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Dead or Undead 1
突然だが、俺は死んだ。
どこにでもいるサラリーマン、佐伯祐介は詰まる所、困惑していた。
朝起きて、適当にパンを齧り、コーヒーで胃の中に流し込みながら新聞を読み、それが終わったら歯を磨いてスーツに着替え、家を出た。
何も変わらない日常だった。この日常を始めてから6年は経っている。新卒入社してから勤務している支店で、今日も元気に外回りに見積もり作成、ミーティングに飲み会、と今日も予定に追われる1日だと思ってた。朝までは。
会社には徒歩5分で着く立地に住んではいるが、やはり朝早く会社に行かないと落ち着かない。佐伯祐介は新入社員の頃から、時間にはストイックな人間だった。彼にとって5分、10分行動は当たり前なのだ。
のんびりと人通りの少ない道を歩く。目先の信号が赤だったので足を止める。腕時計を眺めて「今日はいつもより少し早く着くかもなあ。」なんて考えてた。その時だった。
右からけたたましいアクセルが聞こえた。
秒針を追っていた目線を上げると、目の前に小型トラックが迫っていた。
突然過ぎることが起きると、人は思考が固まるらしい。は、と口を開けた瞬間、体が衝撃で吹っ飛ばされた。
後から聞いたら、寝不足のトラックドライバーが信号を無視して歩道に突っ込んだという不慮の事故ということだ。
佐伯は自分の体が宙に浮くのを感じながら「あ、そういえばレンタルビデオ返してないや」とか「今日のアポイントどうしよ」とか、そんなことを考えていた。同時に「俺はこんなところで死ぬのか。」とも。
不意に、頭の中で父親と母親と、一つ年の離れた妹の顔が浮かんだ。ボールを追い掛ける自分を微笑みながら眺める父の姿、疲れて実家に帰って来たら何も言わず好物を出してくれた母の姿、転んで膝を擦り剥き大泣きをした妹の手を引いて帰った、過去の自分の姿。
走馬灯ってやつかな。悠長に構えている暇はないのに、頭はどこか落ち着いている。
ああ、死ぬのか。俺は死ぬんだ。
佐伯祐介、享年26歳。居眠り運転による不慮の事故により死亡。
そして今、佐伯祐介は自分の体が五体満足で起き上がったことに対して困惑している。
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