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【Album without love photograph】


「はーい。撮るよ。笑顔笑顔。」
「…浮遊術で写真撮るのもどうかと思うで。」
 いーから、と言って、浮遊術を保持したまま、シャッターを押す。カシャリ、と軽い音。こうやって思い出は生まれていく。


 溶けかけのアイスを口に運ぶ。ふんわりと、甘ったるいバニラの香りと冷たいようなぬるいようなアイスの食感。そのアイスには目もくれずに、さっきから三歳年上の先輩は、撮ったばかりの写真を俺には見せずにブツブツと呪文らしきものを唱えている…聞いたこと無いでこんな複雑なん…

「ね。私のアイス取って。」

 一瞬驚き振り向くと、先ほどまで後ろを向いてブツブツ言っていたプリケリマは片手を差し出して、ねだる様に首をかしげていた。虚返事でアイスを渡すと、ありがとうと無感情のままつぶやかれた。…愛想悪いのは知ってたけど…

「あ、ほら。この写真。」

 右手でアイスカップを器用に持ちながら、左手でスイッと写真を差し出された。ぽぉーは半ば呆れた、半ば苦笑の溜め息をつくと、アイスを口に運んだ状態のまま写真に見入った。

そこには


「…なぁ。腹減ったわ。」

「アイス食べたでしょ?」

「…先輩やもん。おごって、な?」

 顔の目の前で両手を合わせて懇願しても、プリケリマの表情は一切変わらない。それは肯定の意味だと一瞬でわかってしまった。ガクリ、とわざとらしく肩を落とすと、ぽぉーはにこやかに笑って、片方の手をプリケリマに差し出した。

「な、先輩。さっきの浮遊術教えてや。」

「…六時間目もサボるの?」

「もちろんや。」

「…スパルタだけど。」

 ゾクリ、と絶対零度の微笑を浮かべると、プリケリマはその手をとった。それは、OKの意味だとも。もちろん。心の中でつぶやくと、プリケリマは苦笑した。

 二人がいなくなった後でも、その中庭はにぎやかだった。なぜなら、残されていた茶色いアルバム。その中でにぎやかに笑うぽぉーと、対照的に微笑を浮かべたプリケリマが写真の中で仲良く浮遊術を使っていた。やがて、その写真もセピア色に染まり、写真の時は止まった。

The album is not an album without the photograph.
Memories are eyes for the photograph.
Because every day that is with you is . of it is possible to leave in

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ひゅうひゅう様へ

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