<短編小説>ご主人様と僕
(60日目)
体を丸くして毛布にくるまっている僕は、勢いよく顔を上げた。この足音は、ご主人様だ。独りぼっちで寂しかったから、早く扉が開かないか待ちどおしい。ご主人様が帰ってきた事が分かった途端、お腹が空いていた事を思い出した。そう言えば、トイレもずっとしていなかった。でも、そんな事はどうでも良いのだ。僕は四方を囲まれた檻に体当たりする勢いで、早くご主人様に触れたくて、じっとしていられない。
ぶつかった衝撃で、檻はギシギシと音を立てている。四方に区切られた狭い空間、僕は縄張