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確証バイアスとは?:由来となった論文を含めて心理学者がわかりやすく解説



この記事について

この記事は、認知バイアスのうち「確証バイアス」について解説します。

私は2021年に『バイアスとは何か』(ちくま新書)(藤田, 2021)という本
出しました。このブログは、その本の説明を簡単にしたものです。

この記事でバイアスについて知っていきましょう。

なお、『バイアスとは何か』(ちくま新書)(藤田, 2021)という本全体の要約を素早く知りたいという場合、下記の記事(有料記事)をご参照ください。

認知バイアスを全体的に知りたいという場合、下記のnote記事、Udemyの講座をごらんください

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確証バイアスとは?

確証バイアスとは、自分の中の考えを裏付ける情報に注意が向き、その他の情報に注意が行かなくなるという傾向です。自分の考えとは、特に意識にのぼったものでなくともかまいません。

たとえば、TVを見て「最近は凶悪な少年犯罪が増えています!」という報道を聞いたとします。(現実には、減少から横ばい(法務省法務総合研究所, 2023)ですが…)

少年犯罪が増えている、と聞いたことを意識では忘れてしまったとしても、何となく頭に残っています。

その状態でネットや他のTV番組、他の人との会話などの様々な情報に接した時に、その考えに合う情報が目について、それに反する情報は目につかなくなります。

その結果、自分が抱いた考えが、客観的にも正しいと感じる傾向です。

「確証バイアス」という用語を作ったのは心理学者ピーター・ウェイソンです。ウェイソンは1960年代に一連の実験を行い、人の認識が、自分の既存の信念を確認する方に偏っていることを示しました。

確証バイアスの元となった論文

 確証バイアスという概念を初めて提示した論文は、Wason (1960) です。このあと、確証バイアスはウェイソン自身にとって重要な研究テーマとなりました。

元となった論文の研究内容

 Wason (1960) は、実験を報告した論文です。

 この研究では、参加者に次のようなことをしてもらいました。

この実験では、大学生29人が参加しました。実験参加者には、3つの数字の組み合わせが提示され、その三つの数字の提示の仕方にはどのような規則があるかを答えるという課題が与えられました。

与えられるのは三つの数字の組み合わせで、参加者はそれ見てウェイソンに、どのような規則があってその数字が出て来たのかを回答します。

たとえば「2 4 6」といった数字を見た参加者は、その数字がどのような規則で並んでいるのかについての必要十分条件を推測します。そして、ウェイソンに自分が推測した規則を伝えます。

ウェイソンは、参加者の答えが正しいかどうかをフィードバックしました。

参加者は自分の答えが正解かどうかわかります。しかし、違った場合には、どこがどう違ったのかは分かりません。したがって、違ったときにはその理由を推測することになります。

そして、参加者の答えが不正解だった場合、参加者はあらためて考えて、答えをウェイソンに示しました。

参加者が正しい答えを出すまで、参加者が答える→フィードバックを受ける→正解でなければ再度回答するというプロセスが繰り返されました。

このプロセスのくり返しにおいて、参加者がどのように自分の考え方を修正していくかが、この実験の実験でウェイソンが見たかったところでした。

なるべく早く正解に達したいと思えば、もし自分の回答が間違っていた場合には、自分の考えを検証して、自分がもっていた考え方とは別のルールを提案して、違った考え方を試してみるのがよいということになるでしょう。

実験の結果

この実験の参加者はどのように回答したのでしょうか。不正解のフィードバックに基づいて仮説を素早く修正していったのでしょうか。

この研究の結果を見るため、ウェイソンは、正しいルールと誤ったルールが回答に出てきた回数、列挙的思考と消去的思考の程度、否定的事例の出てきた回数、誤ったルールに対する即時の反応、誤ったルールの種類という5つの観点に基づいて結果を分類しました。

以上のように結果を分類したところ、ほとんどの参加者は自分の仮説を批判的に検証しなかったことが分かりました。

つまり、自分の仮説と反対の考え方が正しいことを示すような考え方を提示することをしませんでした。

その反対に、自分が持っている仮説を確認しようとして、自分の仮説を反証する仮説(代替仮説)を検討しませんでした。

そのため、参加者は最初に思い付いた誤った仮説をなかなか変えず、その結果、正しいルールを見つける機会を逸したため、不正解を続けたのです。

結果の評価

ウェイソンは、課題に正解できなかった被験者の多さに驚きました。参加者が自分の仮説と矛盾する事例をテストすることができないことが原因でした。これは確証バイアスがあるというウェイソンの仮説を裏付けるものでした。

この研究の意義

この研究は、人間の認知の理解に大きく貢献し、情報処理方法における基本的なバイアスを明らかにしました。確証バイアスに関するウェイソンの研究は今でも影響を与え、代表的なバイアスの一つとされています。
確証バイアスの存在が示されたことにより、ものを考える上では自分の仮説に反する事象に意識的に注意を向けること、自分の仮説に反する証拠を検討することの必要性が示されたと言えるでしょう。


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※本記事の無断転載・二次利用はお断りします。

文献

法務省法務総合研究所(編) (2023) 令和5年版犯罪白書, 3-1-1-1図。https://www.moj.go.jp/content/001410102.pdf (2024年4月28日最終アクセス).

Wason, P. C. (1960). On the Failure to Eliminate Hypotheses in a Conceptual Task. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 12(3), 129–140. https://doi.org/10.1080/17470216008416717


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藤田政博
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