見出し画像

富士通のエンジニアたちが日本マイクロソフトから表彰!対話型AIサービス「Fujitsu Kozuchi Generative AI」開発の想いや裏話を聞きました

こんにちは!富士通 広報 note編集部です。
7月31日に日本マイクロソフト株式会社(以下、日本マイクロソフト)から発表された、同社のパートナー企業で活躍するエンジニアにスポットを当てたアワード「2024 Microsoft Top Partner Engineer Award」において、今年から新設されたAI部門を含む3部門で、富士通のエンジニア7名(AI部門3名、Azure部門3名、Security部門1名 )が受賞しました!
富士通は、お客様のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を推進する革新的なクラウドソリューションの開発および提供に向け、昨年2023年5月にマイクロソフト コーポレーション(以下、マイクロソフト)と5年にわたる戦略的なグローバルパートナーシップの締結を発表しています。
これを受けて、マイクロソフトの協力のもと、日本、欧州、アジア、およびアメリカなど、富士通の全リージョンにおいて、社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の課題を解決し成長に貢献する事業モデル「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」のオファリング展開を担う約2万8千人の従業員に対し、各分野のソリューションやクラウドセールストレーニングなどの教育や認定資格取得を推進しています。特にAI分野においては、マイクロソフトと連携し富士通グループ全社員向けの教育イベントや集中研修を行うなど、 エンジニアの育成を強化しています。その結果、今回「2024 Microsoft Top Partner Engineer Award」で新設されたAI部門で3名の受賞獲得にもつながっています。

それではここから、「2024 Microsoft Top Partner Engineer Award」AI部門の受賞者に話を伺っていきたいと思います。

左から、クロスインダストリーソリューション事業本部 仲程 凜太朗さん、技術戦略本部 越智 諒さん


・まずは、現在の業務内容を教えてください。

越智:研究成果や新技術を活用したアプリケーション(以下、アプリ)の開発を行い、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」で技術検証できる環境として提供しています。また、各国にいる富士通のエンジニアと協力して開発を進められる体制を整えています。海外メンバーへのレクチャーを実施し、技術説明やハンズオンを通じて、対話型AIサービス「Fujitsu Kozuchi Generative AI」を含む「Fujitsu Kozuchi」で提供している技術を普及しています。

仲程:「Fujitsu Kozuchi Generative AI」アプリの機能強化のため、多くのお客様の声を聞きながら、サービス提供やお客様との実証実験などを進めています。日ごろから、他社LLMアプリと比較しても「Fujitsu Kozuchi」は信用できる、使ってみたい、と言っていただけるようなアプリを目指しています。また、業務の傍ら、若手社員約50人を集めて、生成AIを用いたアプリの市民開発※1を学ぶコミュニティを立ち上げました。
 
※1 市民開発:専門的なプログラミングスキルを持たない従業員などが、簡易なツールやプラットフォームを使用してアプリやソリューションを開発すること。

・今回受賞した感想を教えてください。

越智:「Fujitsu Kozuchi Generative AI」の開発に初期から携わり、技術検証やWebサービス提供を経て、「Fujitsu Uvance」のデータとAIを活用したオペレーションプラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」として提供しました。これにより、お客様が社内外のデータに生成AIを活用し、データ活用の幅を広げられるような環境を提供できたことが評価され、とても光栄に思います。一緒に頑張ってきたメンバーの支えに感謝しています。
 
仲程:入社二年目にして、生成AIの現場でこのような機会をいただきとても光栄です。生成AIは変化が多く、LangChainと呼ばれるライブラリのバージョンアップデートや研究分野での新たな手法の発見は日進月歩で行われており、そうした変化への対応力が試されます。私たち富士通のアプリは、対応力、保守性や拡張性、連携性などの多岐に渡る観点でマイクロソフトからも評価いただいており、チームの仲間やコミュニティ活動のメンバーの協力のお蔭で実現できました。

・今回、どういった点が評価されて受賞に至ったのでしょうか?

越智:生成AIへの需要が高まる中、「Fujitsu Kozuchi」上で、Azure OpenAI Serviceを活用した対話型AIサービスを開発し、お客様が容易に実証実験を行える環境を提供したことを評価いただき受賞につながりました。この環境を活用し、2023年度の1年間で30社以上のお客様との実証実験につながりました。このサービスや取り組みは、2023年6月にサービス提供を開始した「Fujitsu Kozuchi Generative AI」の開発にも大きく貢献しています。

・プロジェクトの中でどのような貢献をされてきたのか、教えてください。

越智:「Fujitsu Kozuchi Generative AI」の立ち上げから関わり、主にインフラやバックエンドの開発を担当しました。生成AIが流行り始めた時期でもあり、新しい技術が次々と出ていたので、それらの技術を実際に試して、有用性を判断する役割を担っていました。特に印象に残っているのは、元々の実装ではベクターストア※2からのデータ取得に時間がかかっており、その改善のためベクターストアを変更したことです。この変更に合わせて、データの設計や実装を見直し、複数のベクターストアをさまざまな観点から比較検討しました。ベクターストアには、SaaSとして提供されるものや、OSSとして提供されるものがあり、それぞれに性能や機能、既存のライブラリとの相性など、考慮すべき点が多くありました。この変更によって、データ設計の汎用性が向上し、RAG(Retrieval-Augmented Generation) ※3の性能も向上しました。

※2 ベクターストア:情報を効率的に検索するための仕組みの1つ。データをベクトルという数値の並びに変換して保存する。
※3 RAG:検索拡張生成とも呼ばれる、LLMにて学習外の知識を取得して利用する仕組み。

仲程:「Fujitsu Kozuchi Generative AI」に新技術を導入するためのアーキテクチャー設計や開発を担当しており、技術面でのチームのけん引役に加えて、他部門との連携を担いました。最近では、より高度なAIを使いたいお客様ニーズに応えるため、社外の企業とも連携し、RAGにグラフネットワークなど最新の技術を新たに導入することで、生成AIの精度やアプリのUXの向上を目指して開発を進めています。具体的には、富士通研究所が開発したExcel形式の設計書をレビューする機能を「Fujitsu Kozuchi Generative AI」に搭載し、お客様に提供しました。設計書レビュー機能の技術実装にあたり、アプリ自体の処理速度に課題があり、アーキテクチャーレベルでの非同期化対応などを行いました。同時に、プロジェクトの進行中も、OpenAI社が2024年5月に発表した新モデルGPT-4oやマイクロソフトの新サービスへの対応、負荷分散を行い、アプリケーションを高速化するなど、アーキテクチャーを見直し、迅速な提供やサポートができるよう、汎用化を考慮したアーキテクチャーの設計にも取り組みました。

・「Fujitsu Kozuchi Generative AI」について詳しく教えてください。

仲程:「Fujitsu Kozuchi Generative AI」は主に2つの機能があり、1つがチャットサービス、もう1つが、ユーザーがアップロードしたドキュメントを参照して高精度な情報検索と回答生成ができるチャットサービスです。開発当時(2023年6月)は機能実装している企業はまだ珍しかった RAGを取り入れており、機密情報を含む文書も利用できるため、精度の高い回答を生成できることからお客様からの評判は良好です。「Fujitsu Kozuchi Generative AI」は、現在まで継続して機能追加を行っています。富士通研究所で開発している幻覚対策技術やURLフィッシング対策機能も取り入れて、生成AIの回答の信頼性を向上させてきました。今後も、GPT-4oやFugaku-LLM を含め利用可能なLLMも拡充しお客様のニーズに対応しています。

・プロジェクトに取り組む中で、苦労した点はありますか?

越智:苦労した点の1つが、GPT-3.5 がリリースされたばかりで、LLMを利用したアプリやインフラの設計や実装のサンプルが非常に少なかったことです。前例がほとんどなかったため、手探りで進める部分が多くありました。RAG もまだ一般的ではなく、生成AIがどの程度使えるのか、どうやって活用するのかといった点でも試行錯誤が必要でした。実証実験で多くのお客様に使っていただき、コメントやフィードバックをもらいながら改善できたことはとても良い経験になりました。

・最後に、今後の目標を教えてください。

仲程:富士通ではAIに関して、独自技術の開発に加え、マイクロソフトをはじめたとしたパートナー各社の技術と融合したオファリングの開発を進めており、「Fujitsu Uvance」のすべてのオファリングにAIを適用すべく、組み込みが容易なアーキテクチャーの検討や海外メンバーを含めた富士通の全従業員が開発に参画できる仕組みを構築しています。また、富士通のAI技術、マイクロソフトのAzureの技術を持つエンジニアを数百人単位でグローバルに育成し、AIサービスの提供体制を確立していきます。
私個人としては、AIを起点として、より幅広く良い影響を与えられるサービスを生み出したいです。エンタープライズ向け生成AIといえば「Fujitsu Kozuchi Generative AI」と思ってもらえるような、もっともっと魅力が伝わるサービスに育てていきたいです。

今回、AI部門のほかに、Azure部門、Security部門でも受賞していますので、受賞者をご紹介します!
AI部門:岡元 大輔さん、越智 諒さん、仲程 凜太朗さん
Azure部門:井上 向大さん、横塚 禎亮さん、古閑 成和さん
Security部門:鈴木 光さん
 
また、富士通は、日本企業として初めて、SAPの「RISE with SAP」のプレミアムサプライヤーとして、包括的なクラウドERPソリューション「RISE with SAP, premium supplier option via Higher with Fujitsu」を、「Fujitsu Uvance」のオファリングとして開発し、2024年度よりサービス提供を開始しています
本取り組みにおいても、Microsoft Azureを活用した「RISE with SAP, premium supplier option via Higher with Fujitsu」のサービス提供とお客様のDX支援の実績が認められ、7月31日に、日本マイクロソフトが表彰する「マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2024」の「SAP RISE on Microsoft Cloudアワード」を受賞しました。

今後も富士通は、お客様のDX支援に向け専門人材の育成をドライブし、富士通が持つケイパビリティやエンジニアの知見、テクノロジーと、マイクロソフトとの協力を通じシナジーを図り、デジタルイノベーションによって持続可能な社会の実現を目指し、お客様のSXの推進を加速します。

【関連リンク】
Microsoft Top Partner Engineer Award特設サイト
Microsoft Partner Networkブログ:Microsoft Japan Partner of the Year 2024 受賞企業

【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
Microsoft、Microsoft Azure、Azure OpenAI Serviceは、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。 またその他の商標情報および通知については、https://www.sap.com/copyright をご覧ください。

おすすめ記事


富士通 広報noteについてメディア取材ご希望の方は以下よりご連絡ください。 ご利用環境により、以下ボタンが反応しない場合は、<fj-prir-note@dl.jp.fujitsu.com>をご利用ください。