォイスの売りであるコンテンツについても切り込みがありました。もちろん指名の有無に関わらず個々のサロンメンバーの視点から以下の様に様々な発言が起こります。

・コンテンツはどう機能しているのか?
・販売員の視点からはどう見える?
・採算性は?
・サロンオーナーから必要な視点の補足


コンテンツはどう機能しているのか?

もちろん指名されていなくともサロンメンバーは積極的に議論に参加します。まずはスタイルヴォイスの売りであるコンテンツについて切り込みが。

ライター:北本祐子さん

シトウレイちゃんとかちゃんとインスタストーリーで記事載ったの報告してるので、ファッションに興味がある層の定期流入あるのは強いですよね。海外コレクションスナップの感度で日本の価格帯をみると「安い」って感じるかも。

深地

まず気になるのは販管費ですかね。有名スタイリストやモデルを起用してそこが起爆剤になっていると思うんですが、それがどの程度の投資なのか。大草直子さんとか至るところで起用されすぎて、消費者は飽きないのかな?と心配になるレベルですね。
あと、他のモールや自社ECで買えるものがどの程度売れるのか。ここの比重が伸びているなら、コンテンツ起点で顧客化が進んでいると言えそうです。インフルエンサーのファン中心にリピート発生してる可能性はあると思いますね。

元Webメディア編集長:Azuさん

誰でもインフルエンサーになれる時代に、改めて職業としてファッションに関わっているプロの「お墨付き」が重宝されるようになった結果なのかなーとは思いました。この前も会社で「雑誌に載ったりメディアに載る意味ある?SNSで良いのでは?」という話が出たんですが、露出量より信頼の質の時代になってくるのかななど思っています。特にプチプラ以外の商材では。深地さんがおっしゃるようにだいぶメンツも固定されていて飽和感があり、フレッシュさはないですが、逆にそこが信頼感なんでしょうかね。

スタイルヴォイスの集客構造の一つは、採用しているキュレーターからソーシャルでの記事告知。そこからの拡散によって集客・購買に結び付けていると推測されます。

ライフスタイル全般に精通しているライターの北本さんは、シトウレイさんからファッション感度の高い層へのリーチ→その層からは価格帯が安く感じるのでは?というご意見。

深地からは、インフルエンサー(キュレーター)起点でファン中心にリピートしている可能性がある事、特に独自性の強い商品の販売は効果を上げやすいのではないかと意見。懸念点としては、キュレーターにインフルエンサーを採用しているが他メディアでもよく目にする人がいる事、コンテンツの方向性が定まっていない事がやや気になり、またそこの費用感から販管費が高騰しているのではないかとの疑問。

WWDでファッションコラム「Azuはこう読む」を連載しているAzuさんからは、コンテンツ起点で物が売れる理由に「プロのお墨付き」が効果的であるとの指摘。スタイルヴォイスで言うと、「プロから推薦している=信頼の質が高い」という事でしょうか。確かに何でも適当にお勧めする人はフォロワー多くても物は売れていきませんから。


販売員視点からはどう見える?

サロンにはアパレル販売員も数名参加しておりますが、販売員さんからはどう見えているのでしょうか?

販売員:sakiさん

顧客の信頼がある、ブランドが認知されている、この2つがあるからこそ出せた結果ではないかと思います。
売り込みだけではなく提案で、本当に気に入ってもらったものだけ取り上げるというのはアパレルEC全てができているわけではないので率直に言い切れるところはすごいと感じました。

販売員:なつみさん

各ブランドがショップ名をアピールしていないので、ブランド購入してる層よりその人がイメージしているライフスタイルがマッチしていたら、トータルで購入されるのでないでしょうか?
ジェラピケの色とシャンパンのラベルの色を合わせてるのですぐに、着て飲んでいる私が想像できるんですよね笑
自分のライフスタイルにあったひとつのお店で買い物している感覚に近いんだと思います。

某有名アパレルショップにて店長を務めるお二人からは「キュレーターが本当に気に入ったものだけ取り上げる」「訴求するライフスタイルがマッチしたらトータルでの購入に結びつく」など提案にフォーカスしたご意見。販売員さんらしい視点ですが、ここは所謂「コンテンツ力」にも結びついてきそう。


採算性はどうなのか?

採算性という視点からコメントされているのは、やはりブランド運営経験者の方々。

株式会社DeepValley代表:深谷さん(元マークスタイラーMD)

雑誌にかける広告宣伝費に効果が見受けられなくなってきたからメディア作ってコンテンツマーケにお金出すの気がします。今まで計測が難しかった&コンビニでの接触機会が減った分を取り返そうとECと繋ぐことで、ユニットエコノミクスの健全化を測ろうとしてるのかもしれません。
今の雑誌よりかはCAC低いかもしれないですね、ただ、ここでファンというより本命は自社ECへの送客なのでは?とも思います。&ウインドウショッピングのデジタル化がしたいのかな?

株式会社ネバーセイネバー Chairman:磐井さん

単純にコストが合わないと思うよ。売上の話はいいから利益の話をして欲しい。以下、感想

・コンセプトがあって、もっと面白いモールにできるかも。という期待はしたい。
・客単価はもう少しあげないとダメ
・物流コストの割返しが合わない
・物流のオペレーションどうなっているんだろう?
・セールとかやり始めたら終わり
・在庫問題どうするの?

JUNKO KOSHINO INC.ディレクター:Aoyamaさん

販管費の持ち出比率はわかりませんが、スタイルヴォイスだけが利益がとれる構造だと思います。せどりに近いです。各ブランドはおそらくKGIとして売上ではなく、この見せ方での流入検証データ取得だと思います。最終的に自社ですることもあるでしょう。
感覚では20代中盤以降の人は特に権威性依存が少し見え始めている感があります。結局不安定な時代は誰でも安心安全が欲しいという心理です。その点では企画はハマっていて、みんなが知るインフルエンサーはより強化されていくと思います。でもこの企画疲れませんか?笑

アパレル製造現場のデジタル化を目指すDeepValleyの深谷さんは、コンテンツマーケティングにより顧客獲得コスト低下を狙っている事、また出店ブランドはスタイルヴォイス内でウィンドウショッピングのデジタル化を実現し、自社ECへの送客を強化するのが目的では?との指摘。

オンライン専業のアパレルブランド運営では他の追随を許さない磐井さんからは、物流や客単価・在庫の側面から採算が取れていないのでは?との指摘。また、コンセプトがあると面白いモールにできるかもしれないとの事。

老舗ブランド「JUNKO KOSHINO」のディレクション全般を手掛けるAoyamaさんからは、各ブランドは流入検証データを取得 → 自社でデータ活用する為、また安全・安心の欲しさからみんなが知ってるインフルエンサーは強化されるので企画自体は効果的であるとの指摘。

という事で、採算性に関しては賛否両論な感じですかね。モール単体で、というよりは自社ECと絡めての収益性アップを狙ったもの、という見解でしょうか。

サロンオーナーからの「抜け漏れ」の指摘

ここでサロンオーナーのナカヤマン。さん降臨。

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ナカヤマン。さんからの指摘では、現状は「外部の人間が集客するコマースが死んでいる状態」という事。

という訳で簡単に計算してみました。

単純計算で客単価9000円で20億円の売上を取ろうと思うと、222,222件のCVが必要になります。CVRを仮に1%で設定したとして、2200万セッション必要。ページセッションが5としても年間で1億PV以上必要。めちゃくちゃ低く見積もってもこれくらいの数字になります。に対して、

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キュレーターの数はこちら。僕の経験上のお話にはなりますが、10万フォロワーのインフルエンサーがInstagramとストーリーズで同時に拡散したとして1000セッション上がるかどうかなので集客は仰る通り死んでいる状態…。トラフィックが足りていない事は言われてみるまで気づかなかったのですが全くその通り。ナカヤマン。さんが集客のスキームを総括的に捉える事が可能なのは過去、様々なプロモーションをソーシャルメディア黎明期に実験されているからでしょう。

改めて確認してみますと、GUにしてもCHANEL・GUCCI・Louis Vuittonのプロモーション案件にしても、まだインフルエンサーという言葉が世に出ていない時代からスキームを確立、今では他企業の模倣が目立ちますが、そのオリジナルを創り上げたからこそわかる事かと。
スタイルヴォイスの件でも、過去ソーシャルメディアを使った実験と対比させて検証しているからこそ発言に信憑性があります。そして、ここで更にコメントを頂きました。

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2014年に企画された伝説の企画「GU TimeLine」の中身を一部明かしながら今回のスタイルヴォイスを掘ってみると面白い気付きがある、というお話。こちらでもいくつか問いが出ていますね。

“スタイルヴォイスを“Content”と“Channel”に分けて認識した時、どういう気付きがあるか?”

についても議論すると面白そうです。

<参考記事>


深地なりの回答

そんな訳で、

"果たして「スタイルヴォイス」は元々何をやりたくて作られて、どういう経緯を経て「今の構成」になっているのか?"

というお題に発展してきました。ここからは僕の考察を記載致します。
まず集客について。ヒントは下記。

“「計画通りの売上」を可能にする集客は他のeコマースと何ら変わらない手法で醸成されていると予測できる。”

他のECの集客手法について考えてみますと、一番効果が高いのは「既にブランドを認知しているユーザー」の集客。つまり各ブランドの「顧客リストの活用」です。合弁の3社(ジュン・マッシュ・デイトナ)に関しては自ブランドの顧客への通知がそれに当たりますね。よく見てみると、Instagramでも当該企業のブランドの発信には積極的にスタイルヴォイスのメンション付き投稿が実行されています。

ここから導き出されるスタイルヴォイスの「目的」、それは下記ではないかと推測します。

・顧客を囲い込み流出を防ぐ
・将来的にはECモールからの脱却を図る

3社で顧客を共有する事で全体のLTV向上を狙う。スケールメリットを活かしてサービスレベル向上から顧客を囲い込み。この行き着く先は「ファッションECモールからの脱却」ではないかと。今のファッションECモールの勢力図は、楽天・ZOZO(ヤフー)のプラットフォーマーが抜けて力を持っていて多くのユーザーが囲い込まれている状況です。当然、モールの方がお得にお買い物できますから、今後のシェア獲得は困難を極める事が予想できます。そんな将来的な不安を解消する為に、連合を組んで既存ファッションECモールからの脱却を図ろうとしているのがスタイルヴォイスの狙いなんではないかと。

上記はあくまで僕の推測なので、ナカヤマン。さんの解答を知りたい方はサロンに入られてご確認ください。この話題については6/9(火)のzoomオフ会にてお話して頂けるようです!ゲスト参加の枠も頂きましたので、Twitterで@fukaji38にメンション飛ばして頂ければ無料でご招待できます。議論に参加してみてください。6/9に共に答え合わせしましょう!

お題はこちらですね↓

◯スタイルヴォイスは何をやりたくて作られたのか?
◯どういう経緯を経て「今の構成」になったのか?
◯スタイルヴォイスを“Content”と“Channel”視点で分析すると?
◯スタイルヴォイスを”インフルエンサー”という単語を使わずに分析すると?
◯スタイルヴォイスのコンテンツはシンプルかリッチか?そこから得られる考察は?

お待ちしております!


サロンは何と月額500円…!

ナカヤマン。さんのオンラインサロンでは、こういった議論が日々行われています。メンバーはファッション業界だけでなくIT業界、メディア、広告、自動車、音楽業界、ベンチャー企業家、ミュージシャンなど、ビジネスの最前線で活躍されている方が多数いらっしゃいますから、議論の質も非常に高い。ユーザー同士で議論が活性化する良い環境が整っています。また、議論の質が高くなるようにナカヤマン。さんが軌道修正や問題提起、情報を下さるのがありがたいですね。「ちゃんと育てようとしてくれている」という愛が感じられます。

しかもこれで月額500円…。

サロン用

スタイルヴォイスでは収益性の話していたのにサロンは収益性度外視…。サロンメンバーは現在129人だから月間で65,000円程度。scream louderってNPO法人なんですかね…。ナカヤマン。さんって1回の講演のフィーが確か35ま…おっと誰か来たようだ。

そんな驚くほど安いサロンなので、壁を感じる事なく参加できるのが良い点ですね。インプット・アウトプットの質を上げたい方や、僕のようにファッションビジネスのマーケティング力を伸ばしたい方、是非サロンに入って一緒に議論しましょう!

また面白い議論が発生しましたら僕のnoteでも共有するかも?


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