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【ショートショート】丁半

 オレは虎の穴というカジノで遊んでいた。
 巨大な一室にいろいろな種目が集められている。
 ルーレットの赤黒で小さな賭けをしていたら、にわかに丁半博奕の一画が盛り上がりだした。
 丁半博奕はサイコロをふたつ振り、出た目の合計が偶数か奇数かで争う遊びである。偶数が丁で、奇数が半だ。
 すでに丁が10回連続で出ていた。丁か半が10回連続して出る確率は、1024分の1である。次、丁が出る確率は2048分の1となる。
 みんなが半の前に札束を積み重ねていた。博奕に必勝法はないが、出目の偏りはある。そのときに大きく賭ければ勝ち逃げも夢じゃない。
 とふつうは考える。
 アホである。
 こんなデタラメ、いかさまに決まってる。オレは丁に1000円張った。
 2000円に増えた。
 次も全額を丁に張る。
 4000円になった。
 一方、半に張り続ける人間の中には潰れる者も出てきた。
「うそだ……」
「ありえん」
 と呟きつつ、退場していく。胴元から借金である投げ銭をしてもらっているから、そうとうの痛手だろう。
 一方、オレは10回連続で勝ち越し、目の前の銭が102万4000円に脹らんでいた。1000円から始めているので、一瞬で失っても痛くもかゆくもない。
 さらに10回。まだ丁が続いている。カジノ側は半の出しどきを見失ってしまったのだろう。

(了)

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