【ショートショート】水枕
「あなたあなた」
「なんだい」
「水枕をもってきて」
「どこにあるんだ」
「冷凍庫の中。凍っているのがあるとおもう」
持ってくると、妻は枕と後頭部の間に氷枕を差し入れた。
「あー、楽」
水蒸気が立ち上っている。どれだけの熱があるんだ。
「体温はかった?」
「頭だけ熱いの。あ、触らないほうがいいわよ。火傷する」
「救急車呼ぼうか」
「大丈夫よ。いつもの知恵熱だから」
固かった枕がすぐにくにゃっとした。お湯枕だ。
「大変だ。とりかえてくる」
お湯を捨て、水を入れる。
妻は目を閉じ、顔をしかめている。
何度も繰り返しているうちに朝になった。私がほんのすこしうとうとした隙に知恵熱は収まったらしい。
「終わった」
妻は頭に刺さっていたLANケーブルを抜き取った。
(了)
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