Dead or Undead 2
その男は幸せそうな顔をして歩いていた。
5月中旬の暖かな日差しが気持ちいい。時たま吹く風が青々とした草の香りを運んで来て、生命の強さを感じる。
かつ、かつ。
男にしては高いヒールのブーツが足を前に運ぶたびに、軽やかな音を立てていた。煌びやかな和服の袖が歩を進めると同時に、ひらひらと風に舞う。
道を歩くものはその煌びやかな服装と靴音に彼を見やり「おや、なんて派手な人なんだろう。」と一瞬考えるが、一度目を離してもう一度彼を振り返れば、その姿が見えなくなっていることに、そして彼の服の柄を思い出せないことに、首を傾げる。
かつ、かつ。
「~~~♪」
鼻歌交じりに日の中を散歩する、なんと幸せなことか。
願わくばこの幸せが一生続けばいい。そんなことを考えながら歩いていた彼の足が、不意に止まった。すんっ、と一度鼻を鳴らす。
「…あららら、」
誰に言うでもなく呟いて笑うと、彼はくるりと向きを変えて駆け足をする。
かつ、かつ、かつ、かつ、かつ。
今までのんびりと歩いていたのが噓のように、歩みが速い。
目の前におやつを出された子犬のごとく、彼は歩き始めていた。その先に、何かが見えているかのように、歩いていた。
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